チェーンの張りはドコで見る?緩くてもダメだけど、張りすぎるとリヤサスが動かなくなる!【ライドメンテナンス013】(ピックアップ)
まずチェーンの張りが緩すぎる(アソビが多い)場合を想像してみよう。たるんでいるから加減速のたびにガシャガシャと音がしたりショックも大きく、乗り心地が悪い。そして極端にアソビが大きかったら、スプロケットからチェーンが外れてしまう危険だってある。ここまではなんとなくイメージできるのではないだろうか。
ではチェーンの張りがキツいとどうなのか? 答えを先に言ってしまうと、リヤサスペンションが動かなくなる。これは意外と知らない人が多いかもしれない。
じつは多くのスポーツバイクの場合、“アンチスクワット”を設定している構造上、スイングアームや後輪が沈む方向に動くと、停車状態(空車)と比べてドライブ軸とドリブン軸の間隔が広くなる。ということは逆に考えると、もし停車状態でアソビが無いピッタリの状態にチェーンを張っていたら、スイングアームが沈む方向に動くのを邪魔してしまうわけだ。
それだと路面の凹凸に対して後輪がきちんと追従することができず、最悪の場合は後輪が路面から浮いてしまう。それがコーナリング中で車体がバンクしている時だったら、スリップして転倒する危険に繋がる。
というワケで、チェーンの張りを適正に保つことは、安全の上でも非常に重要なのだ。
現代のほとんどのスポーツバイクは、スイングアームの付け根のピボット軸が、エンジンのドライブスプロケットの軸(ドライブ軸)より高い場所に配置されている。これはスロットルを開けた時に、後輪を路面側に押し付けるための設定で“アンチスクワット”と呼ばれている。この構造のため、路面の凹凸などで後輪が沈む方向に動くと、ドライブ軸とドリブン軸(後輪のアクスル軸)の間隔が広がる
チェーンの張り具合のチェックの仕方サイドスタンドで停めて(またはメンテナンススタンドで立てて、後輪に車重が加わっている状態)、ギヤをニュートラルに入れる。その状態でエンジン側のドライブ軸と、後輪のドリブン軸(アクスル軸)のほぼ中心を指で押し上げて、チェーンが上下に動くたるみの幅を計測する。
たるみの幅は車種によって異なるが、規定値を記載したステッカーがスイングアームやチェーンケースなどに貼られている場合が多い(バイクに付属するハンドブックにも記載されている)。
調整しないといけない状態の場合は、ショップに相談しようもし規定値より緩すぎたりキツすぎている場合は、チェーンの張り調整が必要だ。調整作業はアクスル軸を緩める大型の工具も必要になるので、無理せずバイクショップに依頼するのが良いかもしれない。
また、張りのチェックは一カ所だけでなく、タイヤを回して何カ所かチェックしよう(大型バイクだとチェーンの全長は1.8mほどあるので、40~50cmおきに4~5カ所くらい)。そしてどの場所もだいたい同じ張り具合なら良いが、場所によって緩いところやキツところがある場合は“片伸び”を起こしているので注意が必要。
じつは“片伸び”と呼ぶものの、実際にはチェーンが部分的に伸びているのではなく、縮んでいるのだ(コレも本当は正確な表現ではないが……)。
劣化やメンテナンス不足でサビたり砂利や泥汚れが詰まって固着すると(専門的にはこの症状を“キンク”と呼ぶ)、チェーンが真っ直ぐに伸びなくなる。すると、結果的にその部分の長さが短くなるため、張りがキツくなる場所が生まれてしまうのだ。
そんな場合はチェーンの清掃・潤滑を行い、再び張りをチェック。それでも片伸びが改善されない場合は、バイクショップに相談しよう(症状が悪い場合はチェーン交換になる)。
また、新品のチェーンは初期伸びがあり、装着後数百キロはマメにチェックしたい。新車時やチェーン交換後のケアはショップに相談してみよう。
チェーンが伸びるってどういうこと?と思った方はこちらをチェック!
チェーンって、ドコが伸びるんですか?【ライドメンテナンス006】
エンジン側のドライブ軸(スプロケットの中心。大抵はカバーで見えないので、大体の場所でOK)と、後輪のドリブン軸(アクスル軸)のほぼ真ん中を指で押し上げてチェック
ドゥカティのパニガーレV4のスイングアームに貼られた、チェーンの張りの計測方法と規定値等を記したステッカー。かなり細かく記載されているが、それだけ重要というコトだ