皮膚にできたコブ「粉瘤」は自然に治るのか? 嫌な臭いがしたら要注意
押すと白い分泌物のようなものが出てきたり、単に半分に割ったゴムボールが埋まっているだけのように見えたりするこぶ。その中身は脂肪なのでしょうか。単に脂肪の塊として看過していい性質の症状なのでしょうか。皮膚の下にできた膨らみ、こぶについて「よしき皮膚科・形成外科」の吉木竜太郎先生が解説します。
監修医師:
吉木 竜太郎(よしき皮膚科・形成外科 院長)
産業医科大学医学部医学科卒業。大学病院や大学講師、民間企業の産業医などを経た2013年、福岡県福津市に「よしき皮膚科・形成外科」開院。法人化に伴い、「医療法人隼会」理事長就任。皮膚のことならなんも相談できる地域のかかりつけ医として診療に尽くしている。医学博士。日本皮膚科学会認定専門医。
それってホントに「脂肪の塊」?
編集部
皮膚の下に脂肪の塊のようなものができています。これはいったい何なのでしょうか?
吉木先生
「粉瘤」が疑われますね。よくみなさん「脂肪の塊」とおっしゃいますが、粉瘤の中身は実は皮膚の「垢」なんです。脂肪の塊と言えば、「脂肪腫」という別のできものがあります。それぞれの違いは、慣れた皮膚科医でしたら触診のみで診断をつけられるので、悩んだら皮膚科を受診してください。
編集部
垢が溜まってできる「粉瘤」とは、どのようなできものなのですか?
吉木先生
おもに顔、背中など、皮膚の脂が多いところにできやすいできものです。毛穴がつまることが原因で、そこに皮膚の角質、いわゆる「垢」が溜まっていくことで、大きくなっていきます。
編集部
粉瘤を放置しておくことで、なにかやっかいなことはありますか?
吉木先生
粉瘤のやっかいな点として、「嫌な臭いがする」ということがあります。これは粉瘤の中の垢のニオイが原因です。また、粉瘤の内部に細菌が感染して強く炎症を起こし、内部にウミが溜まってしまうことがあります。
編集部
粉瘤が悪性化したり、ガンになったりすることはないのですか?
吉木先生
可能性としてゼロとは言い切れませんが「道を歩いていて隕石に当たる」くらい可能性は低いです。だと思っていただいて結構です(笑)。しかし、そのできものが粉瘤なのか、 悪性のできものなのかということは、皮膚科医にしか判断がつかないと思いますので、皮膚のできもので悩んだら皮膚科の受診をお勧めします。
粉瘤の治療は手術で除去。手術には保険も適用される
編集部
治療するとしたら、手術になるのですか?
吉木先生
基本的に、手術以外の方法で除去する手段はありませんね。粉瘤を形成する袋を完全に摘出してしまえば、再発することもありません。
編集部
粉瘤は、手術で切除した方がよいと考えますか?
吉木先生
粉瘤は良性の腫瘍なので、放置でも構いません。しかし頻回に化膿したり、お顔などにできて見た目が気になったりする場合には、切除を検討した方がよいでしょう。もちろん手術は保険が適用されますのでご安心ください。ただ、粉瘤を切除した場合には、傷跡がどうしても残ってしまいます。お顔など目立つ場所の手術についてはどれくらいの傷跡になるかなど、主治医の説明をよく聞き、じっくりと検討してください。
編集部
粉瘤は体質なのでしょうか、たまたまの発症なのでしょうか?
吉木先生
ニキビなどと同じで、毛穴のつまりやすい方には、どうしても粉瘤が多発する傾向がありますね。しかし、粉瘤自体はいつ誰にできてもおかしくありません。ちなみに、私もお尻に粉瘤が1個あります(笑)。
編集部
粉瘤が出ないようにする方法はないのでしょうか?
吉木先生
残念ですが、ないのが現状ですね。毛穴のつまりはいくら洗っても除去できませんし、洗いすぎると皮膚のバリア機能を破壊してしまい、別の皮膚トラブルを生じることになります。
袋の中身を自分で出そうとはしないこと
編集部
粉瘤の中身を自分で絞り出したりする行為は、どうなのでしょうか?
吉木先生
それこそ炎症を起こし、腫れたり化膿したりして、膿が溜まる原因になるのでやめていただきたいですね。また粉瘤の中身を絞り出したとしても粉瘤の袋が残っている限りまた膨らんでいきます。
編集部
最後に、読者へのメッセージがあれば。
吉木先生
粉瘤は基本的に良性の腫瘍です。しかし、その臭いが気になったり、お顔などの部位によっては形が気になる場合には、手術で摘出することをお勧めします。お悩みの際には、お気軽にご相談ください。
編集部まとめ
粉瘤は良性のできものですが、たまに化膿したり臭いが気になるという問題があるようです。そういった場合、外科的に除去することも可能ということでした。皮膚になにかできものがあって、それが粉瘤なのか、それ以外のできものなのかが気になる場合、まずは医師の診察を受けてみてはいかがでしょうか。
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