50代、つらい人間関係は手放していい。こだわりすぎない生き方のコツ
年を重ねるにつれ、人間関係などの物事へのこだわりが強くなる人もいれば、こだわりを手放せる人もいます。後者であれば心穏やかに過ごせそうですが、前者の場合、どうにも生きづらいかもしれません。50代の女性が心穏やかに過ごすにはどうしたらいいでしょうか。ここでは、90歳まで現役医師であった中村恒子さんとの共著書『うまいこと老いる生き方』(すばる舎)を執筆した54歳の精神科医・奥田弘美さんにヒントを伺いました。
50代以降は、自分の欲やつらい人間関係を手放していく
年齢を重ねたとしても、人間関係で思い通りにいかずストレスが溜まることもあるでしょう。そんなときは「自分に過剰な欲がないか、考えてみて」と、奥田さんは言います。
●欲がなくなれば、相手への不満もなくなる
「相手が自分の思ったように動いてくれない。自分を大事にしてくれない。こうした不満の正体は、『自分の望んでいることが叶えてもらえない』という思いかもしれません。
どうでしょう? もし心当たりがあるなら、望みそのものを少しだけ手放してみると、心安らかに過ごすヒントが見えてくることがあります。
不満の正体は、望み。望みの根っこには、我欲が隠れていることも。他人に何かを望み、それが思うように返ってこないと苦しくなりますが、その根っこにある我欲に気づくと、相手への要求のグレードを下げやすくなります。
人間関係は相手があってのことですから、自分の要求に無理やり相手を従わせても、不満が残るだけ。相手を動かしたいときは、まずはお願いをしてみて、それがダメならサッと引き下がる。そんな潔さが、心安らかに過ごすためには必要なのではないでしょうか」
●50代以降は、つらい人間関係を見直す
また、50代以降は、つらい人間関係を見直してみてもいいでしょう。
「接する度に不快感を持つようならば、その相手とはいったん距離を置いてみるといいと思います。誘われたら『また時間ができたときに連絡するね』といったあいまいな返事をするなど、距離を置く方法はいくらでもあります。
50代は、子育てからも解放されるし仕事の第1線からも徐々に退いていきますので、今までのように社会的な利害関係から誰とでも仲良くする必要はなくなります。本当に自分に合う人を見極めて、楽しくない人間関係は整理していくといいでしょう」
●「しがらみ」から解放されていくのが、50代の特権
奥田さんは、子育てや仕事の忙しさがひと段落した50代以降の女性には、こんな“特権”があると言います。
「シニアになればなるほど、義理や仕事のために無理してつき合ってきた人間関係や、社会のしがらみから、自分の心がけ次第で解放されることが可能です。
上辺だけの人間関係は徐々に縮小していき、本当に信頼し合える人とだけ、少数精鋭でつき合うようにすると、心穏やかにラクになれることを中村先生の生き方から学びました。友達も多すぎると、その分、煩わしい人間関係も多くなりますから」
●どうにもつらいときは「寝る」に限る
それでも気が晴れないときの最大の処方箋は、「寝ること」。
「とくに疲れているときって、自己嫌悪に陥ったり、ネガティブな気持ちに傾きやすい。中村先生はそんなとき、『しゃあない。過去は変えられない。次からはがんばろう』と思って、さっさと寝るに限るとよく言ってました。実際、睡眠をたっぷりとると脳科学的にもポジティブな気持ちが湧くことが証明されています。
気持ちが滅入ったときこそ、栄養豊かなお食事を摂って、お酒が好きな方は適量を召し上がり、温かいお風呂に入ってたっぷりと睡眠を取る。そうすると、通常、翌朝にはつらい気持ちがかなり薄らいでくるものです。
裏返せば、寝ないと嫌な記憶はなかなか薄まりません。そうはいっても、なかなか寝られない人もいるでしょう。もしどうしても自力で眠れない日が多い人は、心療内科でぜひ相談してください。実は私自身も不眠になりやすく、ときどき睡眠導入剤を活用しています」
奥田さんは、「自分が弱っているときこそ、自分がゆったりできること、楽しいと思えることを多めにしてあげて」と強調します。余分な欲を捨てる、人間関係を整理する、モヤモヤしたらサッサと寝る。この3つができれば、50代からの生き方は大分ラクになるはずです。