イヌやネコといったペットは、コンパニオンアニマルとして飼い主の生活の質や幸福度に大きく貢献しているとともに、ペットの幸福もまた飼い主の行動や生活様式から多大な影響を受けています。さまざまなペットの飼い主約5000人にアンケートを実施したイギリスの研究により、2020年から始まった新型コロナウイルスのパンデミックとそれに伴うロックダウンが、ペットの暮らしや幸福度に大きな変化をもたらしたということが判明しました。

The Perceived Impact of The First UK COVID-19 Lockdown on Companion Animal Welfare and Behaviour: A Mixed-Method Study of Associations with Owner Mental Health

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8201214/

Have cats become more affectionate in lockdown? New research shows the impact of the pandemic on pets

https://phys.org/news/2021-06-cats-affectionate-lockdown-impact-pandemic.html

Pets seem to have benefited from the pandemic overall, and cats may have benefited the most

https://www.zmescience.com/science/pets-cats-pandemic-mental-health-welbeing-2353567/

イギリス・リンカーン大学の動物行動学者であるダニエル・ミルズ教授らの研究チームは、動物愛護団体のネットワークやSNSを通じて、イギリス在住のペットの飼い主5323人を対象としたアンケートを実施しました。アンケートは、2020年4月〜6月の第1次ロックダウンの間におけるペットの変化の有無や、具体的な変化を選択肢や自由記入形式で尋ねるものでした。また、回答者らが飼っているペットは、イヌ・ネコ・ウマ・ポニー・鳥類・魚類・両生類・そのほかの小動物など多種多様だったとのこと。



調査の結果、ペットの飼い主のほぼ3分の1に当たる32.7%が「特に変化はなかった」と回答しましたが、回答者の33.1%が「ペットが自分の後ろについてくるようになった」と答えたほか、27.5%が「より愛情深くなった」と回答しました。これに対し、「落ち着きがなくなった」と答えた人や、「不安や恐怖を感じるようになった」と答えた人はそれぞれ10.9%と5.9%にとどまりました。

以下は、調査結果の詳細を表にしたもの。なお、括弧の中は回答数を意味しています。

 全種イヌネコウマなどその他後をついてくるようになった33.1%(1764)33.9%(1190)35.3%(519)17.5%(17)15.3%(38)変化なし32.7%(1740)32.7%(1149)32.3%(474)41.2%(40)30.9%(77)愛情深くなった27.5%(1465)24.8%(871)35.9%(527)19.6%(19)19.3%(48)リラックスするようになった25.5%(1357)25.3%(888)27.2%(400)27.8%(27)16.9%(42)元気で遊び好きになった14.6%(777)15.1%(530)14.2%(208)10.3%(10)11.6%(29)より社交的になった13.8%(732)8.4%(295)25.2%(370)7.2%(7)24.1%(60)落ち着きがなくなった10.9%(584)12.9%(454)7.8%(115)8.2%(8)2.8%(7)食欲が増した9.1%(486)8.2%(288)12.2%(179)1.0%(1)7.2%(18)毛並みなど見た目がよくなった7.8%(414)7.7%(270)7.6%(112)17.5%(17)6.0%(15)不安や恐怖を感じるようになった5.9%(314)7.0%(244)4.1%(60)4.1%(4)2.4%(6)体重が増えた5.2%(277)5.6%(195)3.9%(58)15.5%(15)3.6%(9)静かでふさぎがちになった3.9%(212)5.0%(177)2.0%(29)4.1%(4)0.8%(2)後をついてこなくなった2.8%(150)3.1%(108)2.6%(39)2.1%(2)0.4%(1)体重が減った2.3%(125)2.6%(92)1.8%(26)3.0%(3)1.6%(4)食欲が減った2.3%(120)2.7%(93)1.8%(26)0%(0)0.4%(1)毛並みなど見た目が悪くなった1.9%(103)2.2%(77)1.4%(20)4.1%(4)0.8%(2)飼い主や家族に敵意を見せるようになった0.6%(34)0.4%(15)1.1%(16)2.1%(2)0.4%(1)

上記の変化について、研究チームが「ポジティブな変化」と「ネガティブな変化」に大別してペットの種別に集計したところ、ロックダウンにより恩恵を受けたペットの傾向が分かりました。

以下は、「ポジティブな変化」が見られたペットのグラフで、一番左の「ネコ」が最もロックダウンから恩恵を受けたという結果を表しています。ネコのほかには、「その他」「小型の哺乳類」「イヌ」「ウマ」「哺乳類以外」の順でポジティブな変化が報告されました。



アンケートに答えたネコの飼い主の多くは、前向きな変化を報告しました。例えば、ある回答者は自由記入形式の質問に対し「2匹の保護ネコを飼っており、そのうちの片方は前までひどく臆病でしたが、私が毎日家にいるようになってからはとても落ち着いています」と答えています。

一方、一部のイヌの飼い主は散歩など屋外で過ごす機会が減ったことが、愛犬に悪影響を及ぼしていると訴えました。例えばある回答者は、「私のイヌは、散歩中にほかのイヌと会ってじゃれ合うのを心待ちにしています」と答えました。

また、分離不安症の可能性がある症状を報告した飼い主もいました。ある回答者の女性は、「うちのイヌは夫にまとわりつくようになり、夫が仕事から戻るなりずっとそばに座りたがるようになりました」と述べています。



こうしたペットの変化について、ミルズ教授は「ロックダウンに伴う一時解雇やリモートワークなどにより、飼い主が1日中ずっとそばにいるようになったことや日常生活の変化、ペットトレーニングや獣医師ケアといった動物関連サービスへのアクセスが制限されたことなどが変化の要因である可能性があります」と話しました。