東京・奥多摩町が「0円」で空き家を譲ってくれるらしい――

そんな話がツイッターで話題となっている。少子高齢化とともに深刻化する「空き家問題」の対策に一役買いそうではあるが、「0円」はさすがに思い切りがよすぎないだろうか。

空き家が「0円」になる、というのは東京の山間部に位置する奥多摩町が実施している企画だ。いったいどんな物件があるのだろうか。

その一例がこちらだ。




(画像は0円空き家バンク物件詳細より)

奥多摩町の公式サイトには、2020年9月18日時点で3件の「0円空き家バンク物件詳細」が掲載されており、いずれも契約交渉中の状態。そのうちの1件が上記の物件だが、想像以上に年季が入っている。

この物件の備考欄には、

「物件の使用にあたっては大規模なリフォームが必要」
「国道から山道で徒歩約30分」

との記載が。0円とはいえ、リフォーム代の負担は避けられないようだ。

奥多摩町の「0円空き家バンク」は、あるツイッターユーザーが9月7日に投稿したことをきっかけに話題となった。投稿には大きな反響があり、

「秘密基地的少年ロマンを感じます」
「キャンプするにはいいのかも。狩猟とか」
「ここで暮らしていた人はどういう仕事をして、どういう家族構成で、どうやって生活していたのか、凄く興味がある」

といった声が寄せられている。

従来の「空き家バンク」では登録できなかった物件も

「0円空き家バンク」は2020年度から奥多摩町が開始。空き家を必要としている人と、手放したい人をマッチさせる制度だ。

Jタウンネットは9月17日、奥多摩町若者定住推進課の担当者に、0円空き家バンクの詳しい利用方法を聞いた。

まず物件が登録されると、登録決定通知が町から利用者へ届く。利用者は各自で物件を見学し利用申込をする。その後は町が物件所有者と利用者の連絡先を伝え、各々で契約を交わすという流れだ。

利用者登録は17日時点で30件。物件は公式サイトに載っている3件だという。


(画像は0円空き家バンク物件詳細より)

西奥多摩新聞の記事(2020年7月31日付)によれば、奥多摩町はこれまでにも、「空き家バンク」や「若者用空き家バンク」といった取り組みを展開していた。しかし、既存の状態では定住に適さない物件は登録できない、利用申請は年齢や定住の条件を満たす場合に限られている、といった制限があった。

0円空き家バンクでは、そういった条件の対象外となっていた物件、利用希望者にも門戸を開いた形となっている。

しかしその一方で課題もある様子。担当者に0円空き家バンクのデメリットを聞くと、

「物件を受け取った人が管理を適正に行えるか」

と回答した。物件を有効利用できるかは利用者の手にかかっている。

担当者は0円空き家バンクがツイッターで話題になったことについて、

「活用困難な空家を0円空家バンクとして開設したところ、多くの方々に関心を寄せていただき感謝しております。所有者の負担が次の管理者へと移り、町で困難とされていた空家を活用して頂けることに期待しております」

としている。