クラウドで提供される機能や環境をパッケージ化して販売する形態を指すサービス「◯aaS(◯◯ as a Service)」をよく耳にするようになりました。その背景には、テレワークのがりやデジタルトランスフォメーション(DX)の推進により、企業のクラウド利用が広がったことがあるでしょう。多様な働き方には、あらゆる場所からあらゆるデバイスで企業のアプリケーション、データ、リソースにアクセスできるクラウドサービスがますます不可欠だからです。

企業がテレワークやハイブリッドワークを両立し、適切に管理する上で有用なクラウドサービスとしては現在、以下の選択肢があります。

SaaS(Software as a Service)

PaaS(Platform as a Service)

IaaS(Infrastructure as a Service)

DaaS(Desktop as a Service)

クラウドサービスを選択する際には、会社の事業内容、カルチャー、導入目的など、すべてが重要な検討事項となります。そして、SaaS、PaaS、IaaS、DaaSのどれが自社の業務に最適か、組織の規模や種類、解決すべき問題によって決まるでしょう。そこで本稿では、自社に最適な〇aaSを選べるよう、必要な各サービスの長所と短所を紹介します。

SaaS (Software as a Service)の定義

SaaSは、ユーザーがインターネット接続とパスワードを使って、クラウドベースのアプリケーションにアクセスして使用するサービスです。ユーザーはソフトウェアやアプリケーションを所有せず、デバイス上にアプリケーションを導入しません。エンドユーザーは、Webブラウザを使ってソフトウェアやアプリケーションにアクセスします。

SaaSは、ユーザーや管理者の作業量を軽減します。セキュリティ、パフォーマンス、アプリケーションの可用性はサービス提供者が管理し、ソフトウェアやアプリケーションのアップデートもサービス提供者がクラウド上で処理するため、エンドユーザーや管理者はアップデートを行う責任を負いません。Office 365やGmail、Google DriveなどのGoogle Apps、DropboxなどがSaaSにあたります。

SaaSの長所

それでは、SaaSの長所を紹介しましょう。SaaSには大きく5つの長所があります。

高度なアプリケーションへのアクセス

ハードウェアやソフトウェアの導入、購入、保守、更新を行うことなく、高度なアプリケーションをユーザーに提供が可能。

使用するアプリケーション・リソースのみに支払う

SaaSのリソースは、特定のユーザーニーズに対応したアプリケーションであるため、より詳細なリソース消費情報を得ることができる。そのためユースケースや需要の変化に応じて簡単にスケールアップ、スケールダウンができ、使った分だけ支払うメニューが提供されていることも多い。

Webブラウザから直接アプリを実行できる

SaaSアプリケーションはWebブラウザから直接使えるため、ソフトウェアやアプリケーションのダウンロードやインストールが不要。

どこでも、どんなデバイスからでもアクセス可能

SaaSアプリケーションは、あらゆるコンピューターやデバイス上で動作する上、企業データを保護するセキュリティがすでに装備され、あらゆるデバイスからセキュアなアクセスが可能。

アップデートやメンテナンスはプロバイダーが実行

ソフトウェアのアップデートやメンテナンスはプロバイダーが行うため、ITチームやセキュリティチームの作業工数が削減。

SaaSの短所

続いて、SaaSの短所を紹介します。SaaSには大きく3つの短所があります。

セキュリティレベルの確認

SaaSは複数のサードパーティ製品やサービスで構成され、それらのセキュリティレベルに依存する。プロバイダーがセキュリティ対策について透明性を確保しているかを確認する必要がある。

アクセスコントロールの放棄

SaaSはデータやソフトウェアをクラウド側で保持するため、保存方法やアクセス方法は自社でコントロールできず、ある程度放棄することになる。

支払いの義務

SaaSを使用しなくなっても、契約によってはそのソフトウェアのサブスクリプション(使用料)を支払い続ける必要がある場合も



PaaS(Platform as a Service)の定義

PaaSとSaaS、IaaS、DaaSを比較する際は、PaaSの内容を正確に把握することが重要です。PaaSがSaaSと異なるのは、ユーザーに単一のユースケースを提供するのではなく、クラウドベースのアプリケーションを構築、テスト、展開、管理、更新できるプラットフォーム(基盤)を提供するという点です。プラットフォームとはこの場合、開発ツール、データベース管理システム、サーバ、ストレージ、ネットワークソリューションなどを指します。

1つのプロジェクトに複数の開発者が参加する場合、PaaSを利用することで、すべてのユーザーアカウントを管理し、アプリケーションのテスト、デプロイ、ホスト、メンテナンスといったライフサイクルを、一貫して行うことができます。このようなタスクを実行するには通常、大量のデータが必要となりますが、PaaSはデータの負荷を管理してバランスを保つことができます。AmazonのAWSやMicrosoftのAzureが代表的なPaaSです。

