複数の道具を同時に扱うというのは人類の繁栄に大きく貢献したスキルで、このスキルを有する動物はめったに存在しないとされています。新たにインドネシアのタニンバル諸島に分布するシロビタイムジオウムが複数の道具を用いて「ゴルフ」をプレーできるようになったと話題を呼んでいます。

Innovative composite tool use by Goffin’s cockatoos (Cacatua goffiniana) | Scientific Reports

https://www.nature.com/articles/s41598-022-05529-9

Watch a clever cockatoo named Figaro play “golf” for a tasty reward | Ars Technica

https://arstechnica.com/science/2022/02/figaro-the-cockatoo-is-back-and-combining-tools-to-golf-for-nutty-reward/

Scientists Teach Cockatoos to Play 'Golf', Showing Off The Birds' Clever Tool Use

https://www.sciencealert.com/scientists-teach-cockatoos-to-play-golf-for-science

Cockatoos’ Impressive Golfing Skills Prove They're Capable Of Complex Tool Use | IFLScience

https://www.iflscience.com/plants-and-animals/cockatoos-impressive-golfing-skills-prove-theyre-capable-of-complex-tool-use/

以下が論文筆頭著者のアントニオ・J・オスナー=マスカロー氏が投稿した、シロビタイムジオウムが実際にゴルフをプレーする映像です。





今回オウムがプレイするゴルフはオウム向けの「ゴルフ」ということで、「ゲージに入れたボールでエサを取り出す」という内容。左右どちらかのケースにエサが入れられているゲージの前に、ボールと棒が置かれています。



最初にゴルフに挑むのは、フィガロという名前のシロビタイムジオウム。まずフィガロはボールと棒から意図的にボールのほうを選び、くちばしを使ってゲージにボールを投入しました。



続いて、棒を前足で位置を調整しつつくわえて……



上顎と舌で持ち上げ、穴に挿入して……



その棒でボールをショット。



右側のケースにボールを押し込み、ご褒美としてケースに入れられたエサをゲットしました。このゴルフでは、ご褒美のエサは左右どちらか一方のケースにしか入っておらず、獲得するためには意図的にエサの入っている側を狙ってボールを押し込まなくてはいけません。



頭部の毛が特徴的なフィニもゴルフをプレーできますが、そのやり方はフィガロとは異なります。フィガロの場合は棒の先端をくわえましたが、フィニがくわえるのは棒の半分ほどの位置。



棒を挿入する場所も、フィガロの場合はボールを投じた穴に入れましたが、フィニの場合はボールを投じた穴の横側にあるスリットを選んでいます。



さらに、ピピンの場合は棒の先端をかじるという手直しを行ったり……



棒を穴に挿入する際に脚を使うという点が特徴的。



今回の実験は、もともとはフィガロの「お遊び」から始まったとのこと。ある日小石で遊んでいたフィガロは金属製の仕切りの向こうにうっかり小石を落としてしまい途方にくれてしまいましたが、そのうちに「竹の切れっ端を使って小石を押し出す」という手法を編み出します。このフィガロの行動に興味を持ったオスナー=マスカロー氏らは金属製の仕切りの向こうにエサを置いてフィガロを観察することに。こうしたフィガロのお遊びを他の個体もできるかどうかを調べるため、今回の実験が設計されました。

今回実験に参加したシロビタイムジオウムはゴルフの解法を教わることはなかったそうで、自発的に解き方を思いついた個体は11羽中5羽とのこと。ムービーでは全てスムーズにエサを取り出しているように見えますが、実際には箱をなんとかしてこじ開けようとするなど試行錯誤の期間があったそうで、実際に「箱を揺らして、その振動でエサが入っている部分の開閉機構を作動させる」という手法を編み出した個体もいました。一方、ひとたび解法を編み出した後は、格段に短い時間でゴルフでエサを獲得することができるようになったそうです。

オスナー=マスカロー氏らが特筆しているのが、プレー時に見られる個体ごとの解法の差異です。おのおのの個体が独自のやり方でプレーを行うというのは「すでに編み出された動作を単純に真似る」ということではなく、自発的に改良を行えるという高度に一般化された認知処理能力を有していることを指し示しているとのことで、棒でシロアリをほじくり出して食べるチンパンジーがおのおののほじくり方を編み出すという観察記録に類するものだと評されています。



オスナー=マスカロー氏らはオウムと「人間の子ども」の問題解決スキルを比較するという観点の分析も行っており、異なる種を比較することで「技術的能力をどのように習得するのか」についての理解を深めようとしているとのことです。