有給休暇の取得率が高い会社

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有給休暇の取得率の高い上位200社をランキングにまとめました。長期化する新型コロナの影響はあったのでしょうか?(写真:SoutaBank / PIXTA)

コロナ禍の長期化で2020年以降、外出自粛の要請などが続いており、旅行やレジャーなど「余暇を楽しむ」ための休暇は取りづらい状況だ。また、在宅勤務が広がり、業務中も休暇中も自宅という場合が増えている。仕事とプライベートの境界が曖昧になり、有給休暇を取ってもリラックスできないという人もいるだろう。

では、実際に有給休暇の取得状況に変化はあったのだろうか。今回は『CSR企業総覧(雇用・人材活用編)』2022年版に掲載している各企業の有給休暇取得率のデータを基に、3年平均取得率の高い204社をランキングした(2020年度基準)。各社の具体的な取り組みと併せて紹介する。

なお、本ランキングは同誌の掲載企業1631社のうち、有給休暇の付与日数が平均10日以上かつ取得率を3年連続で開示している1178社を対象とした。取得した有給休暇には前年度繰り越し分も含めるため、取得率は100%を超える場合がある。

また、『CSR企業白書』2022年版(2022年4月発行予定)には2020年度の有給休暇取得日数・取得率のランキングを上位800位まで掲載予定だ。

取得率トップはZOZO

1位はアパレルEC「ZOZOTOWN」を運営するZOZOだ。上位企業のなかでは、有給休暇の3年平均付与日数は10.2日と短いが、3年平均取得率は122.7%と毎年完全消化状態。有給休暇は1時間単位で取得可能なほか、一部の部署では社員自らが週休3日と週休2日を選択できるなど、働き方の自由度は高い。


『CSR企業総覧(雇用・人材活用編)』2022年版(東洋経済新報社)。画像をクリックすると東洋経済オンラインストアにジャンプします

2位はNC旋盤・マシニングセンタ大手のDMG森精機(3年平均取得率113.4%、以下同)。2020年度の平均取得日数は25.3日で、「2022年5月までに、平均取得日数を25日に増加する」という目標を前倒しで達成している。

3位は3年平均取得率100.4%のホンダだ。創業者・本田宗一郎の「よく働き、よく遊べ」の精神のもと、有給休暇の繰り越し消化をなくす「年次有給休暇カットゼロ運動」に1970年代から取り組んでいる。

4位はトヨタ傘下の自動車メーカー、ダイハツ工業(98.8%)だ。有給休暇の取得推奨日の設定や取得回数に制限のない半日単位の有給休暇制度などを導入している。

5位には建機関連のコマツと農機関連のクボタが並んだ(98.7%)。コマツは「有給休暇全員19日以上取得」という数値目標を掲げており、着実に達成している。クボタは時間単位の有給休暇制度を導入するほか、始業時刻の選択制度などを導入している。

以下、7位アイシン(98.5%)、8位テイ・エス テック(98.2%)、9位豊田自動織機(97.5%)、10位デンソー、関西電力(97%)と続いた。

一般的に、業務計画を立てやすい製造業のほうが、計画的に休暇を取得しやすい。確かに、ランキング上位には自動車関連企業が目立った。しかし、非製造業でも有給休暇の取得推進に取り組んでいる企業はある。

例えば、建設業でトップの大東建託(188位、74.8%)は、「2023年度までに取得率80%を目指す」という数値目標を掲げている。実際に、関西エリアの14事業所を対象として、月1回独自の休業日を設定するなどの取り組みを展開している。

東京ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランド(46位、86.1%)は、今年もサービス業で首位だ。同社は正社員だけでなく、準社員など非正規社員の取得率も高い。コロナ禍においては、非正規社員への休業補償引き上げなども実施している。

「休み方」の変化への対応も急務に

今回のランキングでは、新型コロナの影響もみられた。例えば、ランキング上位199位(204社)のうち、2020年度の取得率が前年を上回った企業はわずか35社だった。

要因としては、新型コロナ関連の各種特別休暇の付与、在宅勤務の進展で通勤・残業時間が減ったことよる平日の余暇時間増加などが挙げられる。いずれもコロナ禍で整備が進んだ制度で、有給休暇取得のインセンティブを低下させている可能性がある。今後は、同様の傾向がより多くの企業に表れる可能性もある。

政府はこれまで、有給休暇取得率の数値目標を「2020年までに70%」としてきた。しかし、結局、同目標の達成は困難となり、目標達成時期は2025年に先延ばしされている。

在宅勤務や時差出勤など、コロナ禍で働き方が変化した職場は多い。有給休暇の取得率向上の取り組みも、現在の延長では限界があるのかもしれない。時間単位の有給休暇制度やテーマ性を持たせた休暇の付与など、企業には「休み方」の変化への対応も今後求められるだろう。






(村山 颯志郎 : 東洋経済『CSR企業総覧』編集部)