●PCMark / CineBench / POV-Ray

既報の通り、11月6日19時よりRyzen 5000シリーズ4製品が発売となる。正直ハイエンドのRyzen 9 5950Xは10万超えるかなと思っていたので、意外に頑張った印象である(換算レートは概ね120円/ドル前後)。

さてそのRyzen 5000シリーズであるが、今回評価用として借用できたのは、Ryzen 7 5800XとRyzen 9 5900Xの2製品のみであった。残念ながらハイエンドのRyzen 9 5950Xと、エントリ向けのRyzen 5 3600Xは後送りになってしまったが、まずはこの2製品について性能がどんなものか、をお届けしたい。

○今回の評価キット

キット、といっても単にCPUの製品パッケージが2つ送付されてきただけであるが。その製品パッケージ(Photo01〜04)はやや黒掛かったシルバー基調に変更になった。

Photo01: 「Ryzen 9 5900X」と「Ryzen 7 5800X」の製品パッケージ。色目の変更の他、左下に"5000 Series Processor"の文言も追加された。


Photo02: 奥行は薄型(従来のRyzen 3とかと同じ)に変更。CPUクーラーは同梱されないため。中は単に潰れ防止に×字型に紙が入っているだけ。どうせならもっと小さくてもいいのにと思わなくもない。


Photo03: ブリスターパックも幅が狭いものになった。


Photo04: まぁOPNとかを見ない限り、見かけは従来のRyzenと同じである(Socket AM4だから当然ではあるが)。


Ryzen 7 5800X(Photo05〜08)、Ryzen 9 5900X(Photo09〜12)ともに問題なく稼働したが、実は今回利用できるマザーボードがかなり限られていた。以前これでもご紹介したが、Ryzen 5000シリーズの性能をフルに活用するためにはAGESA 1.1.0.0に対応したBIOSが必要であり、評価キットが送られてきた時点で、マザーボード4種類のみがこれに対応した状態だったため、その4種類の何れかを利用する事になっていたためだ。そんなわけで今回はASUSのASUS ROG CROSSHAIR VIII HEROを利用した。昨年こちらの記事でもご紹介したX570のハイエンド機種の一つだ。余談ながら現時点では主要なX570マザーボードはほぼAGESA 1.1.0.0対応BIOSがリリースされているようで、筆者手持ちのASUS TUF GAMING X570-PLUS(BIOS 2607)やASRock X570 Pro4(Version 3.40)などでもちゃんと対応BIOSが用意されている。

Photo05: (c) 2020 AMDということで、今年製造であると判る。


Photo06: TDPは105W。Revision B0だそうだ。


Photo07: L3がunified 32MBになっているのが判る。


Photo08: Windowsからも問題なく認識された。


Photo09: Ryzen 7 5800Xもそうだが、左下の▽マークは引き続き小さいまま。


Photo10: TDPはこちらも105W。


Photo11: こちらは当然L3が×2となる。


Photo12: やはりWindowsは問題なく認識。


さてテスト環境は表1の通りである。今回はZen 2ベースのRyzen 7 3800XTとRyzen 9 3900XT、それとComet LakeベースのCore i9-10900Kを用意した。マザーボードのグレードをあわせるため、Core i9-10900Kには同じASUSのROG Maximus XII Extreme(こちらのレビューの際に使ったうちの1枚)を用意した。

なお、以下のグラフでは

3080XT:Ryzen 7 3800XT

3090XT:Ryzen 9 3900XT

5800X:Ryzen 7 5800XT

5900X:Ryzen 9 5900XT

10900K:Core i9-10900K

と表記している。また解像度表記は何時ものごとく

2K:1920×1080pixel

2.5K:2560×1440pixel

3K:3200×1800pixel

4K:3840×2160pixel

とさせていただく。

○◆PCMark 10 v2.1.2506(グラフ1〜6)

