「コーヒー後の昼寝」が脳を劇的に回復させる訳
毎日、夜に熟睡できていますか? 睡眠習慣を整えられるようになるコツをお教えします(写真:asaya/PIXTA)
人は、食事をはじめ、仕事、家事、趣味など、覚醒している時間の行動を第一に考えます。一方で、睡眠時間は、まるで1日の「余った時間」のように扱っていないでしょうか?
しかし、優れたビジネスパーソンは、睡眠時間を大事にすることで、万全のパフォーマンスを発揮しています。例えば、Amazonの創業者のジェフ・ベゾスは「8時間眠ると1日ずっと調子よく過ごせる」と語っています。また、AppleのCEOであるティム・クックやMicrosoftの創業者のビル・ゲイツは7時間睡眠といわれています。
もし、寝る時間を削って仕事をしているようなら、いますぐ改善すべきです。ただ、睡眠習慣を整えるにはちょっとしたコツが必要です。拙著『ぐっすり眠れる×最高の目覚め×最強のパフォーマンスが1冊で手に入る 熟睡法ベスト101』の中から、とくにビジネスパーソンに知っておいてほしいことをいくつか紹介したいと思います。
大事な仕事は午前中にするべし
人間の脳は基本的に「起きてから時間が経過するほど働きが鈍くなる」ものです。さすがに起きた直後はまだエンジンが十分に回っていない状態ですが、しばらくすると一気にピッチが上がって、活発に働きはじめます。そのピークがくるのは意外に早く、起床から約4時間後。午前7時に起きる人なら、午前11時前後がピークです。
良質な睡眠を取った翌朝には、ドーパミンというホルモンが脳内にしっかりチャージされた状態となります。ドーパミンはやる気や集中力、幸福感などを高める効果のある神経伝達物質で、日中のエネルギッシュな活動の源ともなるもの。起床からしばらくすると、活発に働き始めます。
そしてドーパミンからは、交感神経の活動を高める効果のあるノルアドレナリンが生成されます。この働きによって積極性が高まり、血圧や心拍数が上昇。日中の活動に適したコンディションとなるわけです。
脳のパフォーマンスは午前中にピークを迎えて、そこからはなだらかな坂道を下るように、ゆっくりと下降していく。それを前提に考えると、重要な会議などは、集中力だけでなく積極性や決断力も高まる午前中にやったほうがいいでしょう。
結婚や転職、不動産のような大きな買い物といった「自分の将来を左右するような重要な決断」も、最終的なジャッジは午前中がいいかもしれません。重要な案件であればあるほど、頭が冴えている午前中に片づけるようにすべきでしょう。
重要性や緊急性が高く、思考力や決断力が要求される用件から順番に片づけていくのが、最も効率がいい「1日のワークフロー」です。朝からメールチェックをして、いつの間にか午前中が終わるというのは、あまりいい仕事の方法ではないといえますね。
テレワークでも普段どおり、日中に仕事をしましょう。テレワークは、通勤時間を別のことに使えたり、子どもの世話などで仕事を中断できるなど、柔軟なスタイルで仕事ができます。その反面、日中は家庭の用事や周囲の環境に左右されることから、コアな仕事をするのは夜が深まり、自分の時間が確保できてから行うという人も多いようです。
それでは「準夜勤」をしているようなもの。出勤日とテレワークを複合的に設けているケースなどでは、生活リズムの乱れに直結するため注意が必要です。
対策としては、家族がいる場合はしっかりと話をし、通勤時と変わらぬ時間帯に自宅でコアな仕事ができるよう協力をあおぎましょう。状況的に難しい場合は、近年広がりをみせているコワーキングスペースを利用するなど、日中に集中して仕事ができる環境を獲得してください。
正しい昼寝の取り方で脳は劇的に回復する
日中の集中力や能率アップに意外なほど効果的なのが、15〜20分程度の短い昼寝です。ちょっと意外に感じるかもしれませんが、コーヒーを飲んでからの昼寝がおすすめです。
