この冬仕込みたい「本格キムチ」の作り方。プロが教える5つのポイント

想像以上に簡単!野菜たっぷり本格キムチの作り方

本格的な冬の寒さが到来するこの時期、スーパーでは大きな白菜がひと玉で売られているのを見かけるようになりました。韓国旅行に行けない今こそ、旬を迎える白菜を使って本格的な白菜キムチを作ってはいかがでしょう。この記事では、料理研究家のキム・ヨンハさんに教わった、家庭でも簡単に作れる白菜キムチのレシピをご紹介します。

私たち日本人の食生活に定着したキムチですが、「韓国の食堂で出てくるような本格的なキムチが食べたい!」「スーパーのキムチは甘すぎる」「市販のキムチの添加物が気になる」という声をよく聞きます。

そこで簡単で本格的な韓国料理のレシピが好評の料理研究家キム・ヨンハさんに、キム先生のご家庭でも通年欠かせないという白菜キムチの作り方を教わりました。

「韓国では11~12月にかけて、家族や親せき、ご近所の女性が集まって一冬分のキムチを漬ける『キムジャン』という冬の一大イベントがあります。キムジャン文化は、ユネスコ世界無形文化遺産にも登録されているほどなんですよ。多い家庭では、1シーズンに100玉の白菜を漬けることもあります(笑)。白菜の味も春夏と冬ではまったく違うので、いろいろな季節の白菜で作って味の違いを楽しんでみるのもいいですね」

本格的な白菜キムチをおいしく作る5つのコツ

1. 手に持って軽い白菜を選ぶ

「白菜は外側がきれいな緑色、内側がきれいな黄色のものを選びましょう。冬の白菜は特に水分が多いので、手に持ったときに軽い(水分が少ない)もののほうが、調味料(ヤンニョム)が染み込みやすく、キムチ作りには適しています」

2. 韓国産の唐辛子を使う

「唐辛子粉は粉状~中粒まで、さまざまな粒度のものがありますが、白菜キムチ作りにおすすめなのは、キムチ用として売られている韓国産の荒めの唐辛子粉。唐辛子を機械で乾燥させるのではなく、天日干しで自然乾燥させているので、色がとてもきれいで味もおいしいのです。キムチは赤い色がきれいに出ることも大事です」

3. 塩は粗塩がおすすめ

「前述の通り、日本の冬の白菜は少し水っぽいので、前日に30分ほど塩漬けするのがポイントです。その際に使用するのは粗塩がおすすめ。普通の塩に比べてミネラル分が多く、白菜ともなじみやすいので、白菜から水分が出やすくなります」

4. アミの塩辛はマストで加える

「アミの塩辛とは小えびを塩漬けにした調味料で、キムチに加えるとコクや旨みが出ます。おいしいキムチ作りには欠かせません。最近では扱っているスーパーもありますし、韓国食材店や通信販売で購入することができて、冷凍庫で長期保存も可能です。塩味が強いので、料理の味付けにも使えますよ。ズッキーニ炒め、ゲランチム(韓国風茶碗蒸し)などに使うと、コクが加わりおすすめです」

5. できれば韓国産のナンプラーを使う

「韓国産のナンプラーは、普通のナンプラーに比べて味や香りが濃いのが特徴。キムチに加えると、風味がより豊かになります。本格的なキムチを作りたい方は、ぜひゲットしていただきたいアイテムです。アミの塩辛同様、スーパーや韓国食材店などで購入することができます。もちろん普通のナンプラーでも代用できますよ」

材料(白菜1/2株分)

調理時間:45分(※塩水に漬ける時間とひと晩置く時間は除く)

・白菜……1/2株
・玉ねぎ……1個
・にんじん(小)……1本
・小ねぎ……1/2束
・粗塩……100g
・水……1000cc
・白いりごま……適量

〈キムチのり〉
・小麦粉……大さじ2杯
・水……200cc

〈ヤンニョム〉
・唐辛子粉……100g
・ナンプラーまたはイワシエキス……80cc
・にんにく(すりおろし)……70g
・砂糖……70g
・アミの塩辛……大さじ1杯

