ロッテ本拠地の場内アナウンスを担当して31年目となる谷保さん。勝率1位でのリーグ優勝となれば、初めての経験だ【写真:宮内宏哉】

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優勝争い真っ只中の心境明かす「せっかくだからホームだといいねと…」

 プロ野球、パ・リーグ首位を走るロッテ。1974年以来、47年ぶりの勝率1位でのリーグ優勝が見えている。本拠地の場内アナウンス担当31年目で、語尾を伸ばす独特の発声がZOZOマリン名物ともなっている谷保恵美さんが「THE ANSWER」のインタビューに応じ、優勝争い真っ只中の心境を語ってくれた。(聞き手=THE ANSWER編集部・宮内 宏哉)

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――今年も残り23試合。ロッテは47年ぶりのシーズン勝率1位が見えています。球団職員・スタッフの雰囲気はいかがですか。

「ちょっと浮足立ってますね(笑)。でも、皆生き生きしています。『忙しくなるな』と口では言いながらもちょっとワクワクして。日本一になった2005年、2010年にはいなかった新しい職員も多いですし、せっかくだから(優勝の瞬間は)ホームだといいねと話しています」

――場内アナウンス担当31年目。通算1900試合以上を見てきた谷保さんにとっても、勝率1位Vなら初めての経験です。

「私に限らず職員は普段通りに過ごすことを心がけていますが、連敗したり、勝ってほしい時は『掃除をしよう』とか、そういうのはありますね(笑)。新聞記事のクリッピング作業で気付いたのですが、首位になると2つ負けただけでも“連敗”と大きく書かれる。優勝マジックという言葉の響きも初体験ですし、首位はそう見られるんだと実感しました」

――今年のチームを見ていて、何か感じるものはありますか。

「若い選手もたくさん活躍して、肝心なところではベテラン、外国人選手も頼りになる。強くなる時は、こうやって全てが良くなっていくのかなと最近目の当たりにしているような気がします。様々なシミュレーションをして、チームを作ってきた裏方の皆さんの力も大きいんだろうなぁと想像します」

――05年はレギュラーシーズン2位から日本一。10年も3位から勝ち上がり“史上最大の下剋上”と言われました。

「後から思うからなのか、あの頃のチームってすごく成熟して強かったなと思うんです。今江さん、西岡さんも若かったけれど、安田選手や藤原選手があの年齢。今のチームも『やっぱりあの時、あのスターがいたよね』と思うかもしれませんね。こういう経験が選手生活の中できっと大事なんでしょうね」

8月にはマリン1000勝「様々なシーンを思い出した」

――今年を振り返ると、チームは8月31日の西武戦に勝利し、本拠地ZOZOマリンでの通算1000勝を達成。谷保さんは1000勝の全てを球場で見届けています。

「1000勝のカウントダウンに入ってからは私自身も様々なシーンを思い出しました。(本拠地が千葉に移転した)92年から今も一緒に働いている職員は4人だけ。懐かしい話もしました。最初はチームカラーがピンク。スタンドでピンクのメガホンが叩かれていたのが印象的です。ファンが増えて、ライトスタンドにビッグフラッグが掲げられて……と雰囲気が変わっていきましたね」

――北海道出身。小さい頃は巨人・王貞治さんの大ファンだったとのことですが、ロッテへの愛着はどのように醸成されていったのでしょうか。

「それが入団してすぐに大好きになりましたね。今はほぼ無くなりましたけど、球団事務所で『はい、ロッテオリオンズです!』『マリーンズです!』と電話に毎日出るうちに、どんどん愛着が沸いてきました。常に優勝するようなチームではなかったんですけれど、応援したくなるチーム。マリーンズファンの方の心境と同じですかね」

――熱い応援で知られるファンも、ロッテの魅力を感じているはずですね。

「ファンに寄り添う、親しみやすいというのは、選手も含めてあると思います。他の球団以上に身近な存在というところが強みになっているかもしれません」

――2位オリックスとは2ゲーム差。リーグ優勝をかけて、大事な試合が続きます。

「過去2回の日本一は、胴上げの瞬間はビジター球場でした。もしホームなら、本当は職員皆で立ち会いたいですね。私のように現場で仕事している職員は、体感しやすいのでありがたい。でも事務所で常に仕事している皆も同じ気持ち。何かで一緒に喜びたいですが……コロナもあってなかなか難しいのが現実かもしれません。

 公式戦はここからまだ1か月。まだ分からないですが、マジックが出るチャンスやシーズン1位のチャンスはなかなかありません。日々の生活もあると思いますが、ファンの皆さんとも一緒に数えてワクワクして過ごしたいです」

■谷保 恵美(たにほ・えみ)

 1966年5月11日生まれ。北海道帯広市出身。帯広三条高では野球部マネージャー。札幌大女子短大に進学後も札幌大野球部のマネージャーを務める。90年にロッテオリオンズ入社。91年から2軍の球場アナウンスを担当する。94年からは主に1軍本拠地を担当し、96年10月1日の近鉄25回戦以後は1試合も休むことなく連続担当を継続中。これまでに1900試合以上を務め上げ、今季で場内アナウンス担当31年目。右投右打。(THE ANSWER編集部・宮内 宏哉 / Hiroya Miyauchi)