PCMark 10 v2.1.2506

UL Benchmarks

https://benchmarks.ul.com/pcmark10

グラフ1


まずはこちらから。Overall(グラフ1)を見る限りRyzen 5000シリーズの圧勝であり、Ryzen 3000シリーズとCore i9-10900Kの両方に少なからぬ差をつけているのがわかる。面白いのはRyzen 9 5900XよりもRyzen 7 5800Xの方が若干ながら性能が上なことである。Ryzen 7 5800Xの方がBase Clockが若干高い事に加え、同じTDP(105W)ながらダイの数が一つ少ない分、より動作周波数を上げやすい、というあたりが関係している様に思える。

グラフ2


グラフ3


グラフ4


グラフ5


もう少し子細に見ると、Test Group(グラフ2)でEssentialsのみ差は少ないが、後は概ね大差という感じ。Gamingは後で3DMarkで見るので措いておくとして、そのEssentials(グラフ3)ではAppStartupで差が縮まっている(というか、これはCore i9-10900Kが最高速)のが、差が少ない要因だろうか。Video ConferencingではOpenCL利用という事もあって差が少ないのも関係しているかもしれない。Productivity(グラフ4)では、特にSpreadsheetsで大差が付いているのが特徴的で、Zen 3のIPCが本当に引きあがった事を実感する。これに比べるとDigital Contents Creation(グラフ5)ではまた差が減っているというか、Rendering & VisualizationでまたCore i9-10900Kが迫っているが、これはPOV-Rayのところで説明したい。

グラフ6


グラフ6のApplication TestはOffice 365そのものであるが、特にExcelで大幅な性能改善がみられるし、WordとかPowerPointでも明確に性能差がある。Ryzen 5000シリーズの性能改善は確かに確認できたと思う。

○◆CineBench R20(グラフ7)

CineBench R20

Maxon

https://www.maxon.net/

グラフ7


CineBenchに関して言えば、これが再現できるかを確認したかったのだが、結果はOne Threadの場合で621と、今一つ芳しくない。といっても、Single Threadで600を超えているのは事実であり、Ryzen 3000シリーズは元よりCore i9-10900Kと比較しても十分高いスコアではある。そしてAll Thread場合、Ryzen 7 3800XT→Ryzen 7 5800Xで21%、Ryzen 9 3900XT→Ryzen 9 5900Xでも13%ほどのスコアの伸びがあるのは、やはりIPCの改善によるところと考えて良いかと思う。

○◆POV-Ray V3.7.1 Beta9(グラフ8)

POV-Ray V3.7.1 Beta9

Persistence of Vision Raytracer Pty. Ltd

http://www.povray.org/

グラフ8


同じくPOV-Rayであるが、こちらも傾向的には似ているとはいえ、Core i9-10900Kが伸びているのがお判りかと思う。特にOne ThreadではRyzen 5000シリーズを上回る性能になっている。実はこれ、ちゃんと理由がある。POV-Ray V3.7.1からはNoise FunctionにAVX命令を利用するようになっているが、Ryzen 3000/5000シリーズの場合は"avx-generic"という扱いであり、一方Core i9-10900Kの場合は"avx2fma3-intel"となっている。要するにCoreシリーズへの最適化が実装されている結果、Core i9-10900Kの性能が伸びるという話で、これが先のPCMark 10におけるRendering & Visualizationでも効いている形だ。ただその最適化があっても、All ThreadだとRyzen 9 3900XT/Ryzen 9 5900Xには及ばない。

ちなみにこちらでもRyzen 3000シリーズと5000シリーズの差は10〜18%と大きい。

●TMPGEnc / DxO PhotoLab / 3DMark

○◆TMPGEnc Video Mastering Works 7 V7.0.17.19(グラフ9)

TMPGEnc Video Mastering Works 7 V7.0.17.19

ペガシス

http://tmpgenc.pegasys-inc.com/ja/product/tvmw7.html

グラフ9


おなじみTMPGenc Video Mastering Works 7。内蔵のx265エンコーダを利用しての比較だが、まずRyzen 3000シリーズからRyzen 5000シリーズに切り替える事で17%〜27%の高速化が実現しているのが判る。もう一つ特徴的なのは、10コアのCore i9-10900Kよりも8コアのRyzen 7 5800Xの方が高速になったというあたりだろうか。しかし12コアのRyzen 9 5900Xですら20fps近い性能でHEVCのエンコードが可能な訳で、16コアのRyzen 9 5950Xなら30fpsは無理にしても25fps近くが期待できることになる。ラフに言えばCore i9-10900Kの倍速という事で、その性能の高さを実感できると思う。

