ヒトの卵子は精子を選り好みすることが研究で判明、男性は外見やステータスだけでなく精子でも選別されている
ヒトの卵子は化学信号を用いて精子を引き寄せますが、最新の研究により卵子は特定の男性の精子を特に強く引き寄せることが明らかになっています。
Supplementary methods, tables and figure from Chemical signals from eggs facilitate cryptic female choice in humans
https://figshare.com/articles/Supplementary_methods_tables_and_figure_from_Chemical_signals_from_eggs_facilitate_cryptic_female_choice_in_humans/12416570
https://phys.org/news/2020-06-human-eggs-men-sperm.html
人間は生涯のパートナーを選別するために多くの時間とエネルギーを費やしますが、パートナーとなり、性行為を行ったあとにも「卵子によるパートナー選別作業」が続くことを、スウェーデンのストックホルム大学とイギリスのマンチェスター大学NHS財団トラストが共同で行った最新の研究が明らかにしました。
同研究に参加したストックホルム大学のジョン・フィッツパトリック准教授は、「人間の卵子は精子を受精していない状態で、精子を引きつける化学誘引物質を放出します。卵子がこの化学信号を用いる際、引きつける精子を選別しているかどうかを我々は知りたかったのです」と語っています。
研究者は卵子の化学誘引物質を含む卵胞液が精子にどのように反応するかを調べました。フィッツパトリック准教授によると、「ある女性の卵胞液はある男性の精子を引きつけ、別の女性の卵胞液はさらに別の男性の精子を引きつけることが確認できました」とのことで、ヒトの卵子は特定の男性の精子を引きつけることが明らかになっています。つまり、卵子は女性が選んだパートナーの精子を好むかどうかはわからないというわけです。
フィッツパトリック准教授は、精子は卵子を受精させるというたった1つの仕事をこなすため、精子が卵子側を選り好みするというのは「意味がないこと」と説明しています。一方で、卵子は質の高い、あるいは遺伝的に互換性のある精子を選ぶことで、大きな利益を得ることが可能です。
同研究論文の筆頭著者であり、マンチェスター大学NHS財団トラストの傘下にあるセントメアリーズ病院で生殖医学部の科学部長を務めるダニエル・ブリソン教授は、「卵子が精子を選り好みするという考えは、人間の生殖能力に関する非常に斬新な視点です」と述べました。
ブリソン教授は「今回のような卵子と精子が相互作用する方法に関する研究は、不妊治療を進歩させ、最終的に現時点ではカップルに『説明できない』不妊の原因のいくつかを理解することにつながるかもしれません」と述べ、将来的な不妊治療の改善につながる研究であるとしています。