マイクロソフトのTikTok買収交渉は保留に。米大統領「TikTokあくまで禁止」発言で
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マイクロソフトが、人気動画アプリTikTokをByteDanceから買収するための交渉を中断したとWall Street journalなどが報じています。これはトランプ大統領がTikTokをあくまで使用禁止にするとの考えを述べたことに対応する動きです。

TikTokをめぐっては、中国ByteDanceが(それが本当に可能かどうかはともかく)中国政府からデータ提供要請などがあっても応じないと表明し、またアプリのユーザー情報などもすべて中国国外に置くことで不審なことはなにもないと主張しています。しかし、米国政府や議員は他の中国系情報機器などと同様にTikTokに対する不信感を強めており、公的機関や軍関係でのTikTok使用を禁止するなど対応を強化していました。

最近の流れとしては、ByteDanceが米国におけるTikTokの使用禁止を回避するため、マイクロソフトへのアプリ売却交渉に同意したとの報がReutersなどから伝わっています。アプリをマイクロソフトのものにしてしまえば、そのアプリのユーザー情報はマイクロソフトが管理・保護することになり、中国への情報流出を抑えることができます。またマイクロソフトはアプリそのものの運営までするわけではなく、第三者企業が管理する体制になる可能性もあるとされました。

しかし、7月31日にトランプ大統領がTikTokをあくまで禁止する意向を明らかにし、そのためには大統領命令でもなんでもやると述べたことで、マイクロソフトがTikTokを取得する交渉がいったん停止された模様です。

もし、ByteDanceが言うようにすでに中国当局との縁が完全に切れているのなら、TikTokを禁止したところで米国にとってはたいした意味はないかもしれません。一方でByteDance側は約1億人の米国人ユーザーがもたらす収益を失います。またTikTokと契約している人気投稿者らも収益が得られなくなります。

最新の報道ではByteDanceとマイクロソフトは週明け8月3日までに取引を完了する計画だったとされるものの、トランプ大統領のエアフォース・ワンでの発言を受けて買収交渉を一次停止したとのこと。完全に話がなくなったわけではなさそうですが、まずは大統領の発言の真意を確認してから次に何をすべきかを考えたい模様です。

米国政府が、数ある中国系アプリのなかでTikTokだけを名指しし、これほどまでに忌み嫌う理由は明確に示されていません。ただ、そこに投稿される動画には街や建物、家庭内の様子、人物の登録情報と顔などの外見情報が含まれます。ByteDanceがどう言おうとも、それらデータを中国当局が入手し自由に解析できる可能性を考えると、米国政府が自国の防衛や情報保護上、強く警戒するのもおかしくはありません。

7月7日にはFBI長官が、中国スパイの活動が10年前の13倍にも活発化していると警告しました。またテキサス州ヒューストンにある中国総領事館の閉鎖を命じたのも、中国への情報流出対策強化という点で一致しています。TikTok禁止もこれらの対応と同じ方向性と言えそうです。

source:Wall Street journal, The Information