○◆DxO PhotoLab 3 V3.3.0.4391(グラフ10・11)

DxO PhotoLab 3 V3.3.0.4391

DxO Labs

https://www.dxo.com/ja/dxo-photolab/

10月20日にDxO PhotoLab 4が発表になったばかりだが、今回は間に合わずに3.0のままである。

さて、そろそろE-M5のRAW画像現像では負荷が足りなくなってきた感がある。そんなところに林佑樹氏よりSONY α7R IV(61MPixel)でのRaw画像が着弾したので、今回はこれをラインナップに含める事にした。なので、やはり林佑樹氏から以前頂いたα7 II(24MPixel)のRaw画像とα7R IVのRaw画像現像の時間を測定することにした。また以前はDxO標準のプロファイルに設定しての現像だったが、今回はこれに加えてノイズ除去をPrimeに設定している。ちなみにグラフの結果はPPM(Pictures Per Minute:毎分あたりの処理枚数)である。

グラフ10


グラフ11


さてまずα7 II(グラフ10)。こちらでもやはりRyzen 3000シリーズ→Ryzen 5000シリーズで10%以上の性能改善がみられる。Ryzen 9 5900Xだと毎分5枚といったあたりで、この程度の処理性の出るならそれなりに快適だと思う。一方でα7R IVだと、そのRyzen 9 5900Xですら3枚/分に及ばない程度とかなりの負荷がある。Ryzen 7 5800Xだとほぼ2枚/分、1枚30秒というのは流石としか言いようがない。林先生にはZen 3ベースのRyzen Threadripperをお勧めしたい(5990X?)ところだが、それはともかくとしてこうしたCompute Intensiveな処理にRyzen 5000シリーズはきちんとその性能を発揮することが、特にこのグラフ11で明確に示されている様に思う。

○◆3DMark v2.14.7042(グラフ12〜15)

3DMark v2.14.7042

UL Benchmarks

https://benchmarks.ul.com/3dmark

このところ、3DMarkのVersion Upが著しい。Wiid Lifeを追加したv2.14.7040にはすぐアップデートが掛かったが、昨日DirectX RayTracing Feature Testを追加したv2.15.7078が公開された。ただ今回はこの手前のv2.14.7042で。RayTracingのFeature TestはRadeon RX 6000シリーズの評価で利用することになるだろう。

グラフ12


ということでまずグラフ12がOverallである。基本的には同じGPU(GeForce RTX 3080)を利用しての比較だから、特に描画負荷が重い場合には性能差はない筈で、実際結果もそんな感じである。ただ描画負荷が軽い場合はCPUネックになる事があり、その場合にCPU性能が効いてくる格好になる。これが明確なのはWildLife〜FireStrikeあたりまでで、先になるとあまり性能差が無い。面白いのは最新のWildLifeではCore i9-10900Kが最高速、次のSkyDiverでもかなり健闘している事だ。ただNightRaid以降になるとRyzen 5000シリーズの方が優勢で、FireStrikeあたりまでは明確に差が出る(辛うじてFireStrike Extremeあたり。FireStrike Ultraになるともはや誤差の範囲)。

グラフ13


Graphics Test(グラフ13)がちょっと面白いのは、NightRaidだけ激しくばらついている事。結果を見るとGraphics Test 2ではCore i9-10900Kが914.3fpsとかで他を圧倒(Ryzen 7 5800Xが879.16fpsでこれに続く)なのに、Graphics Test 1ではそのRyzen 7 5800Xが678.75fsで圧倒(Core i9-10900Kは596.27fps)と、なんか妙にフレームレートが高い上に変動が多いところだろうか。ただ結果としてCore i9-10900KはRyzen 7 5800Xにトータルで及ばず、という結果になっている。