下準備

1. ボウルに塩水を用意する

大き目のボウルに粗塩と水を入れ、軽く混ぜます。粗塩は完全に溶けていなくても大丈夫です。

2. 白菜を切る

ざく切りした白菜を塩水の入ったボウルに入れ、混ぜ合わせます。白菜によりますが大体30~60分ほど置きます。その間、数回白菜の上下をひっくり返してください。

「ざく切りの大きさは、食べておいしいと感じる大きさでOK。塩水に漬け置く時間は、白菜の芯がパキッと折れずにやわらかくしなるくらいが目安です」

3. 重石をのせてひと晩置く

白菜がやわらかくなったらザルにあげてラップをかぶせ、重石(ペットボトルなどで可)をのせてひと晩、水気をしっかり切ります。

「ひと晩重石で水気を切ることで、白菜がちょうどいい水分になっているので、さらに手で水分を絞る必要はありません」

作り方

1. 材料を切る

玉ねぎとにんじんは千切り、小ねぎは5cmの幅に切ります。

2. キムチのりを作る

水100ccと小麦粉を合わせて、粉っぽさがなくなるまでかき混ぜます。小鍋に水100ccを入れ中火にかけ、沸騰したら水と小麦粉を混ぜ合わせたものを入れて、泡立て器などでよく混ぜます。つのが立つくらいののり状になってきたら、火を止めて冷ましておきましょう。

「キムチのりとは小麦粉を水で溶いたものですが、キムチの発酵を早め、素材とヤンニョムの絡みをよくするつなぎのような役目をしてくれます。キムチのりの代わりに、冷やごはんをお粥状にしたものを使っても同様の効果が得られます」

3. ヤンニョムの材料を混ぜる

唐辛子粉にナンプラーを入れてやわらかくし、砂糖、にんにくのすりおろし、アミの塩辛の順に入れて混ぜ、最後に全体をよく混ぜます。

「ひとつの調味料を加えるごとに、軽くスプーンで混ぜ合わせると全体がなじみやすいです。すべて混ざったら、韓国ではおなじみの合わせ調味料『ヤンニョム』の完成です」

4. キムチのりを加えてさらに混ぜる

ヤンニョムに冷ましたキムチのりを加えてさらに混ぜ合わせます。

大きいボウルに白菜、玉ねぎ、にんじんを入れ、キムチのりと合わせたヤンニョムを加えてよく混ぜ合わせます。

最後に小ねぎと白いりごまを加えてさらに混ぜます。

「小ねぎだけを最後に入れるのは、きれいな緑色と形を残すためです。全体の味は、この段階ではちょっとしょっぱいと感じるかもしれませんが、ひと晩経つと野菜からさらに水分が出てくるので、ちょうどよくなるんです」

教えてキム先生!キムチ作りで気になるあれこれ

食べごろはいつ?

「作った当日から食べることができます。作りたてのフレッシュなキムチは、冬が旬の生かきとの相性が抜群!韓国ではキムジャンの日の定番メニューなんですよ。韓国海苔を添えてごはんと一緒に食べるのがおすすめ。もちろん、少し日が経ち酸味が出てきたキムチもおいしいですので、味わいの変化を楽しんでくださいね」

保存方法は?

「できあがったキムチは、チャック付きの袋や、熱湯消毒した清潔なガラス容器に入れて冷蔵庫で保存します。ガラス容器の場合、キムチの上にラップをかけて手で少しずつ抑えながら平らにならしておくことで、発酵を遅くすることができます。食べるたびにこの作業をしておくことで、より新鮮でおいしい状態がキープできますよ」

甘めに仕上げたいときはどうしたらいい?

「ヤンニョムを作る際の砂糖の量を増やして、調整してみてください。辛さを抑えたいときも、同様に粉唐辛子の量を減らしてみてください。白菜の量に対して、ヤンニョムの量が多いと思われるかもしれませんが、ヤンニョムはたっぷり多いくらいで作るのがコツ。できあがったキムチをキムチチゲや炒め物などにアレンジするときも、ヤンニョムが足りないと味がなかなか決まらないのです」

おうちでも手軽に作れる!本格キムチを堪能しよう

「冷蔵庫に入れて10日間はおいしく食べられますが、酸っぱくなってしまったら、キムチチゲやキムチチャーハンにするとまた違ったおいしさが楽しめます。ちなみに私は、さばの水煮缶を使ったキムチチゲが大好きです!」とキム先生。

作りたての浅漬けのような味から、発酵が進んだ酸味と深みのある味わいまで、“味変”も楽しめる自家製キムチ。白菜がおいしいこの季節の、年中行事に加えてみてはいかがでしょう?

取材・文/田名部知子
撮影/宮本信義