「ギグワーカー保護法」として知られる、カリフォルニア州議会法案第5号(Assembly Bill 5:AB 5)が1月1日施行された。以降、まだ数週間しか経っていないが、その影響を回避できるかもしれないというメディアマネージャーたちの希望は、すでに打ち砕かれてしまった。

AB 5では、請負労働者が特定の出版物に対して1年間に提供できる記事の数を35本に制限している。パブリッシャーはこの新法の施行に数カ月前から備えてきたが、一部のパブリッシャー、ライターは追加コストの負担を回避できていない。ボックス・メディア(Vox Media)の関係者によれば、ボックス・メディアは新法の成立を受け、2019年12月、フリーのライターと編集者「数百人」の契約を打ち切った。その後、SBネーション(SB Nation)の新スタッフを20人募集し、まだ採用は完了していないが、この関係者は20人の新規雇用を「純投資」と表現している。

カリフォルニア州で複数のサイトを運営する別のパブリッシャー幹部は、新法によってコストが増加したと報告している。パートタイム従業員や州外のフリーランサーで編集チームを再構成する必要があったためだ。ただし、編集者たちは欠員補充の手段として、フルタイムまたはパートタイム従業員の雇用、カリフォルニア州外からのフリーランサーの採用、あるいはギャップを埋める他の方法を見つけることなどを自由に選択できたため、具体的にどれくらいコストが増加したかは不明だ。

このパブリッシャー幹部は契約を打ち切ったカリフォルニア州のフリーランサーたちについて、「彼らが抜けた穴をほかの労働者で埋めることはほとんどしておらず、時間給の従業員の仕事が増えている」と説明している。

困惑するライターたち

これらの出版物に寄稿するライターたちは、米DIGIDAYの取材に対し、頼りになる収入源が消えてしまったため、以前と同じ数の記事を請け負うには、出版物の数を増やすしかなく、編集者への売り込みに時間を割かなければならないと述べている。現在ある本の仕事をしているフリーのエンターテインメントレポーター、スコット・メスロー氏は、毎週コラムを寄稿するという話を白紙に戻された。メスロー氏はパブリッシャーの名前を明かしていないが、AB 5に抵触するというのが白紙撤回の理由だった。

「以前より大きな負担を強いられることになるだろう。私の場合、出版物を4から8に増やす必要がある」と、メスロー氏は語った。

合同会社や小規模な会社の設立を余儀なくされているフリーライターもいる。会社の立ち上げには費用と時間がかかり、税金も複雑になる。

たとえば、フォーブス(Forbes)の寄稿者プログラムに参加するライターは、毎月5本以上の記事を寄稿しなければならない。つまり、カリフォルニア州に拠点を置く寄稿者は、夏が終わる前に35本の上限に達するということだ。フォーブスの寄稿者で、ファンサイディド(Fansided)などの仕事も請け負うクリステン・ロペス氏は、毎月7本の契約を結んでいる寄稿者はもっと早く上限が来ると嘆く。ロペス氏は1月7日、合同会社をつくるための資金を調達するため、ゴーファンドミー(GoFundMe)でキャンペーンを開始した。

パブリッシャーたちの対応

パッチ(Patch)のCEO、ウォーレン・セント・ジョン氏は「選択肢の減少につながる」と述べている。「町レベルのハイパーローカルニュースでは、最新情報の素早い投稿が求められる」と同氏はいう。パッチはカリフォルニア州の市場をカバーするため、フルタイムの記者を10人雇用している。

今回の取材では、カリフォルニア州に関する記事を減らすと明言したパブリッシャーはいなかったが、AB 5をきっかけに、驚くような求人情報がいくつか登場している。たとえば、Twitterでは、ニューヨークタイムズ(The New York Times)の求人広告が話題になっている。カリフォルニア州の不動産情報に関するコラムを執筆できるフリーランサーを探しているが、カリフォルニア州在住者は採用しないという内容だ。

ニューヨークタイムズの広報担当者はこの求人情報について、カリフォルニア州では現在、35人の記者を雇用しており、AB 5によって報道が制限されることはないとしたうえで、不動産コラムの執筆は限定的な役割だと強調している。

批判にさらされるAB 5

AB 5は米下院少数党院内総務ケビン・マッカーシー氏をはじめ、さまざまな方面からの批判にさらされている。また、自身の帰属を見直すライターも現れている。SBネーションにもっとも長く寄稿してきたひとり、トム・ジラー氏は、AB 5の成立後に独立を決意した。SBネーションが所有するゴールデン・ステート・オブ・マインド(Golden State of Mind)に関係していたライターたちも、独自サイトの立ち上げに動いた。

パブリッシャーのマネージャーとフリーランサーは同じイラ立ちを感じている。多くの場合、AB 5が影響を及ぼしているのは、長い年月をかけて構築された関係だ。前述のボックス・メディア関係者は「我々の本当の望みは、彼らとの関係を維持することだ」と述べている。

Max Willens(原文 / 訳:ガリレオ)