PaaSの長所

それでは、PaaSの長所を紹介します。PaaSには、以下のように3つの長所があります。

開発ツールやテンプレートで開発期間を短縮

最先端のアプリケーションを使用することで、アプリケーション作成から利用までの時間を短縮。

新しいプロジェクトでも場所を問わずコラボレーション

社員はどこからでも開発プログラムやコラボレーションプログラムにアクセスが可能。

高機能なソフトウェアへのアクセスを提供しながらコスト削減

使われていないソフトウェアまで購入する必要がなく、保守も不要となるため、コストを削減。

PaaSの短所

続いて、PaaSの短所を紹介します。PaaSには、次のように2つの短所があります。

ユーザー利便性の違い

PaaSプロバイダーによっては、セキュリティや互換性の問題が発生する可能性がある。

セキュリティギャップ

プラットフォームのセキュリティはPaaSプロバイダーが補償しているが、その上で自社開発したアプリケーションのセキュリティは開発した企業が責任を負う。

IaaS(Infrastructure as a Service)の定義

IaaSは、重要なストレージ、ネットワーク、およびコンピューティングリソースをクラウドに移行したものです。IaaSを利用することで、企業はオンプレミスのサーバやデータセンターの維持・管理にかかる費用を削減することができます。IaaSサービスは、必要なときに必要なだけインフラを拡大・縮小できるよう、従量課金で提供されます。

SaaS、PaaS、IaaS、DaaSを検討する際、仮想化された基盤を活用しようとしている企業は、IaaSに注目すべきでしょう。Google Compute EngineやAmazon Elastic Compute CloudはIaaSを代表するサービスです。

IaaSの長所

では、IaaSの長所を紹介しましょう。IaaSには、次のように4つの長所があります。

どこにいてもITリソースを使用可能

すべてのITリソースがプロバイダーによって最新の状態にアップデート・アップグレードされており、リソースの需要やビジネス内容に合わせてスケールアップまたはダウンできる。

ビジネスの可用性と継続性の向上

問題が発生した場合、サービスプロバイダーがトラブルシューティングを行い、インフラの信頼性を確保。

データセンター管理の負荷軽減

クラウドインフラを活用することで、ITチームはオンプレミスにおけるデータセンターの管理が不要になる。

付帯コストの削減

クラウドに移行することで、各種ハードウェアの購入、更新、保守にかかるコストを削減できる。

IaaSの短所

続いて、IaaSの短所を紹介します。IaaSには、2つの短所があります。

独立性の喪失

データを管理するプロバイダーへの依存が高まる。

セキュリティに関する懸念

サービス契約書を詳細まで確認し、プロバイダー側のセキュリティギャップに注意する必要がある。



DaaS(Desktop as a service)の定義

DaaSは、クラウド型の仮想デスクトップをサブスクリプションサービスの一部として企業に提供するものです。許可されたユーザーは、インターネットに接続されたデバイスで、どこからでも仮想デスクトップ経由で社内のファイルやアプリケーションを利用することができます。

DaaSとSaaSの違いとして、DaaSは会社で利用するすべてのアプリケーションへのアクセスを提供するのに対し、SaaSは1つのアプリケーションやプラットフォームへのアクセスのみを提供します。

また、エンドユーザーがファイルやアプリケーションにアクセスできるようにしたいと考えている企業にとって、同様の選択肢として仮想デスクトップ(VDI)があります。VDIとDaaSはどちらも仮想デスクトップを提供するソリューションであり、ユーザーはデスクトップ環境からアプリケーションにアクセスするものです。ただし、VDIは企業内のITチームがインフラの維持・管理を行う一方で、DaaSの場合はその作業をプロバイダーが行います。

DaaSの長所

それでは、DaaSの長所を紹介しましょう。DaaSには、次の4点の長所があります。

ビジネスの成長に合わせて、簡単に拡張可能

新しい社員が入社した際に、すぐにデスクトップ環境を追加して提供可能。

すべてのリソースへのアクセスを一元化

仮想デスクトップをクラウドから提供することで、アプリやファイルに1カ所からアクセスできるようになる。クラウドプラットフォームを利用することで、管理者はユーザーのニーズに応じて、新しいアプリやデータを動的にプロビジョニングすることが可能

リモートワーカーやハイブリッドワーカーの柔軟性を向上

仮想デスクトップは、いつでもどこからでもアクセスできる上、さまざまな端末から利用できる。

セキュリティの強化

すべてのデータがクラウドに保存されているため、デバイスの紛失や盗難による被害を受けない。

DaaSの短所

対するDaaSの短所は、次の2点となります。

トレーニングが必要

DaaSソリューションによっては、従業員が自分のデスクトップにアクセスする方法を学ぶのに時間がかかる場合がある。

コスト

デバイス単位の課金形態の場合は、使用権利の管理が複雑になる。ユーザー課金などのメニューを持つDaaSプロバイダーを選択することで、柔軟な対応が可能な場合もある。

どのクラウドサービスを選択すればいいのか?

クラウド型のインフラは、従来のオンプレミス型のものに比べて、拡張性、安定性、コスト、セキュリティやオートメンションなど、さまざまなメリットがあり、費用対効果や拡張性の高いソリューションを求める企業に多くのメリットをもたらします。

今後もクラウドサービスの利用を検討される企業は増えていくと思いますし、またすでにクラウドを利用している企業は見直しをされるかもしれません。自社が求めるクラウドサービスはDaaS、SaaS、PaaS、IaaSのうち、どれが適切なのか、特徴を把握しておくことが重要です。業界、業種、採用したい働き方など、企業の課題を十分に踏まえ、適切な導入を検討してください。

○シトリックス・システムズ・ジャパン株式会社