開通を控えた首都高の新線「横浜北西線」、その全線が初めて公開されました。東名高速と横浜市街地を結ぶ新ルートとして、横浜だけでなく、東京湾を挟んだ千葉からも期待が寄せられているそうです。

港北から青葉まで、初の全線公開

 首都高の新線「横浜北西線」が2020年3月22日(土)に開通します。これに先立ち1月24日(金)、報道陣に初めて全線が公開されました。

 横浜北西線(以下、北西線)は、首都高K7横浜北線と第三京浜が接続する横浜港北JCTから、東名高速に接続する横浜青葉JCTまでを結び、横浜の中心市街地と東名を直結する新ルートを形成します。今回は約7.1kmの全線を、横浜港北JCT付近、横浜北西トンネル、横浜青葉JCT付近の3区間に分けて紹介します。

横浜港北JCT


横浜港北JCTの全景(2020年1月24日、中島洋平撮影)。

 2017年3月に開通した横浜北線と、第三京浜が接続するJCTです。第三京浜の港北ICともつながっており、加えて首都高の横浜港北出入口も新設されます。高架のランプウェーが何層にも配置され、まるでとぐろを巻いているような構造をしており、高いところでは地上35mほどだそうです。首都高速道路と共同で事業を進めてきた横浜市道路局は次のように話します。

首都高と第三京浜の全方向へ行き来を可能にすべく、狭い敷地のなかでコンパクトにランプをまとめました。このために第三京浜の一般道からの流入路を付け替え、料金所をJCTの中心部分に移設しています」

 なお第三京浜の港北ICから入ると首都高には行けません。同様に、首都高の横浜港北入口から入った場合も同様に第三京浜へは行けないので注意が必要です。

トンネル内には「すべり台」

 北西線の大部分を占めるトンネルには、最新の避難設備が設けられています。

横浜北西トンネル

 全線7.1kmのうち約4.1kmを占めるのが、横浜北西トンネルです。横浜港北JCT付近の本線は上下2層の高架となっていますが、トンネルの手前で上下線が横方向へ平行に並び、そこから下り坂が続きます。トンネルの最深部は地下およそ66.5mだそうです。

 トンネル内は車道の下に緊急用の避難路が確保されており、火災などが発生した場合などには、50mから200mの間隔で設置された非常口から、煙の来ない避難路へすべり台で下りることができます。

 また、本線上はテレビカメラで24時間、死角なく監視されているとのことです。火災発生時に一般の人が使える消火器や消火栓を随所に備えているほか、監視所からの遠隔操作により、トンネル天井から霧状の水を放出して延焼を防ぐ設備なども備わっています。


横浜北西トンネル(2020年1月24日、中島洋平撮影)。

横浜青葉JCT

 横浜北西トンネルは鶴見川の直下から上り坂となり、トンネルを抜けたところで、東名方面へ向かう道と、一般道へ向かう道に分かれます。後者は地上30mほどの高さで東名の本線をまたいで、横浜青葉IC料金所へ通じています。ここは首都高と東名とで一般道の出入口が共用となっており、国道246号と接続します。

 その手前に位置する横浜青葉JCTも横浜港北JCTと同じく、東名と首都高の全方向で行き来が可能で、いくつものランプウェーが東名の本線をまたいでいます。

開通で保土ヶ谷バイパスの混雑緩和なるか 千葉からも期待の声

 前出のとおり北西線の開通により、横浜市街地と東名を結ぶ新ルートが形成され、現在この役割を実質的に1本で担っている保土ヶ谷バイパス(国道16号)から交通が転換される見込みです。東名から横浜港までの所要時間は現状、保土ヶ谷バイパス経由で40分から60分ほどかかっているところ、北西線の開通で約20分にまで短縮されるそうです。

「北西線は保土ヶ谷バイパスや周辺道路の混雑緩和だけでなく、横浜の街づくりにとって非常に重要な道路で、多方面から期待が寄せられています」(横浜市道路局)

 首都高速道路によると、横浜だけでなく、東京湾を挟んだ千葉の期待も大きいとのこと。房総半島から東京湾アクアラインを経由して東名に行きやすくなる、といった声があるそうです。

 北西線は当初、事業着手から開通まで10年を予定していたところを前倒しし、およそ8年で完成にこぎつけました。横浜市道路局によると、「ここにこういう道路を通すので立ち退いてください」という計画ありきではなく、道路の必要性から住民と議論し、ルートの選定にも住民の意見を交えながら事業を進めてきたそうです。その結果、用地買収もスムーズに進み、予定の前倒しが可能になったと振り返ります。


北西線と保土ヶ谷バイパスの位置(画像:首都高速道路)。

 なお、首都高の通行料金は現在、ETC利用の普通車で上限1320円に設定されていますが、東名と北西線を連続利用した場合に限り、これが最大1800円まで引き上げられます。

 というのも、既存の東名〜首都高3号渋谷線経由で東京都心へ向かうルートと比べ、北西線経由で横浜へ迂回して都心へ向かうルートのほうが、現行の上限料金ではトータルで安くなってしまうためです。これによる首都高の1号羽田線などへの影響が大きいとして、東名〜首都高3号渋谷線経由と同等の料金に調整されます。