グラフ14


CPU性能としてはむしろPhysics/CPU Test(グラフ14)の方が適当だろう。結果はこれも御覧の通り。TimeSpyでCore i9-10900Kも一矢報いてはいるが、基本的にはRyzen 5000シリーズの優秀さが示された格好だ。

●ゲームその1:Borderlands 3 / F1 2020 / FF XV / Horizon Zero Dawn

○◆Borderlands 3(グラフ16〜22)

Borderlands 3

2K Games

https://borderlands.com/ja-JP/

ここからはGame Benchmarkを。まずはBorderland 3。設定方法はこちらのBorderland 3の項目に準ずる。全体的な品質は「高」である。

グラフ16


グラフ10


まず平均/最大(グラフ16・17)フレームレートを見ると、「なんかCore i9-10900Kデータ取り間違ったか」と不安になるぐらいにCore i9-10900Kの性能が伸びない。ただ以前GeForce RTX 2080 Superを使った際の結果よりは伸びている(GeForce RTX 3080なのだから当たり前だ)し、やり直しても同じ結果なので、もうこれはこういうものなのだろう。それはともかく、2.5Kから先はGPU側がボトルネックだが、2KではCPU側がネックであり、ここでのRyzen 5000シリーズの伸びは明確である。

グラフ19


グラフ20


グラフ21


グラフ22


これはフレームレート変動からも明らかで、2K(グラフ19)ではRyzen 3000シリーズとRyzen 5000シリーズが明確に分離したグラフになっている。2.5K〜4K(グラフ20〜22)では、Ryzen 3000シリーズと5000シリーズはほぼ一体化(なぜが3Kのみ、Ryzen 9 3900XTが妙にフレームレートが高い)しており、高解像度ではGPU側がネックになるのでCPU差が出ない、というセオリー通りの結果になっている。

○◆F1 2020(グラフ23〜29)

F1 2020

Codemasters

http://www.codemasters.com/game/f1-2020/

設定方法はこちらのF1 2020の項目に準じる。描画品質はUltra Highである。

グラフ23


グラフ24


グラフ25


F1 2020はやや軽めのゲームということもあってか、2.5KあたりまではややCPUネックといった傾向であるが、平均フレームレート(グラフ23)を見ると最高速なのはRyzen 7 5800Xになっている。Ryzen 9 5900XはCore i9-10900Kと同等といったところ。最大フレームレートはややインフレ気味だが、2Kの場合はやはりRyzen 7 3800Xが最高速で400fpsを達成している。これは最小フレームレート(グラフ25)も同じ傾向であり、Ryzen 7 5800Xが最高速で、Ryzen 9 5900XとCore i9-10900Kが同等、Ryzen 3000シリーズがその下という感じだ。

グラフ26


グラフ27


グラフ28


グラフ29


こうした傾向はフレームレート変動(グラフ26〜29)からも見て取れる。特に2Kでは、Ryzen 5000シリーズ+Core i9-1090KとRyzen 3000シリーズが割と明確にグラフが分離しており、これが要するにCPU性能の差という形だ。ただ2.5K以上だとこの差を実感するのは難しそうだが。

○◆FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク Version 1.2(グラフ30〜36)

FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク Version 1.2

SQUARE ENIX

http://benchmark.finalfantasyxv.com/jp/

設定方法はこちらに準じる。今回は高品質のみで実施した。

グラフ30


今更、のFinal Fantasy XVであるが、このベンチマークは圧倒的にIntel系CPUが上位に付ける傾向があり、少なくともZen 2ベースのRyzen 3000シリーズでも勝てなかった。これがどうか、を見たかったわけだ。ということでグラフ30がその結果である。Ryzen 7 5800XがCore i9-10900Kとほぼ同等。Ryzen 9 5900XはCore i9-10900Kを上回り、やっとこれで性能的にイーブンを超える、というところまできた形だ。

グラフ31


グラフ32


グラフ33


ついでなのでOCATを使って実フレームレートの測定も行ってみた。測定はスコアのカウントアップが始まった段階からスタート、ベンチが終了してファンファーレが鳴り終わった段階でストップとしている。グラフ31〜33が平均/最大/フレームレートで、グラフ30と31を見比べると概ね同じ傾向ながら、単純に平均フレームレートの数字からスコアを算出している訳ではないと思われる。そして2K/2.5Kのどちらでも、Core i9-10900Kは平均/最大共にRyzen 5000シリーズに僅かながら及ばないあたり、性能の向上は明白である。

