この記事をまとめると

◼︎日産ではマーチがまだラインアップに残っており地味に売れ続けている

◼︎販売台数ランキングの上位50台にも名を連ねている

◼︎シンプルな操作系が年配者に向いているとのことだ

すっかり影に埋もれたマーチ、じつは意外と売れていた?

 先日、日産ディーラーで、ノートについて話を聞いている時に折り込みチラシのようなものを見せながらセールスマンが、「これを見てもおわかりのように、ノートは看板車種ですからね」と、チラシに大きくノートが掲載されているのを見せながら説明してくれた。

 ほかにはセレナやキックスなども掲載され、フルモデルチェンジが近いとされるエクストレイルを指しながら、「もうこのモデルは日本以外では販売していませんけどね」とセールスマンが話してきたので、「日産さんは息の長いモデルが多いですよね」と話しをふると、チラシの下のほうを指さし、「マーチもまだ売っていますよ」と言ってきた。

 ただセールスマンの話を聞くと、ここのところマーチはよく売れるようになってきたとのこと。初代マーチは1982年に、車名を一般公募してデビューしている。そして現行型は2010年にデビューした4代目となり、タイで生産されている。

 デビューから10年以上が経過しているマーチだが、自販連(日本自動車販売協会連合会)統計によると、2021年1月から10月の累計販売台数は7814台(月販平均約781台)。自販連統計での、通称名(車名別)ランキングは上位50車までがウエブサイト上で掲載されるのだが、2020年はマーチが単月で50位以内に入る月のほうが少なかったのだが、2021年に入ると1月から10月まで毎月50位以内にランクインしているので、台数は少ないものの確かに売れている印象を受ける。

売れるのも納得! マーチは車両価格がめちゃめちゃ安い

 セールスマンいわく、まずは価格設定にあるとのこと。廉価グレードのSにカーナビ、ETC、ドラレコ、フロアマット、ドアバイザー、ナンバーフレーム、ホイールナットを装着した支払総額は178万1697円。デイズのXグレードにて同条件で試算すると、支払総額は172万7344円となるので、軽自動車並みの予算で購入することが可能である。しかも、自動ブレーキなど、ひととおりの安全運転支援デバイスは標準装備となっている。ちなみにヤリスの1リッターモデルでほぼ同条件で試算すると、支払い総額は182万円となった。

 さらにセールスマンは、「デビューから10年経っていますので、操作系が古いのですが、そこがかえって高齢のお客様はそこが気に入って購入されることも目立ちます」と話してくれた。セールスマンはその一例として床から生えている機械式のCVTセレクターレバーを挙げてくれた。「最近では電子制御式セレクターを採用するモデルも多くなってきましたが、やはり年配のお客様には従来からのセレクターレバーを好まれるようです。また電子制御式パーキングブレーキも増えていますが、マーチは従来からのレバー式となっております」とのこと。これは現行ノート系が電子制御セレクターや電子制御式パーキングブレーキを採用したという“お家事情”があるようだ。セールスマンとしては量販車種のノートを売りたいのだろうが、ノートは設計年次が新しく、シリーズハイブリッドユニットのみということもあり、計器盤なども含めて最新トレンドを追いかけた結果、一部年配ユーザーが抵抗を示しているようなのである。

 いまの日本での新車販売においては、年配ユーザーはお得意様中のお得意様であり、重要ターゲットユーザーといった存在になっている。若年層が運転免許すら持たない人が多いなか、積極的に新車購入に興味を示したり、個人所有を続けるのは年配層ほど目立つ。そんななか、マーチは新車販売業界におけるスマホの“楽々フォン(ガラケー?)”的存在となっているのかもしれない。