京漬物名店の漬物博士が教える!おいしいぬか漬けを作るコツ

名店「西利」の漬物博士が教えるぬか漬けのコツ

おうちで初めてのぬか漬けに挑戦、むずかしく考える必要はありません。漬物博士の平井さんが、上手においしく漬ける方法を教えてくれました。

まずは、ぬか漬け作りに欠かせないぬか床の作り方からご紹介します。

ぬか床の作り方

材料

・米ぬか(生ぬか、煎りぬかどちらでもお好みで)……500g
・水……500cc
・塩……75g
・輪切りとうがらし……5~6個
・昆布……3~5枚(1cm角切)

「米ぬかは、生でも煎りでもお好みで結構ですが、ポイントはきれいでフレッシュな米ぬかを選ぶことです。汚れたものでは雑菌が混じり、良いぬか床が作れないので注意してください」

手順

米ぬかをポリ袋に入れるのがコツ

1. 水に塩と昆布を入れて沸騰させ、そのまま冷ます

2. 米ぬかをポリ袋に入れる

「ポリ袋を使えば米ぬかと水を混ぜる工程を手軽にできます。手や周囲が汚れないので、おうちでの作業に最適ですよ」

3. 1から一旦、昆布を取り出しておく

4. ポリ袋に3をゆっくりと、約8割を注ぐ

理想的な硬さは、味噌が少しゆるくなった程度が目安

5. 全体に水が混じるように、ゆっくりとポリ袋を揉み、残りの塩水を加える

6. ダマにならないよう注意しながら、理想的な硬さになるまで全体を混ぜ合わせる

「ポリ袋なら、全体を見ながら混ぜ合わせることができ、硬さの具合も判断しやすい。味噌が少しゆるくなったくらいの硬さが理想的です」

昆布ととうがらしでぬか床に旨味を加える

7. 3で取り出した昆布と輪切りのとうがらしを入れ、混ぜ合わせる

「これでぬか床のベースが完成です。昆布ととうがらしがぬか床に旨味を与え、とうがらしの赤色にはぬか床の見た目を映えさせる効果も期待できます」

新鮮できれいな野菜を捨て漬けに

8. 捨て漬け用の野菜をぬか床全体に均等に漬ける

9. ポリ袋の中の空気を可能な限り抜き、しっかり閉めて温かい室内に置いておく

「料理で使った野菜の切れ端で結構ですが、その野菜自体がフレッシュできれいなものであることが大切です。良い菌をぬか床に与えるために、鮮度が高く、きれいに洗った野菜を捨て漬けに使うようにしてください。容量はぬか床の5~10%程度が目安です。野菜の種類はお好みで結構です」

10. 翌日、野菜を取り出し、軽く絞るようにして、付着しているぬかと絞り汁を戻す

11. ぬか床を底からかき混ぜたあと、新しい捨て漬け用の野菜を漬け、9と同じようにする

「この工程を夏場なら2週間程度、今の季節なら3週間程度続けます。捨て漬け用の野菜にも個性があるので、毎日交換することで良い菌をぬか床が受け取れるようにするのがポイントです。やがてぬか床に大きな変化が現れます。そう、発酵がはじまるのです」

ガスで膨らむポリ袋。いよいよぬか床の完成へ

「捨て漬け用の野菜からさまざまな微生物を受け取ったぬか床が自ら発酵し、その産物としてガスが発生します。そのガスによってポリ袋が膨らむので、見た目ですぐに変化がわかります。ポリ袋を使う利点のひとつです」

「ポリ袋が膨らみ、ぬか床らしい匂いを感じたら、そのときの捨て漬け野菜を少し食べてみてください。ご自身の好みの味になっていたら完成です。捨て漬け野菜を取り出し、本漬けするための容器にぬか床を移し換えてください。上画像のような容器でも結構ですが、おうちで便利なのはチャック付きの保存用ポリ袋です。本漬けは冷蔵庫での保管になるので、やわらかく形状が自在になる容器がおすすめです」

さあ、完成したぬか床で、いよいよ本漬けです。でも食材をそのまま漬けるのではおいしいぬか漬けにはなりません。そのための下準備を、平井さんに教えてもらいました。

本漬け

ここでは、ぬか漬けにするとおいしい野菜の代表格、なすを使って本漬けを教わりました。

材料

・なす……1~2本
・塩(みょうばんを混ぜたもの)……適量
※みょうばんの量は塩100に対しみょうばん6の割合

手順

下準備にもポリ袋が活躍

1. ポリ袋になすを入れ、塩を適量まぶす

「塩揉みの工程も、ポリ袋を使うとスムーズです。塩にみょうばんを加えて揉むことで、漬け上がりのなすの色味が鮮やかになります」

2. なす全体を塩でやさしく洗うような感じで塩揉みする

3. 揉み終えたら、なすの表面に付いた余分な塩を落とす

4. ぬか床の上側を掘り起こしてなすを埋め、ぬか床をかぶせて漬け込み、冷蔵庫で保管する

「チャック付きの保存用ポリ袋を使う場合は、なす全体をぬか床で包み込むように漬けるのがポイントです。ぬか床の量に合わせて漬けるなすの量も調整しましょう。欲ばらず、適量を漬けるのが基本です」