グラフ34


グラフ35


グラフ36


フレームレート変動(グラフ34〜36)も色々興味深い。元々変動の多いゲームだとは思っていたが、ここまで多かったかという感じである。とりあえずGeForce RTX 3080を使えば2K/2.5KではどのCPUであっても快適だが、4Kの場合はしばしばピークが50fpsを割り込む事がある、というあたりがこれの難しいところだろうか。その意味では解像度は2.5Kあたりまでに留めてプレイするのが幸せかもしれない。

○◆Horizon Zero Dawn(グラフ37〜43)

Horizon Zero Dawn

SIE

https://www.jp.playstation.com/games/horizon-zero-dawn/

設定方法はこちらのHorizon Zero Dawnの項に準じる。今回もクオリティ優先で測定を行った。

グラフ37


グラフ38


このゲームもGeForce RTX 3080を利用すると、ほぼCPUネックになっているという感じは以前もあったが、GeForce RTX 3080のみでCPUを変化させると、こんな具合(グラフ37・38)で、もうCPU性能の差がそのままフレームレートという形で示されているとしか思えない。

グラフ39


グラフ40


グラフ41


グラフ42


グラフ43


最小フレームレート(グラフ39)は暴れまくりなので無視するとして、フレームレート変動(グラフ40〜43)を見ると、どの解像度でも30〜60秒くらいと110〜150秒くらいの範囲は明確にCPU性能に応じてフレームレートが分かれる感じになっている。Ryzen 5000シリーズはどの場合でも一番高いフレームレートを維持できており、性能の高さの実証ともなっている。

●ゲームその2:Metro Exodus / RDR2 / Division 2 / Tomb Raider

○◆Metro Exodus(グラフ44〜50)

Metro Exodus

4A Games

https://www.metrothegame.com/

設定方法はこちらに準ずる。今回はUltraプリセットを利用した。Ray Tracingは利用していない。

グラフ44


グラフ45


グラフ46


今回、Gameでは唯一Core i9-10900Kが最高速だったのがこれ。といっても、Ryzen 9 5900Xとの差は3fps程度であり、大きな差とはいいにくいのだが。2.5K以上はほぼ団子、という感じではあるのだが。2Kの際のRyzen 3000シリーズとRyzen 5000シリーズの差は10fps以上で、なのでRyzen 5000シリーズはかなり性能を引き上げたが、ほんのちょっとCore i9-10900Kに及ばなかったというあたりだろうか。

グラフ47


グラフ48


グラフ49


グラフ50


この傾向はフレームレート変動(グラフ47〜50)からも見て取れる。2K(グラフ47)が一番判りやすいが、ほぼ全範囲に渡って、Ryzen 5000シリーズ+Core i9-10900Kと、Ryzen 3000シリーズの2つにグラフが判れている感じなのが見て取れると思う。勿論GPUネックになっている部分(70秒前後)は両者接近しているが、その前後は綺麗に分離しているのは、もうCPUの性能差そのもの、としても良いと思う。

○◆Red Dead Redemption 2(グラフ51〜57)

Red Dead Redemption 2

Rockstar Games

https://www.rockstargames.com/jp/games/info/reddeadredemption2

設定方法はこちらに準ずる。Quality Preset LevelはLevel 14の"Favor Quality"とした。こちらもフレームレート変動をOCATで取得している。

グラフ51


グラフ52


グラフ53


平均フレームレート(グラフ51)を見ると殆ど変わらず、という感じであるが、それでもCore i9-10900KがRyzen 3000/5000シリーズに一歩及ばず、というのが総評となる。GeForce RTX 3080をもってしても、まだGPUネック(というか、それだけCPUの処理負荷が低い)なゲームであるが、2Kで3fps程度とはいえ、明確に差が出ている。