コーヒーのいい香りには、副交感神経を優位にして、気持ちをリラックスさせる効果があります。それはつまり、催眠作用が期待できるということ。寝不足ならばなおさらスッと眠りに落ちることができるはずです。
一方で、コーヒーに含まれているカフェインには、交感神経を刺激して眠気をなくし、気分をスッキリさせる覚醒効果もあります。香りとは真逆の効果で、コーヒーの効能といえば、こちらを思い浮かべる人のほうが多いでしょう。
コーヒーの香りは嗅いだ瞬間からリラックス効果が出ますが、カフェインを摂取して覚醒効果が出るまでには、およそ20〜30分を要します。つまりそこには、しばしのタイムラグが存在するのです。この時間を昼寝にあてることで、睡眠による休養効果とカフェインの覚醒効果のいいとこ取りができます。昼寝のあとはスッキリと頭が冴えて、仕事や勉強のパフォーマンス向上が実感できることでしょう。
昼寝の時刻は午後1時前後がベストで、遅くとも午後3時までには済ませてください。これよりも遅い時間の昼寝だと、夜の熟睡の妨げになってしまって本末転倒だからです。
そして、20分以上は眠らないように注意が必要。これ以上に寝てしまうと、眠りが深くなって目覚めが悪くなります。カフェインが効き始めるタイミングに合わせて起きるのが短時間でもスッキリ目覚められる秘訣です。日頃から睡眠不足を感じている人は、ぜひトライしてみてください。
人の身体は、深部体温が下がると、眠気が起こるという特徴を持っています。これは見方を変えると、「就寝時刻に合わせて深部体温を意図的に下げるように調整すれば眠りやすくなる」ということです。それを実践する方法を紹介しましょう。
最も効果的なのは、「この時間には寝たい」と思っているときから逆算して、1時間半から2時間前に入浴することです。この場合の入浴は、身体を洗ってキレイにすることではなく、湯船に浸かって身体を温めることを意味します。
入浴によって深部体温をピークに引き上げて、お風呂からあがったあと熱が下がっていく過程で眠気を誘うようにコントロールしていくのです。そのジャストのタイミングが1時間半から2時間後。その時間に予定どおりに寝る態勢を整えてふとんに入れば、心地よい眠気が訪れることでしょう。
熱々のお湯に短時間浸かるよりも、ぬるめのお湯にゆっくり浸かるのがおすすめ。どんなに忙しくても、最低10分は入浴時間を取るようにしてください。入浴時間がどうしても長くできない人は、発泡性の入浴剤を入れることにより、効率よく深部体温上昇をうながせます。
夏場などは、汗だくで帰宅し、夕食の前にお風呂を済ませてしまうケースもあると思いますが、そんなときは深部体温を上げるための二度目の入浴に臨む手もありでしょう。例えば18時に帰宅し、すぐにお風呂に入って夕飯を食べたとしても、0時に寝ようと思っていたら22時過ぎに再び入浴するのです。
また最近では、サウナを効果的に利用すると、短時間で深睡眠を得られることに加え、日中の眠気も防止してくれるという研究結果も発表されています。医学的なメカニズムはまだ判然としていないものの、サウナに入ることによって約75%の人に睡眠の改善効果が見られたそうです。
筋トレするなら、20時まで
筋肉はトレーニングによって一旦筋繊維を壊し、それが修復されるときに増強される仕組みになっています。その際に必要な要素のひとつが、成長ホルモンです。
まず、成長ホルモンは長時間分泌される特徴があることを知りましょう。また、寝入りばなのノンレム睡眠の際にも成長ホルモンが分泌されるので、夕方のトレーニングでたっぷりと分泌された成長ホルモンと相まって、夜中に筋肉が修復され、より増強されます。ですから、筋トレをするなら夕方から20時ぐらいまでがベストタイムです。
しかし就寝前に筋トレをすると、心拍数が上がって交感神経が活発になり、寝つきが悪くなったり、より疲労がたまりやすくなったりします。いい睡眠が取れないため、筋肉の増強がされにくくなり逆効果となります。激しい運動は就寝前には向きません。ストレッチ程度にとどめておきましょう。