スニーカーリテーラーは現在、無数の問題を抱えている。たとえば、店舗の休店、スニーカー売上の減少、全世界を覆う景気後退の大波などだ。さらに、ブランド勢が現在、然るべき注目を集められる時期が来るまで、目玉となる新作モデルの発売に待ったをかけていると、リテーラーの1社、スニーカーズエンスタッフ(Sneakersnstuff)でブランドリレーションシップ部門を率いる同業界のベテラン、ウィル・ホイットニー氏は語る。

「ブランド側に著しい遅延が見られる」とホイットニー氏。「注目度の高い新商品[の発売には、それ]に紐付けた、完璧なブランドスト−リーを作りたいところだが、商品が棚に並べられない状態でそれをするのは難しく、しかもいまはこの[危機的]状況が世の中に暗い影を落としている。それで大手は多くの話題作の発売を意図的に遅らせているのだろう、インパクトが薄れてしまうからだ。また、小規模のブランドのなかには、単純に配送の問題で発売が遅れているところもある。配送は実際、弊社内でも最大の問題となっている」。

ナイキ(Nike)は4月と5月に予定していた多くのエアジョーダン(Air Jordan)の発売を遅らせており、大半は1カ月程度だが、さらに遅れる商品もある。これまで定期的に行なわれていた新作モデルの発売と、それに伴う大規模キャンペーンがなくなったことで、スニーカーズエンスタッフ(Sneakersnstuff)といったリテーラーは現在、オンラインストアに消費者を引き寄せるための材料を失うという、新たな困難にも直面している。フットウェア業界のデータに精通する企業NPDの調査によれば、新型コロナウィルス絡みのさまざまな障害のせいで、スニーカー全体の売上はすでに65%低下しており、新作発売数の減少はとりわけ深刻な問題となっているという。

スニーカーブランドのこだわり

話題の新作は必ずしもブランドに多額の利益をもたらすわけではない。限定数のみの生産であり、通常は120ドルから300ドル(約1万3000円から3万2000円)という標準的な小売価格で販売されるからだ(1000ドル[約10万7000円]といった法外な値は、中古市場に出回ってから付く)。だが、その一方で、そうした目玉商品は生産側のブランドにとって貴重なバズマーケティング材料になり、販売するリテーラーには新規顧客をもたらしてくれる。

スニーカーブランドは一般に、商品をいつ、どこで販売するのかに関して強いこだわりを持っている。話題作の場合はとりわけ、希少性、在庫、発売前の期待値、限定品を入手できた人々の満足度など総合的なバランスを見極め、全モデルに対して綿密な戦略を立てる。フットロッカー・ノースアメリカ(Foot Locker North America)のSVP/ジェネラルマネージャーのフランク・ブラッケン氏によれば、そのこだわりは今後も変わることがないという。

「各ブランドはそれぞれ、自社商品の市場への投入の仕方について、明確な考えを持っている。話題の新作の場合は、特にそうだ」と、ブラッケン氏は語る。そして、端的に言えば、いまはその時ではない。

EC事業への注力が救いに

スニーカーエンスタッフ(Sneakersnstuff)の場合、2019年度の収益は約1億ドル(約107億円)であり、オンライン売上がその約80%を占めた。同社は2週間ほど前に7つの実店舗を休店したが、もともとeコマースに強かったことが、現在の売上低下への対応に役立っていると、ホイットニー氏は語る。

「大半をオンラインで行なっていたことが、いまの状況への良い備えとなった」とホイットニー氏。「これが起きる直前まで、我々はエアマックスデー(Air Max Day)[ナイキエアマックスの誕生を祝う毎年恒例のイベント。エアマックスの新作モデルの発売と、リテーラーによる関連商品の販促が行なわれる]への準備を整えていたが、幸いなことに、大部分がオンライン、インストア少々という割合からオンライン100%へと、問題なく移行できた。主軸をeコマースに置いていたのが幸いした」。

ビジネスの大半をオンライで行なうリテーラーが新型コロナウィルスの被害をまともに受けずに済むのは明らかだ。だが、ブランド勢が発売スケジュールをいつ元に戻すのかについては、いまだ先が見えない。

「小規模ブランドのなかには、すでに注文をキャンセルしているところもあり、弊社への商品の到着にも遅れが生じている」とホイットニー氏。「ただ、弊社のブランドパートナーは皆協力的で、我々が必要なものを手にできるよう尽力してくれている。もっとも、目玉となる新作モデルはないが」。

DANNY PARISI(原文 / 訳:SI Japan)