久保建英らが苦戦する一方で、バリバリ活躍しているサッカー日本代表海外組は?
今季、リーグ開幕からフル出場を続けるボローニャ(イタリア)の冨安。監督からの評価を上げ、同リーグのミランが獲得に動いているという噂も
レアル・マドリードからビジャレアルにレンタルされていた久保建英が、この冬の移籍マーケットで同じラ・リーガ(スペイン1部)のヘタフェに新天地を求めた。デビュー戦となったエルチェ戦では、さっそく64分に途中出場を果たし、2ゴールを演出する活躍で勝利に貢献。久しぶりに明るいニュースを届けてくれた。
ただし、久保がシーズン途中で移籍した理由は、同リーグで上位争いを演じるビジャレアルで出番に恵まれなかったから。これは伸び盛りの若手選手によくあるケースで、要するに「所属クラブの"格"よりも出場機会を優先し、下位クラブで出直す決断を下した」というのが実情だ。
また、現在欧州屈指の強豪であるイングランドの名門リバプールで2年目を迎えた南野拓実も、分厚い選手層に出場機会を阻まれ、相変わらずくすぶっている。昨年12月にはプレミア初ゴールを決めたものの、その後は再びベンチ要員。明るい兆しは見えてこない。
そのほかにも、ポルト(ポルトガル)で戦力外になっていた中島翔哉はこの冬に中東UAEのアル・アインにレンタル移籍することが決定し、ブレーメン(ドイツ)の大迫勇也も不振により現地で批判を集めるなど、最近は日本代表欧州組の明るいニュースがめっきり減少した印象だ。
しかしその一方で、報道量こそ少ないものの、欧州にはコンスタントに試合出場を重ね、地道に実績を積んでいる日本代表の中心選手もいる。その筆頭株といえるのが、イタリアのボローニャでレギュラーを張り、現地での評価を上げている冨安健洋だ。
冨安がベルギーのシントトロイデンからボローニャに加入したのは昨季のこと。当初は、徹底した守備戦術が自慢のセリエA(イタリア1部)で、まだ欧州経験が1年半しかなかった日本人DFがプレーすることに懐疑的な声もあった。
だが、冨安は初年度から不慣れな右サイドバックのレギュラーとして活躍。2年目の今季は本職のセンターバックを基本としながら、チーム事情によって3バックの一角やサイドバックも任されるなど、大きく進化を遂げている。
ワールドクラスのFWに翻弄された試合もあったが、今季はほとんどの試合で安定して高いパフォーマンスを披露。それにより、元ユーゴスラビア代表の名DFとしても知られるシニシャ・ミハイロヴィチ監督からの信頼を完全に勝ち取り、いまでは不可欠な中心選手となった。
まだ22歳の冨安の怪物ぶりには、同じセリエAで活躍するベテランDFの吉田麻也(サンプドリア)も舌を巻くほどだ。
ストラスブール(フランス)でレギュラーとして活躍する川島。37歳のベテランが、ほかのGKのケガや不振などで回ってきたチャンスをモノにした
一方、攻撃陣ではゲンク(ベルギー)の伊東純也の活躍ぶりが目を引く。2019年の冬にレンタル移籍でベルギーに渡った伊東は、初年度から右ウイングの定位置を確保すると、昨季は自身初となるチャンピオンズリーグの舞台を経験。リーグ戦では29試合に出場し、5ゴールを記録した。
その進化は止まらず、完全移籍を果たして迎えた今季は、右ウイング以外にも左ウイングや2トップの一角でプレーするなど、プレーの幅を広げながら着々と成長。今季も20試合に出場して5ゴール7アシスト(1月18日現在)をマークしている。
特に目下ベルギーリーグの得点ランキングのトップを独走するナイジェリア人FWポール・オヌアチュとのホットラインは、激しい優勝争いを繰り広げるチームにおいて、最大の武器として高い評価を得ている。
この活躍ぶりは代表でのプレーにも好影響を及ぼし、昨年10月と11月に行なわれた日本代表戦では、久保や堂安 律(ビーレフェルト)を抑えて右ウイングのファーストチョイスに序列を上げている。指揮を執る森保 一監督からの評価もうなぎ上りだ。
そしてもうひとり、今季の日本代表欧州組で見逃せない活躍をしている選手がいる。フランスのストラスブールに所属するベテランGK川島永嗣である。
過去3大会のW杯で正GKを務め、日本代表史上屈指の守護神として知られる川島だが、16年にフランスのメスに加入してからは、山あり谷あり。
まず第3GKとして迎えたフランス初年度は、シーズン終盤になって正GKに上り詰めるも、レギュラーとしてプレーした2年目に成績不振でチームが2部に降格。川島も契約満了でメスを退団し、18年夏に再び第3GKとして現在のストラスブールに加わった。
しかし、過去2シーズンはリーグ戦1試合に出場しただけで、ほとんどの時間をアマチュアリーグに属するBチームの一員として過ごすしかなかった。
ところが、迎えた今季開幕前に思わぬかたちでチャンスが到来する。正GKが大きな負傷で長期の戦線離脱を強いられ、第2GKも新型コロナウイルスに感染したことで、川島に出番が回ってきたのである。
しかも、第2GK復帰後にチームが不振を極めたことで、再び川島がスタメンを奪取。レギュラーGKの座をがっちりつかむと、川島の活躍もあってチーム成績が浮上し、37歳のベテランGKの実力が再評価されている。
その3人以外にも、吉田麻也、乾 貴士(エイバル)、酒井宏樹(マルセイユ)らベテラン勢に加え、堂安、鎌田大地(フランクフルト)、遠藤 航(シュトゥットガルト)、鈴木武蔵(ベールスホト)、板倉 滉(フローニンゲン)ら若手たちも、所属クラブのレギュラーとしてプレーしている。彼らの成長が森保ジャパンの実力アップにつながるため、シーズン後半戦での活躍も期待したい。
取材・文/中山 淳 写真/アフロ