グラフ54


グラフ55


グラフ56


グラフ57


最大/最小(グラフ52・53)はあまり役に立たないのでフレームレート変動(グラフ54〜57)を見ると、細かくCore i9-10900KがRyzenに追いついてない感じが見られる。全体としてそんなに大きな差がある訳ではない(というか、妙にAMD系が同じフレームレートで並んでいるのがむしろ気になる)が、一応ここでもCore i9との性能差は確認できたというところか。

○◆Tom Clancy's The Division 2(グラフ58〜64)

Tom Clancy's The Division 2

Ubisoft

https://www.ubisoft.co.jp/division2/

設定方法はこちらの"Tom Clancy's The Division 2"に準ずる。QualityはUltraとした。

グラフ58


グラフ59


グラフ60


こちらも差が少ないというか、平均フレームレート(グラフ58)で2Kの場合を見ると、最高速のRyzen 9 5800Xで184fps、最低のRyzen 9 3900XTで171.7fpsで12fpsほどの差はあるのだが、170fpsあまりのウチの12fpsだから、すごく大きな差とはいいにくいところ。Core i9-10900Kは179.7fpsで、Ryzen 9 5900Xの177.9fpsよりは高速ではあるが、さすがにちょっと差が微妙過ぎる。最大フレームレート(グラフ59)を見ると、2Kの時には性能差がある様に見えなくもないが、これは後述。最小フレームレート(グラフ60)は明確な差とは言いにくい。

グラフ61


グラフ62


グラフ63


グラフ64


フレームレート変動を見ると、2K(グラフ61)の最初の10秒間近辺のフレームレートが、要するにグラフ59の値ということになる。ここは確かにCPUによる性能差がみられるし、その後70〜80秒あたりとか30〜40秒あたりも、Ryzen 5000シリーズ+Core i9-10900KとRyzen 3000シリーズでグラフが分離して見えるが、その前後が全部重なっているあたり、性能差ははあるとは思うが、その差は大きくないというあたりか。2.5K(グラフ62)あたりだと完全に重なってしまっており、もう差を見て取るのは難しい。

むしろ面白いのは3K(グラフ63)と4K(グラフ64)では、Ryzen 7 3800XT/Ryzen 7 5800Xが他の3製品よりもわずかに高いフレームレートで推移していることだ。差そのものは3〜5fps程度でしかないが、明確に分離しているというちょっと面白い傾向であった。

○◆Shadow of the Tomb Raider(グラフ65〜71)

Shadow of the Tomb Raider

SQUARE ENIX

https://tombraider.square-enix-games.com/en-us

ゲームの最後はこちら。設定方法はこちらに準じる。QualityはHighestとした。Ray Tracingは無効で行っている。

グラフ65


グラフ66


グラフ67


これもある意味、CPUネックが非常に良くわかる傾向になっている。平均フレームレート(グラフ65)でみると、2Kは完全にCPUネック、2.5Kも若干CPUネックで、これが解消されるのは3K以降。で、その2K〜2.5Kでは、Ryzen 5000シリーズ > Core i9-10900K > Ryzen 3000シリーズという性能差が明確に示されている。平均だけでなく最大(グラフ66)/最小(グラフ67)フレームレートもこの傾向が明白である。そしてその最大・最小フレームレートで2Kの時の結果を見ると、Ryzen 7 5800XよりRyzen 9 5900Xの方がやや高い数字になっているあたりが、両者のゲームにおける性能差、という感じに思える。

グラフ68


グラフ69


グラフ70


グラフ71


この傾向はフレームレート変動を見るとより明白である。2K(グラフ68)が一番判りやすいが、80秒から100秒あたりが一番CPUネックになりやすい部分で、ここがそのままCPU性能にリンクしている格好だ。2.5K(グラフ69)や3K(グラフ70)になると描画負荷が増える分、グラフの差は減ってゆくのだが、不思議なことにその3KではCore i9-10900Kのスコアが下がり始め、これが4K(グラフ71)でも明確に継承されるという傾向が見えたのは面白い。

●RMMT / 消費電力 / 考察

○◆RMMT 1.1(グラフ72〜74)

