高校野球・秋季東京大会優勝した国学院久我山の選手たち【写真:中戸川知世】

写真拡大

秋季東京大会・決勝、国学院久我山は劇的サヨナラで優勝

 高校野球の秋季東京大会は7日、決勝が神宮球場で行われ、国学院久我山が4-3で二松学舎大付に勝利。2点ビハインドからの逆転サヨナラ勝ちで、11年ぶりのセンバツ出場を当確させた。練習グラウンドはサッカー部と共用。平日の練習は午後7時には終了するなど、他の強豪校に比べ恵まれない部分もあるが、尾崎直輝監督は「不利にはならない」と強調。成長への道筋を「自己管理」で考えてきた選手を称賛した。

 あと一人から劇的勝利を掴んだ。9回裏、2安打と四球で2死満塁とし、4番・成田陸がライト方向へ大飛球を放った。右翼手が懸命に追うも、ボールはグラブをはじいて走者一掃の3点二塁打に。逆転サヨナラでセンバツ当確となり、ナインはホームベース付近で歓喜の輪を作った。

 尾崎監督は「(最後の打球は)正直見えなかったんです。審判さんがセーフとやっているのを見て『やったー!』と喜んでいたら、記録員の宍戸(凌太)が飛んで来て……肩が僕の顎に当たって痛かったです(笑)。甲子園行くならドラマしかないぞと途中(ベンチで)言っていたんですけれど」と笑顔で喜びを口にした。

 ハンデをハンデとは思っていない。国学院久我山が使用するグラウンドは、野球部とサッカー部が共用している。野球部が全面を使えるのは、平日の1日と土日だけ。平日は19時には練習を終えなければならず、時間も長くて3時間ほどだ。

 他の強豪校に比べて恵まれた環境ではないかもしれない。それでも2019年には28年ぶりとなる夏の甲子園出場を果たし、今夏は西東京大会準優勝。今大会は準決勝・日大三戦で14-3と5回コールド勝ちを収めるなど、強さを見せて11年ぶりのセンバツをほぼ手中に収めた。尾崎監督は「練習時間が少ないことはビハインドにならないような気がします」と力説した。

選手に伝える自己管理の大切さ「全体練習は意外と無駄が多い」

「大切なのは自分の力を理解し、理想を持って目標に到達すること。入学してから卒業するまで2年3か月の間で、この技術を身につけるためにどう時間を使うかという、自己管理だよと(選手に)伝えます。全体練習の時間って、意外と無駄が多い。うちの選手は24時間自己管理ができるので、逆に成長できる」

 連係プレーなど全体練習で磨かれる部分はもちろんあるが、非効率な部分もあると感じている。限られた時間を有効活用するため、まずは選手個人にプランを持たせ、指導者側は成長を促すアシストを行う。その過程で、頭で理解したことを体現する重要性などを選手に培わせていくのだという。

 実行に移すのは容易いことではないが、尾崎監督は「彼ら(選手)は凄いと思う。僕は理想論を言っているだけで、努力するのは選手。どうなりたいという理想像、時間が間に合うか間に合わないか、そこを突き詰める。成長したら楽しいし、上手くいかなかったら苦しいけれど、妥協しないで続ける選手は凄い」と教え子たちを称賛した。

 2013年に監督就任した尾崎監督は、平成生まれの31歳。「久我山を強豪校、名門と言っていただけるように強くすることが、僕が監督就任した頃からの使命。甲子園にずっと行き続けるチームを作るようになるまでは、僕の使命は終わりません。日大三が負けたではなく、久我山が勝ったと言っていただけるようなチーム作りをしていきたい」。革新的チームを率いる青年監督とナインが、大舞台でどんな躍動を見せてくれるか注目したい。(THE ANSWER編集部・宮内 宏哉 / Hiroya Miyauchi)