そろそろ大掃除を本格的にと考え始める時期ですが、アメリカではどのようなお掃除方法が一般的なのでしょうか? 今回は、アメリカ・シアトルに住んで十数年。子育てに奮闘するライターのNorikoさんに、気になる北米での庭掃除の事情について教えてもらいました。

アメリカで憧れの一軒家暮らしにまつわる負担

広大なアメリカでは、極寒の地から砂漠地帯、やしの木が並ぶ南国まで、住む場所によって自然環境が全く異なります。シアトルのあるワシントン州は、札幌や仙台と似ているとも言われ、針葉樹の豊かな森が水辺に広がります。ハイキング用のトレイル、キャンプ場、公園が多くあり、地元の人々は緑や花のあふれる中、散策を楽しんでいます。

●美しい風景の裏側には住人たちの手入れと管理が…!

と、天候のよい夏まではそうなのですが、シアトルは9月頃の短い秋が過ぎると、長い長い雨の季節に突入します。雨がどっさり降ったあとには、落ち葉もどっさり。ハリウッド映画やTVドラマでおなじみ、芝生が敷かれたアメリカの美しい住宅街は、住人による日々の手入れや管理で成り立っています。

わが家は庭と呼べるものはなく、手入れしないと近隣からクレームが来るような(本当にある!)高級住宅地でもないのですが、それでも、家の前の歩道から玄関までに行き着くまでのスペースなど、周囲はきれいにしておく必要があります。

気候変動の影響もあるのか、霧雨タイプの雨が特徴のシアトルでも年々、嵐のような強い雨にさらされ、ときに停電することも。そうなると、もう大変。家の周りはもとより、近所から枝葉が山のように飛んできます。

●アメリカで主流の掃除道具、ブロアーとは?

庭掃除には、日本でも使うホウキや、熊手などのレーキ(アメリカではレイクと呼ぶ)もありますが、「ブロアー」が一般的です。パソコンのキーボードや周辺機器、車内などを掃除するブロアーは、日本人にも一部浸透してきているのではないでしょうか。空気の勢いでホコリやゴミを吹き飛ばす掃除道具です。庭掃除に用いるブロアーは、それを大きくしたような製品。ほかと区別して、リーフ・ブロアーとも呼ばれます。

アメリカに来たばかりの頃、初めて目にした私は、豪快に落ち葉を吹き飛ばしていく姿に驚きました。「確かにその場はきれいになるけど、ほかの場所に移るだけで、散らかしていることに?」というように見えたからです。

でもじつは、別の場所にちゃんと集めて、落ち葉の山を作っていたんですね。ホウキや熊手と原理は一緒でした。

ブロアーの価格帯は幅があり、3000円前後のシンプルなものから、20万円ほどする業務用までそろいます。時間制でレンタルもできますが、在庫が限られ、時期によっては予約が難しいことも。というわけで、わが家では思い切って約1万円の標準的な電動タイプを購入してみました。

●ブロアーで家事の時短がかなう!

よかったのは、コンクリートの舗道が掃除しやすくなったことです。熊手では爪部分が引っかかるし、ホウキでは時間がかかりすぎるという難点がありました。

しかし、ブロアーで勢い良く吹き飛ばして庭ゴミを集めるのは、まさに一瞬。冬の庭掃除は週末に夫と小学生の息子が担当し、頑張ってこなしてくれていますが、ブロアー導入後は私も「えっ、もう終わったの?」とびっくりするほど、時短になっているようです。

わが家はよりパワフルな機種を求めて、コードをコンセントにつなぐ必要のある電動タイプにしました。今は充電式のコードレス・タイプも十分なパワーがあり、重量も昔ほどはなく、軽量の製品がたくさん出ています。年末年始のセールなどで、用途や予算に合わせて、選んでみてはいかがでしょうか。

●シアトルの庭ゴミは市で回収して堆肥化

シアトルでは、ゴミの分別は大きく3種類。

一般ゴミ、資源ゴミ、庭ゴミ、それぞれに専用のゴミ箱が用意され、家の前の道路脇に出しておくと決まった曜日に回収してもらえます。

庭ゴミには調理や食事で出た食品の生ゴミも含まれます。

生ゴミ、庭ゴミは「コンポスト」ゴミとも呼ばれ、集めて堆肥にされます。落ち葉、枝、雑草、芝生などの庭ゴミのほか、肉、魚、骨を含めた生ゴミ全般、ティーバッグ、ペーパータオル、ピザの入っていたボックス、シュレッダーにかけた紙、紙製の玉子が入っていたパックやホットドッグのトレー、紙皿、紙袋もOK。かなり幅が広くなっています。

ただし、堆肥化できないビニール袋やプラスチック製品、金属、ガラスなどを入れるのは禁止。また、動物の糞も衛生的な理由から入れられません。

サンフランシスコなど、エコ推進都市の多いアメリカ西海岸。シアトルも、1991年から「サステナブル・シアトル(S2)」のプロジェクトに取り組むなど、力を入れています。現在は約60%の一般廃棄物のリサイクル率を誇り、2022年までに70%達成を目標にしています。シアトルでは分別のルールを守らずに「コンポスト」ゴミや資源ゴミを一般ゴミ用のゴミ箱に入れて回収に出すと警告が出され、罰金が科せられることも。

家庭での堆肥化だと、じつは微生物が自然にすぐ分解できるものは、細かく砕いた野菜クズや落葉広葉樹の枯れ葉など、使えるものが限られますし、広い庭がないと悪臭の問題もあって設置場所に困るもの。リサイクルできないゴミを減らし、環境問題に貢献できる方法のひとつとしてこうした制度があると、都市の狭い家で暮らす市民には、ありがたいですね。