昔は当たり前だったものでも、どんどん変わる、そして無くなっていくのが世の常です。クルマの装備では、当たり前だった「シガーライター」がどんどん姿を消して久しく、その用途が分からないという世代も出始めています。

今の若い人たちは知らない? シガーライター&ソケット

 昔のクルマには標準装備されていた、タバコのマークが付いている「シガーライター」。最近では見かけることも少なくなったためか、SNSではシガーライターについて「このタバコのマーク何?」「知らない」などの投稿も見られます。

 シガーライターの使い方は次の通り。タバコのマークが描かれたキャップ部分をソケットの奥までグッと押し込み、しばらくすると戻ります。このキャップがライターです。引き抜くと、キャップ内側の電熱線が真っ赤に熱されているので、それでタバコに火を付けます。

 しかし近年は、このシガーソケットをライターとしてではなく充電口として、携帯の充電やドライブレコーダーの電源として使う方法が一般化されています。シガーソケットの部分は残っても、タバコの絵柄が書かれたキャップは付いていないことが多くなりました。そうしたソケットは、そもそも耐熱仕様にもなっておらず、ライターとして使うことができないものがほとんどです。


シガーライターのイメージ(画像:charmboyz/123RF)。

 また、シガーライターと同じくクルマから消えているのが「灰皿」です。ドリンクホルダーに置くタイプのボトル型などは各メーカーともオプションで用意はしているものの、インパネから引き出したり、ドアのひじ掛けの蓋を開けたりする内蔵型の灰皿は、ほとんど見なくなりました。

 日産やホンダは、2020年前後に至るまで高齢のユーザーが多いセダンを中心に、細々と装備を残していましたが、それらセダンも次々に販売終了となっています。

実は売れてる「カー用品」としての喫煙

 ニーズが変化した背景には、喫煙人口の減少もあるでしょう。その割合は2008(平成20)年度には男性39.5%、女性12.9%でしたが、2018年度は男性27.8%、女性8.7%まで減っています(日本たばこ産業の統計)。灰皿のあった位置はドリンクホルダーや小物入れに変わる一方、携帯電話やドライブレコーダーなど、外部電源を必要とするアクセサリーが増えたことも考えられます。


アクセサリーソケットとしてのニーズは拡大している(画像:Winai Tepsuttinun/123RF)。

 クルマに標準装備の喫煙具が消えていく一方、カー用品としては、灰皿などの喫煙具は売れ筋です。商品の入れ替わりも比較的あり、スマートフォンホルダーなどに次ぐ重要ジャンルとするメーカーもあるほど。

 その商品開発を加速させているのが、「アイコス」などの加熱式タバコの普及です。ライターは不要ですが機器の充電具が必要で、それらをいかにスッキリと、使いやすく収納できるかが、商品のカギになっています。このほか、加熱式タバコに対応した芳香剤などのジャンルも売れているようです。

 2020年4月に施行された改正健康増進法で、街なかではタバコを吸える場所がさらに減少したこともあり、愛煙家にとってクルマは憩いの喫煙場所の一つとなっているのかもしれません。5年後、10年後、かつてクルマに装備されていたシガーライターや灰皿を使ってタバコを吸う、という光景はまだ見られるのでしょうか。