RMMT 1.1

Rightmark.org

http://cpu.rightmark.org/products/rmma.shtml

Sandra及びRMMAを利用したテストは今回は時間の関係で見送り(データは取ってあるので、こちらは追ってDeep Dive編でご紹介する)させて頂くが、RMMTの結果だけご紹介する。ちなみにRMMT、今まではThreadあたり40MBでテストを行っていたが、L3が32MBもあるとかなりの部分がこれに入ってしまう、ということで今回からはThreadあたり80MBのメモリを利用したテストにしている。

グラフ72


グラフ73


まずReadがグラフ72だが、4 Threadあたりまではまぁ判らなくもないが、5 Thread以上でRyzen 9 3900XTとRyzen 9 5900Xが性能を上げているのは、やはり2つのCCDからCIoDにアクセスをする方が、フルにCIoDの性能を引き出せる、という事なのだろうか? また1 Threadの時の性能を見ると、Core i9-10900Kが24GB/sec程度、Ryzen 3000シリーズが概ね26GB/sec程度なのにRyzen 5000シリーズは33GB/sec程度まで帯域を広げており、Zen 3でLoad/Storeユニットを強化した効果が表れている様に思う。これはWrite(グラフ73)も同じで、特に1〜4 Threadの間、Ryzen 300シリーズは15〜19GB/sec程度であるが、Ryzen 5000シリーズはCore i9-10900Kと同じく21GB/sec近辺まで帯域が広げられている。少なくともコアの側のLoad/Storeユニットは間違いなく強化されている、ということがここから見て取れる。

グラフ74


最後に今回から、Read/Writeをミックスで行ったらどうか? をちょっと試してみた。4 Thread Read/4 Thread Writeという構成である。結果はグラフ74の通り。何でRyzen 7 5800Xが落ち込んでいるのかが良くわからない(とはいっても、Core i9-10900Kと同等の帯域は確保される)が、Ryzen系が比較的良い結果になることが分かった。このあたりはMemory Controllerの作り込み次第の部分だが、メモリアクセスでIntelにビハインドを負っていた、というAMDのイメージはもう過去のものになったとしても良いかもしれない(良い、と断言するのはDeep Diveでもう少し確認した後にしたい)。

○◆消費電力(グラフ75〜80)

最後に消費電力について。まずSandra 20/20のDhrystone/Whetstoneの結果(グラフ75)である。

グラフ75


以前こちらでも触れたが、Comet LakeというかCore i9-10900KではPL1(つまりTDP)が125WながらPL2は250Wで、PL1 Tau(PL2を有効にし続ける時間)が56秒となっている。ここでCore i9-10900KはまさにPL2をフルに活用する感じで最初の数十秒(途中なんどか動作周波数が落ちているので、連続56秒には達していないみたいだ)は高いが、その後は230W程度に収まっている。Ryzen系はそもそもそこまで上がる訳ではないが、定格こそ105Wながら実質的にそこまで使い切っていないRyzen 7 3800XTが180W台なのにたいし、他の3製品がいずれも220〜230Wあたりに集中しているのが判る。要するにRyzen 7 5800Xは、TDP枠一杯まで性能を上げているっぽいということだ。

グラフ76


グラフ76はCineBenchで、All ThreadとOne Threadの両方が終わるまでを測定している。最初がAll Threadなので、当然ここの消費電力が一番高い訳である。ただRyzen系は250W程度で収まっているのに、Core i9-10900Kは340Wほどまで上がっているのが判る。厳密に計算した訳ではないが、これも「さもありなん」と思わせる結果である。

グラフ77


グラフ77はTMPGEnc Mastering Works 7における4 Stream同時エンコード中の消費電力である。Ryzen系は最初の28秒程度、若干(75W程度)消費電力が増え、その後提供状態になるが、Core i9-10900Kはまず最初の28秒は150W以上消費電力が跳ね上がり、その後100W程度に抑えて更に28秒経過後に、250W弱に落ちるというちょっと複雑な振る舞いを見せる。

