なぜ鷹は「勝利の方程式」を変更した? 苦しい台所事情で工藤監督が導き出した打開策
対左打者には嘉弥真ではなく渡邉雄を、8回途中からは板東を起用
■ソフトバンク 5ー2 楽天(2日・PayPayドーム)
ソフトバンクは2日、本拠地・PayPayドームで行われた楽天戦に5-2で快勝した。牧原大が初球先頭打者本塁打を放って先制すると、5回には柳田が24号3ラン。先発の千賀が7回まで6安打2失点と好投するなど、投手陣リードを守り抜いて連敗を4で止めた。
初回、牧原大が則本昂から初球先頭打者本塁打を放って先制。その後、相手守備陣のエラーで1点を追加し、2点を先行した。5回には牧原大、中村晃が連打で出塁し、柳田が低めのボール球を右翼ホームランテラス席へと運ぶ24号3ラン。本塁打王争い単独トップに立つ一発でリードを広げた。
先発の千賀は序盤から丁寧な投球で楽天打線を封じた。6回に茂木に2点適時二塁打を許して、後半戦初失点を喫したものの、7回を投げて6安打2失点の好投で、リリーフ陣にバトンを繋いだ。
ここからの継投策が注目だった。8回、鈴木大、島内と左打者が続くところで、工藤公康監督は渡邉雄をマウンドへ。ソフトバンクには嘉弥真という“左キラー”がいるものの、指揮官は29歳の変則左腕を送り込んだ。
この渡邉雄は鈴木大に中前安打を浴びたものの、島内を右飛に打ち取り、ここでお役御免。右の浅村を迎えたところでマウンドに上がったのは板東。岩嵜の離脱後、9回を担っていた右腕を8回途中に投入。2者連続三振で切り抜けると、最終回には甲斐野を起用した。
勝利の方程式が相次いで離脱し「今はとにかく状態が悪くならないように」
甲斐野は先頭のオコエに四球を与えたものの、後続をいずれも内野ゴロに打ち取って無失点。試合を締めくくり、2019年7月21日の楽天戦(楽天生命パーク)以来、774日ぶりのセーブをマークした。
これまでとは違ったこの継投策の意図を、試合後、工藤公康監督はこう明かした。
「固定はしないというだけです。また明日も変わります、たぶん。あまりずっとプレッシャーがかかるということがないように、みんながいい状態で、後ろの本来の3人が戻ってきてくれれば、ここというところで使えますし、揃って作っていかないといけないところがある。そこに関しては、今はとにかく状態が悪くならないように、状態がいい選手を後ろに持っていくということをやっていきたいと思っています」
ソフトバンクの救援陣は現状、苦しい状態にある。守護神の森唯斗、絶対的セットアッパーのモイネロはまだ離脱中。代役で抑えを務めた岩嵜も戦列を離れた。左キラーの嘉弥真も痛打されるシーンが増え、代役の代役でクローザーを任された板東も抑えに失敗。ここまで踏ん張ってきた救援陣全体に歪みができてきているのは事実だ。
守護神の森は、早ければ、3日に行われるウエスタン・リーグの広島戦での登板を経て1軍復帰となる見込み。モイネロもブルペンでの投球を再開し、実戦復帰も近づいている。本来の“勝利の方程式”が戻ってくるまでの、もうしばらくの間、苦しいやり繰りを強いられる。その打開策として“日替わり方程式”を選択した。
これまで緊急事態宣言下では無観客で主催試合を開催していたソフトバンクだが、この日からワクチン2回接種済みか、1週間以内の陰性証明のある人に限ってチケットを販売。1630人の観衆が久々にPayPayドームのスタンドで試合を観戦し、拍手を送った。「1600人でも、たとえ500人でも、お客さんが入ってくれるだけで全然違います。できるだけファンの皆さんには少しでも足を運んでいただきたい」と工藤監督。3日からは首位オリックスとの“勝負”の3連戦が待っている。(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)