『半沢直樹』撮影現場での堺雅人('20年4月)

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 理不尽な会社組織や上司に立ち向かっていく半沢直樹。実は、プライベートでも、お金のやりくりに奮闘していた!? ドラマでは描かれない半沢の懐具合に迫る!

【写真】『半沢直樹』の撮影現場をキャッチ! カメラが回ってなくても背筋がいい堺雅人

 毎話20%超え、最終回ではシーズン1の40%を超える『倍返し』が期待されている堺雅人主演の『半沢直樹』(TBS系列/日曜21時〜)。16日放送の第5話から古巣の『東京中央銀行』に戻った半沢。JALがモデルとされる破綻寸前の『帝国航空』を舞台に、国側の再建チームとのバトルが繰り広げられている。

 妻・花(上戸彩)との結婚記念日や夫婦での旅行よりも仕事に生きる半沢だが、こんなに働いてどれくらい給料をもらっているのか。気になる『財布事情』を元銀行マンでファイナンシャルアドバイザーの望月良友さんに聞いた。

半沢直樹の年収は?

「総支給額で年間1000万〜1200万円くらい。手取りで700万、よくて800万円くらいと思っています」

 と望月さんは推測する。

「車も持っていないようですし、社宅ですからローンはなさそうです。子どももいませんし、派手な生活をしているようにも見えません。貯めているんじゃないですか?」

 月給は支給額で40代のメガバンクの社員なら100万〜120万円前後、地方銀行なら70万〜80万円前後とみられている。賞与や手当がプラスされると一般的なサラリーマンと比べると高い給与が支給されている。

 ただし、現在は成果主義型人事を採用している銀行も多く、年齢や役職などで給与額の区分けをするのは難しい。

「もし左遷されたら今より給与は下がるでしょうね。ただ、大和田常務(香川照之)や伊佐山部長(市川猿之助)など上司にあれだけ盾突いても、役職が下がらないのは成果を出しているからでしょう。ただし現実ではあの逆らい方だと成果を出す前に左遷されると思います」

 組織に逆らったら「お、し、ま、い、DEATH!!」。

片道切符の出向だと減額に……

 かつてはメガバンクから他の企業に出向、給与は半減されるなんて話もあった。子会社へ出向した半沢の給料も減らされてしまったのか。

「『東京セントラル証券』への出向で給料が下がることは基本的にはないです。グループ内の証券会社なので左遷とは言えません」

 半沢の場合は『東京中央銀行』に戻っている。出向時、給与は銀行が負担、もともとの水準を維持していたとみられる。

 給与が減額になる場合は降格や左遷、関連企業などに送られて戻ることができない『片道切符』の場合だという。

「給与は銀行と受け入れ企業側との折半負担となるケースもあるので、その場合はいくらかの減額は発生しえます」

 元銀行マンが出向先の企業でそこの給与よりも高い、もともとの水準の給与をもらっていれば人件費を圧迫するだけでなく、出向先の社員から反感を買う可能性もある。そんな関係性で何か頼もうものなら社員から言われてしまうだろう。

「わびろ、わびろ、わびろ」

智美の店での飲み代は「自腹!」

 半沢が行きつけにしているのが井川遥演じる美人女将・智美の店。半沢は及川光博演じる同期の渡真利忍らとこの店で情報交換をし、根回しを行う。その会話に聞き耳をたて表情を曇らせる智美の不穏な気配に視聴者はざわつく。

「ドラマのような飲み会ですと、経費では絶対に落ちません(笑)」

 経費で落ちるのは支店長同席か、事前に許可を出した取引先などとの正式な飲み会や接待の場であることが前提だ。

銀行マンの飲み会はもちろん、自腹。一般的な値段の居酒屋やスナックに行きます。あの店は高そうですよね。毎日通ったら破綻しますよ」

 智美の店は東京・恵比寿にある割烹を使い、ロケをしている。口コミサイトによれば1回の飲食予算は約8000円前後と高めの設定。作中もその水準と同額だとすれば、半沢は毎回、それなりに出費をしていることが考えられる。

 ただし、飲み代よりも大きな問題があるという。

「店を信用しすぎているのか、個室でもないのに半沢も渡真利も機密情報をべらべらしゃべりすぎな点。情報漏洩が非常に気になるところです」

妻の奥様会は本当にあった

 花がイヤイヤ参加している『奥様会』。ここでの振る舞いが夫の出世を左右しかねないのだが、花は半沢のためうまく立ち回り、情報収集もこなしていた。

「社宅の付き合いや奥様会は実際にあります。ほとんどが社宅の維持や管理を円滑にするための集まりで、ドラマのような夫の立場や出世を意識した付き合いはしていません。ただのママ友です」

 お茶会に生け花といったお付き合い、奥様会用の洋服や手土産や贈り物。家計的にも痛い出費なのでは?

「メガバンククラスでしたら昔はドラマのような『奥様会』もあったようですがそれでも極めてまれです。もし、『奥様会』があったとしても半沢の年収から考えると少々痛い出費かもしれませんね」

 前作の浅野支店長(石丸幹二)の妻・利恵(中島ひろ子)らからは嫌がらせや嫌味の数々。手土産を差し入れるときはブランドやトレンドにも配慮して、上司の妻の誕生日にはわざわざプレゼント……そこまでして参加するのは、

「死んでも嫌だね!」

メガバン頭取なら報酬1億円も!?

「ドラマで描かれている『東京中央銀行』は規模がかなり大きく、国内トップのリーディングメガバンクのようですから頭取の報酬はかなり高く、中野渡頭取(北大路欣也)なら7000万〜1億円くらいかなと思います」

 実際の年収はメガバンクで5000万〜7000万円程度、地方銀行で2000万〜4000万円程度。

 巨額なお金を扱っていることから派手に見える銀行マンだが、その暮らしぶりは意外と堅実?

「派手にお金を使ったり、浪費グセがあるとほかの行員らからはよく思われません。例えば“職場にロレックスをしていく”なんてことはご法度」

 作中の衣装や髪型にも銀行マンイズムがあらわれている。

「お客様から信頼してもらうためにも華美になりすぎることはよしと思われていません。かといって、地味すぎてもだめ。半沢のスーツは派手すぎず、いつもピシッとしていて、まさに理想の銀行マンの装い。一方、証券会社の森山(賀来賢人)は細身のスーツを着ていましたが、銀行であまり好まれません。しかし、証券会社は株の売買が仕事。顧客に羽振りよく見せるためにも銀行よりも華やかな格好をしている傾向があります」

 銀行マンは羽振りがいい印象もあるのだが、

「みなさんが思っているほどの派手さはないです。若い行員たちはコツコツと貯金」

 顧客から大切な財産を預かるからこその信頼と誠実さが求められている。

「半沢は根っからの銀行マンですね。仕事ぶりや考え方も。できることなら彼のような仕事をしたかったですね」

 と望月さんも憧れる半沢。

 半沢が森山に言った、

「大事なのは感謝と恩返し」

 半沢の財布への『恩返し』はあるのだろうか。

お話を聞いたのは……望月良友(もちづき・よしとも)さん。独立系ファイナンシャルアドバイザー(IFA)。地方銀行で25年以上勤務ののち現職。資産形成・運用・保険・相続および借り入れ等をアドバイス。個別面談のほかオンラインも活用して各種セミナーなどで講師も務める