またグラフ76ではRyzen 7 5800XとRyzen 9 5900Xの消費電力が異なっているが、グラフ77ではほぼ同じあたりになっているあたり、全スレッドが稼働するようなケースでは消費電力一定を目指して動作周波数の調整を細かく行っているようだ。

グラフ78


グラフ78は3DMark FireStrikeのDemoの結果だが、大きな差ではないものの、意外にもここではCore i9-10900Kが一番低い(60〜180秒あたり)数値になっている。また2ダイ構成のRyzen 9がちょっと高めに推移している、という傾向も面白い。

グラフ79


なかなか熾烈だったのが、Final Fantasy XV(2K・高品質)の実施中の消費電力(グラフ79)である。CPUをそれなりに使うということもあってRyzen系もピークで560W近くまで行き、Core i9-10900Kは600Wを複数回超えている。3D系ゲームであっても、負荷が掛かるとそれなりということか。

グラフ80


さてこの5つのグラフから、それぞれ平均値を取ったのがグラフ80となる。こうしてみると、Ryzen 5000シリーズは概ねRyzen 3000シリーズに近い消費電力枠に収まっている事が判る。面白いのはやはりRyzen 7 5800Xだろうか。ダイが一つにも関わらず、ほぼ105WというTDP枠を使い切っている事が判る。ということは、特に全コアをフル稼働させるシーンでは、Ryzen 9 5900Xよりも平均的に高い動作周波数で稼働しているものと想像される。にも拘わらず性能という意味ではRyzen 9 5900Xの方が上なのは、むしろ動作周波数を下げてコア数を増やした方が絶対性能という意味では上になるからだ。

ただ、動作周波数がモロに効くようなアプリケーションでは、むしろRyzen 7 5800Xの方が性能が上がりやすいということになる。冒頭のPCMark 10などはこの類なのではないかと思う。その意味では、(どの程度居るのかは分からないが)Ryzen 7 3800X/3800XT→Ryzen 7 5800Xというアップグレードパスを考慮しているユーザーはちょっと注意が必要だろう。

○考察

ということでまずはRyzen 7 5800XとRyzen 9 5900Xのレビューをお届けした。私物でRyzen 7 3800Xを用意し、それとは別にレビュー用にRyzen 9 3900Xを多用している筆者にとっても、どの程度性能が上がるかの見極めが出来たという意味では大変に意味のあるテストであり、確かにAMDのいうIPC 2割向上を確認できたことになる。

そういう意味では、これからAMDのプロセッサを、というユーザーにはもうRyzen 3000シリーズではなくRyzen 5000シリーズの導入を強くお勧めする。価格も殆ど変わらないのに、間違いなく最高速プロセッサとして差し支えない性能を実現しているからだ。

難しいのは既存のRyzen 3000シリーズのユーザーである。特に今回レビューしたRyzen 5800X/5900Xは、お値段もそれなりである。例えばRyzen 7 3800X→Ryzen 5800X、性能という意味では確かに2割くらいは上がるのだが、そのためにもう一度5万円余りを支払えるか? というと非常に微妙なところにある。もっともこのあと、Radeon RX 6000と組み合わせてSmart Memory Accessなどでガンと性能が上がるような事があれば、この値段もあるいは正当化できるのかもしれないが。下取りサービスというかアップグレードサービスがあればいいのに、とふと思ってしまった。

そして、これからPCを組むのにIntelかAMDかを迷っているユーザーに対しては、「今組むならAMD」とお勧めしたい。Intelに関しては、恐らく来年3月あたりに出るRocket Lakeが本命という事になるが、現在販売されているIntel 400シリーズのマザーボードではRocket Lakeのフル性能を発揮するのは難しい(というか、無理)であろう(一応互換性はある、という話は非公式には語られているが、公式には言及すらない)。来年まで待てるユーザーは、Rocket Lakeの登場後に見極めをすればいいが、そこまで待てないユーザーであれば現時点ではRyzen 5000シリーズの方が良いチョイスである、と言える。

この後、機材が入手でき次第、追加でRyzen 9 5950XとRyzen 5 3600Xを入れた構成のテスト結果もお届けしたい。また、内部構造の解説を含めたDeep Dive編は、別途お届けする予定である。