ウクライナ支援のため航空自衛隊のC-2輸送機がポーランド目指して飛び立ちました。同機は川崎重工が製造する国産の大型機です。どんな機体なのか探ったら、性能などが明かされていない「謎機」までありました。

アフガニスタンやオーストラリアにも飛行

 2022年3月10日、航空自衛隊のC-2輸送機が日本からウクライナへの支援物資を搭載して鳥取県の美保基地からポーランドに向け飛び立ちました。

 この輸送は、先発してポーランドに向かったKC-767空中給油・輸送機に続くウクライナ支援の第2便といえるものでしたが、この種の任務に日本が独自開発した大型機が用いられるのは初めてです。

 C-2は2016(平成28)年から実運用が開始された最新の輸送機です。いまや航空自衛隊の輸送機部隊において中心的存在となった同機、どのような機体なのか見てみます。


一気に加速して離陸するC-2輸送機。大柄な機体だが、強力なエンジンを積んでいることから余裕ある離陸を見せてくれる(武若雅哉撮影)。

 C-2は防衛省技術研究本部(現防衛装備庁)と川崎重工が開発した国産の輸送機です。旧式化した国産のC-1輸送機の後継として登場しました。そのため、巡航速度はC-1より約240km/hも速い約890km/h。機内積載量もC-1から約24tも増え約36tになるなど、大幅にパワーアップされているのが特徴です。

 こうした性能の向上は、今後増えていくと考えられているPKOを始めとした国際貢献活動や離島防衛などを見据えたものです。この性能は、すでにいかんなく発揮されており、近年では、2021年のアフガニスタン政変においては在外邦人輸送のために現地へ派遣されたほか、翌2022年初頭には海底火山の噴火で被災したトンガへ供給する緊急支援物資をオーストラリアまで空輸しています。

機動戦闘車や「ペトリオット」積んで長距離もOK

 C-2輸送機の最大の強みといえるのが、その積載量です。さすがに重量50t近い陸上自衛隊の90式戦車は搭載できませんが、約26tと軽量な16式機動戦闘車であれば機内に収容し空輸することが可能です。

 また、積載重量だけでなく、貨物室もC-1より広くなっているため、航空自衛隊の地対空誘導弾「ペトリオット」の発射機もけん引車(トレーラーヘッド)ごと積むことができます。

 このような、16式機動戦闘車や地対空誘導弾「ペトリオット」を運搬できる能力は、離島防衛や北朝鮮の弾道ミサイル対処といった観点からも有用といえるでしょう。


空将を乗せたC-2輸送機。高官を搭乗させている機体は、コクピットの側面窓に専用の表記を掲示している(武若雅哉撮影)。

 ほかにもC-1やC-130Hといった航空自衛隊の既存の輸送機と同様、陸上自衛隊の空挺隊員を乗せて落下傘降下させたり、着陸することなく物資を地上に届けるパラシュートを用いた物量投下も行ったりすることが可能です。

 なお、C-2は36t積載時で約4500kmも飛行できることから、単純計算にはなりますが、この状態でも鳥取県の美保基地からタイやインドネシアまで無給油で飛行ができます。

 2022年3月現在、すでに美保基地の第3輸送航空隊第403飛行隊はC-1からC-2への更新が終了しており、現在は埼玉県の入間基地に所在する第2輸送航空隊第402飛行隊に配備が進められています。こちらも計画では、あと数年程度でC-2への置き換えが終わるようです。

まるでUFO? 公式の説明ない“ニンジャC-2”

 このように、現在、順調に数を増やしつつあるC-2ですが、その一方で入間基地には「RC-2」という、航空自衛隊の公式WEBサイトやパンフレットなどには一切登場しない“謎機”もいます。この機体は、電波情報の収集を目的とした機体で、現在、運用しているYS-11EBの後継機として調達されたものになります。

 RC-2はYS-11EBと比較して、より遠距離目標の情報収集が可能になり、滞空時間も長くなったのが特徴です。加えて機内スペースが広いため、より多くのシステムを搭載できるようになり、受信できる周波数帯域の拡大、デジタル変調された周波数帯電波の収集、多目標同時収集機能、そして電波情報処理能力が大幅に自動化されているといいます。こうしたことから乗員の負担軽減にも貢献しているそうです。


航空戦術教導団電子作戦群隷下の電子飛行測定隊に配備された電波情報収集機RC-2(画像:航空自衛隊)。

 なお、防衛省では新たなC-2輸送機ベースの電子戦機の調達も開発しています。これは「スタンド・オフ電子戦型」と呼ばれるもので、「スタンド・オフ・レンジ」、すなわち敵レーダーサイトや通信基地など、それら妨害対象が対抗可能なエリアの外側から電波妨害を行うための専用機です。

 敵が対処できないような遠距離から一方的に電子戦を仕掛けることができれば、戦闘を有利に進めることができます。そのような任務機もC-2ベースで姿を現す予定です。

 このように、様々なプラットフォームに対応できるC-2輸送機は、今後も活動領域を拡大し続けることは間違いなく、もしかしたら新たな派生型も誕生するかもしれません。