旅客機搭乗前の荷物検査のようにはいかないか(写真はイメージ)

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東京都内を走行中の小田急線で2021年8月6日、刃物による刺傷事件が電車内で発生した。SNS上では電車での荷物検査の必要性を指摘する人も見られる。

国土交通省が所管する鉄道運輸規程では、7月1日施行の改正省令で、車内への危険物の持ち込みや加害行為を防止するため必要な場合には、係員による旅客の手荷物などの点検を認めている。だが、国内の鉄道駅では日常的な手荷物検査は実施されていない。

東京五輪・パラ期間に実施例

海外の鉄道では、大規模な手荷物検査が行われる例がある。英国と欧州大陸を結ぶ国際列車・ユーロスターは、公式サイトによれば「すべての荷物は、税関検査、セキュリティーまたは国境当局による検査の対象となる」と定めている。

18年6月25日付「乗りものニュース」によれば、中国の国有鉄道では「ほとんどの駅」でセキュリティーチェックが行われており、X線検査機による荷物検査やボディーチェックが実施されている。

日本は前述した通り、規定はあるが常時運用されてはいない。鉄道や地下鉄の駅改札で常に手荷物検査を受けているという利用者は、いないだろう。ただJR東日本では、東京オリンピック・パラリンピックの大会期間中に、不審者などを対象とした手荷物検査の実施を発表している。首都圏の新幹線と在来線の一部駅が対象だ。

乗客全体に対してではない。訓練を受けた「危険物探知犬」と、「不審者・不審物検知機能を有した防犯カメラ」を活用する。カメラで不審者などを検知した場合、セキュリティーセンターから付近の警備員に伝え、声かけや対応を行う。

「飛行機搭乗前のような検査は...」

J-CASTトレンドがJR東日本広報に取材すると、五輪・パラリンピック終了後の検査実施については検討中だと話した。

同社によると、小田急線での事件の概要は社員に周知し、注意喚起を図っている。これまでにも実施してきた防犯カメラの増設といったセキュリティー向上の取り組みは継続するという。

ただ、乗客全員の検査は「列車本数やお客様の数、検査スペースなど、鉄道の輸送特性を考慮すると、全数検査を行うということは現実的ではないかなと考えております」。

一方、東京メトロ広報は取材に対し、手荷物検査を実施したことはなく、予定もないと答えた。今後もさらなるセキュリティー向上のため、国や他事業者などの方向性を注視しつつ、「旅客流動を大きく妨げない効果的・現実的な方法」を検討するという。

同社が運営する首都圏の地下鉄のように、短時間に非常に多くの乗客が利用する通勤路線は、設備面や運用面で、「飛行機搭乗前のような手荷物検査の実施は、非常に難しいと思われます」と話した。

小田急電鉄のCSR・広報部は、手荷物検査について「お客さまの利便性等に鑑み」時点で実施に向けた具体的検討はないと回答した。挙動が不審とみられる乗客や、「ポリタンクなど不審物」を所有している乗客には、声かけや、警察と連携した対応を取るとのことだ。