9~12時間でおいしく漬かる

5. 食べ頃になったら、なすに付いたぬかを払いながら取り出す

6. 余分なぬかを流水でさっと流し、水気をふき、食べやすい大きさに切る

わずか半日で、おいしいなすのぬか漬けが完成です。ほかの野菜を漬ける場合の下準備についても伺ったので、ご紹介します。

大根・きゅうり・にんじん・白菜を漬ける場合の下準備

大根

皮はむかずに5cmほどの輪切りにし、そのまま漬けます。20時間ほどでおいしく漬かります。

きゅうり

きゅうり全体にぬか床をすり込むように揉み込んでから漬けます。6~9時間ほどでおいしく漬かります。

にんじん

皮をむいて好みの長さにカットし、縦半分にしてから漬けます(大きいものは縦4等分に)。3日ほどでおいしく漬かります。

白菜

4つ割りにして芯を取り、軽く塩を振ってしんなりさせ、1枚ずつはがして適度な大きさにカットして漬けます。ほぼ1日でおいしく漬かります。

すぐにぬか漬けをはじめられる「西利の発酵ぬか床」

いかがでしたか。ぬか床をしっかり作っておけば、毎日おいしいぬか漬けを楽しめます。

ただ、これからの季節、ぬか床をデビューさせるのに3週間近くも待っていられない……、早くぬか漬けを食べたい……、という人には、スグレモノをご紹介します。

「西利の発酵ぬか床」は、あらかじめ発酵熟成させたぬか床に、下準備した野菜を漬け込むだけでおいしいぬか漬けを作れる簡単便利なぬか漬けキット。伝統の京漬物・すぐきから発見された乳酸菌「ラブレ乳酸菌」で発酵熟成させた西利オリジナルのぬか床です。

チャック付きのパッケージなので、下準備した野菜を漬け込み、空気を抜いて閉めて冷蔵庫で保管するだけで、おいしいぬか漬けが楽しめます。これならすぐにぬか漬けをはじめられますよ。

ぬか床のお手入れのポイント

最後にぬか床のお手入れのポイントをまとめておきます。

・常に冷蔵庫に入れて保管する
・ぬか床が水っぽくなってきたら、清潔なペーパータオルで水分を取り除く
・ぬか床の表面に白い膜(産膜酵母)が出てきたら取り除き、ぬか床を混ぜひと晩冷蔵庫で保管し、翌日様子を確認する

・混ぜ方はぬか床の底と上を入れ替えるように混ぜる(天地入れ替え)のがポイント
・容器の縁やチャック部分に付いたぬか床は毎回きれいにふき取って清潔を保つ

このような管理を続けていけば、ぬか床は元気においしいぬか漬けを生み出してくれるので大切に扱っていきましょう。

手作りのぬか漬けで発酵生活をおいしく満喫

米ぬかをベースにしたぬか漬けは、まさしくお米の国ニッポンならではの発酵食。豊富な野菜に恵まれているおかげで、さまざまなぬか漬けを一年中楽しめます。その恩恵を、それぞれの好みの素材で、もっともっとおいしく満喫したいですね。

取材・文/Terry Naniwa
撮影/西村仁見

取材協力

京漬物の名店「西利」の本店は、JR京都駅から徒歩10分程の洛中・西本願寺前。千枚漬をはじめ、ぬか漬け、浅漬けなど伝統の技で漬けられた京漬物の粋がそろい、京都人から観光客まで多数の人が訪れています。

2021年11月12日、その本店2階に、ぬか漬け教室や漬物料理教室などが体験できる「西利キッチン」がオープン。開催日時など詳細は下記までお問い合わせを。

店舗名:京つけもの西利本店
電話番号:075-361-8181
最寄駅:JR京都駅より徒歩約10分京都市バス「七条堀川」下車すぐ
郵便番号:660-8581
住所:京都府京都市下京区堀川通七条上ル西本願寺前
市区町村:京都市下京区
町域:堀川通七条上ル西本願寺前
営業時間:9:00~18:00
定休日:不定休