英新聞ガーディアン紙(The Guardian)が敢行した読者収益への戦略転換には、独自のひねりが利いている――ペイウォールを設けていないのだ。その代わりとして導入したのが寄付会員制であり、報道機関を信じる人々を惹き付けるこのモデルには、新型コロナウィルスに関する記事を無料にできると同時に、広告不足という問題も付随する。

「この期間、読者収益がさらなる伸びを見せていくことに疑いの余地はない」と、ガーディアン紙の米/豪CEOエヴェリン・ウェブスター氏は4月第4週のDIGIDAYポッドキャストで語った。「たしかに、広告は打撃を受けることになる。衝撃の大きさも傷の深さも、私には正直わからない。誰にもわからないはずだ。[だが]私が目にしたことのない、このような最悪のシナリオのなかにあっても、ガーディアンはこれまでと変わらず、米国で利益を上げている。では、我々はこれからも成長の旅路を続けられる好位置にいるのか? 答えはイエス。しかも、かなりの自信を持ってそう言える」。

米読者からの寄付は、同紙の米国における事業収益の約40〜45%を占めている。進化を続けるこの収益構造と本格的な経費削減努力のおかげで、2019年、ガーディアンは全体として、この20年ではじめて営業利益をプラスに転じさせた。

また、同紙は月間ウェブトラフィック数でも過去最高を記録している。

「これを後押ししているのが現在の状況であることは、疑いようのない事実だ」と、ウェブスター氏は目下のパンデミックを指して語る。「3月のブラウザは1億1400万。前月比で80〜90%増、前年比で約160%増を記録した」。

ウェブスター氏はほかにも、英国と米国の寄付会員の違い、英新聞の視点が米国でも通用する理由、ガーディアン紙の株式所有構造(トラストが所有している)が公平な紙面の維持を可能にする理由について語った。

以下に、重要な発言をいくつかまとめて紹介する。なお、読みやすさを考慮し、多少編集を加えてある。

Subscribe: Apple Podcasts | Stitcher | Google Play | Spotify

「最悪のシナリオ」の中でも増益

「我々は米国において確固たる地位を確立している。現在も、トラフィック数、エンゲージメント率、忠実かつ熱心な読者数がゆっくりと、確実に増加を続けている。そしてこの期間、読者収益がさらなる伸びを見せていくことに疑いの余地はない。たしかに、広告は打撃を受けることになる。衝撃の大きさも傷の深さも、私には正直わからない。誰にもわからないはずだ。[だが]私が目にしたことのない、このような最悪のシナリオのなかにあっても、ガーディアンはこれまでと変わらず、米国で利益を上げている。では、我々はこれからも成長の旅路を続けられる好位置にいるのか? 答えはイエス。しかも、かなりの自信を持ってそう言える」。

確固たる読者収益、ペイウォールは不要

「我々が思いついたこのアイデアはきわめて斬新であり、実際、多くの人々は懐疑的だったわけだが、その発想の裏にはこのような考えがあった――『世界中の読者とこれほど深い繋がりを築けているのなら、アメリカやその他の国には、我々のジャーナリズムを金銭的に支えようと善意から思ってくれる人も十二分にいるのではないか?』。我々はそう信じていたし、その思いが正しかったことが証明された。だからこそ、自主的な寄付に基づくこのビジネスモデルが成立しているのだ。世界各地でガーディアン紙を訪れてくれる読者の方々は皆、我々との旅の途中で必ずメッセージを受け取ることになる。メッセージは形も大きさもトーンもさまざまだが、訴えかける内容は同じだ――『ここを訪れているいま、我々のジャーナリズムにご協力いただけないか?』。我々の読者収益モデルはそこから誕生したのであり、この3年間、好調を維持している」。

飛躍と読者の保持

「2016年(前回の米大統領選)や、その他大きなニュースがあったときに同様の経験はした。そして、いま現在もそれが起きている――トラフィックの急増は疑いようのない事実であり、かなりの高率でその保持に成功している。そしてそれこそが、有意義なリーチの確立を目指す戦略的フォーカスにおいて、ガーディアン紙をほかとは異なる存在にしていると、私は考える。数字を上げるだけの目的で集めた一過性の数字には、興味がない。我々はそうした消費者や読者に繰り返し戻ってきて欲しいのだ」。

PIERRE BIENAIMÉ(原文 / 訳:SI Japan)