なぜ八角形? 美しくも不思議な廃墟トンネルの謎を探る
「日常生活では想像できない退廃した空間や朽ち果てが好きで廃墟の記録をしています」
そう語るのは、写真家のtoshibo(@JIYUKENKYU_jp)さんだ。 日本各地の美しい廃墟を撮影している。
2020年9月22日、toshiboさんが自身のツイッターに投稿した、次のような写真が注目を集めている。
八角トンネルという謎の遺構。
— toshibo (@JIYUKENKYU_jp) September 22, 2020
7基連続した落石を防止する為の洞門だが、何故にこの形が採用されたのかはよくわかってないらしい。
昔はこの中を鉄道が走っていた。 pic.twitter.com/vdhusGQf5S
ここは熊本県の中央部に位置する美里町にある、「八角トンネル」だ。
「7基連続した落石を防止する為の洞門だが、何故にこの形が採用されたのかはよくわかってないらしい」というコメントが添えられている。
確かに、美里町役場のウェブサイトではこのトンネルについて、以下のように説明されている。
「熊延鉄道の遺構のひとつです。昭和39(1964)年に廃線となりましたが、約50年たった今でも、線路の両側の岩が崩れるのを防ぐために作られた洞門であるこの八角トンネルは、産業遺構として今も多くの観光客を迎えています。7基が連なり、間が空いている、落石よけとしては不完全な形になった理由として、建設費削減のためとする説が有力ですが、なぜ八角形なのかなど、形も構造も謎が多い遺構です。」
なんとも美しい、謎の遺構である。
toshiboさんのツイートには、2万4000件を超える「いいね」が付けられ、今も拡散中だ(9月29日夕現在)。
Jタウンネット編集部は、投稿者のtoshiboさんと、熊本県美里町役場に取材した。
このトンネルはなぜ八角形なのだろう?
「toshibo」(@JIYUKENKYU_jp)さんのインスタグラムより
toshiboさんによると、「八角トンネル」の写真を撮影したのは、2018年11月のことだったという。
「以前から名の知れた遺構でしたので、同じ日に訪れていたグループ何組かとすれ違いました。 時期によっては入れ替わり立ち替わりといった感じになってしまうと聞きますが、幸いにも朝早かった事もあり、僕が撮影している時は誰もいなかったので写真撮り放題でした」
実際に訪れてみて、「想像していたより短いな」と思ったそうだ。
「toshibo」(@JIYUKENKYU_jp)さんのツイートより
「訪問当時は、なぜ八角形なのかはあまり考えていませんでした」とのことだが、写真をツイッターに投稿したことで多くの人から、その理由を考察するリプライ等が届いたという。
それらの意見から、これは、と思ったピースを集め、toshiboさんが推測する「トンネルが八角形である理由」は次の通り。
「施工当時は、活線工事を余儀なくされたために時間の掛かるアーチ型の構造が作れず、突貫工事のような形で、当時の車両限界と建築限界の必要最低限を考え、八角形が採用されたと思われる。
また、六角形である事が外圧に強い構造であるそうだが、車両限界を考慮してこの様な形になったのではと推測される。なお、当時は予算不足という事もあり、この洞門には屋根がない」
これらはあくまで推測だ。toshiboさんは、「裏付けがあったことは確定でよいかと思いますが、それでも謎な部分はあったので、そこはミステリーとして残しておいても良いのかな? と少し思ったりもします」と語る。
「toshibo」(@JIYUKENKYU_jp)さんのツイートより
Jタウンネット編集部は、熊本県美里町役場社会教育課担当者にも、なぜ八角形になったと考えられるかを聞いてみた。
すると......、
「詳しい方にお聞きしたところ、次の説があると言われていました。『作成時に使用したコンクリート型枠が八角形だったため』」
という回答が返ってきた。また違う形のピースが現れたようだ。
なぜ八角形なのか、真相はわからない。しかしそれが、この場所の魅力のひとつなのだろう。
考察の余地が残っている、というのはロマンがあるものだ。
「八角トンネル」が注目を集めていることについて、美里町役場の担当者は、こう話した。
「一度使われなくなった構造物が、新たな形で注目を浴びることは大変喜ばしい事だと思います。また、それらを取り壊さなかった地元の方々に感謝しております。近ごろ、八角トンネルに関する問い合わせが増加しているように感じます」