「入管施設で4カ月も治療放置された」精巣がんで睾丸摘出のクルド人男性、国賠提訴
出入国在留管理庁の施設で収容中、睾丸の痛みを訴えたにもかかわらず、治療を受けさせてもらなかったとして、トルコ国籍のクルド人男性、ムスタファさん(26歳・埼玉県)が11月26日、国家賠償法に基づいて、国を相手取り、約833万円の損害賠償をもとめる訴訟を東京地裁に起こした。
ムスタファさんは、一時的に身柄をとかれる「仮放免」中のことし9月、精巣腫瘍の診断を受けて、右精巣を摘出した。提訴後、ムスタファさんと代理人が東京・霞が関の司法記者クラブで会見を開いた。ムスタファさんは「とても悲しかった」「(入管の対応は)ひどすぎる」と語った。
訴状などによると、ムスタファさんは2012年2月、来日した。2016年5月、30万円の罰金刑を受けて、東京入国管理局(現:東京出入国在留管理局)に収容された。しばらくして、東日本センター(茨城県牛久市)に移された。
ムスタファさんは睾丸に強い痛みを抱いて、ことし5月、東日本センターの医師に診てもらったところ、「病名不明なので、外の病院に行かせる」と言われた。しかし、そのまま放置されたという。
長引く収容からの解放をもとめて、8月から食事をとらないハンガーストライキをはじめて、9月5日に仮放免が許可された。病院で右精巣腫瘍(がん)と診断されて、すぐに摘出手術を受けた。
ムスタファさん側は、(1)4カ月近くも適切な診断にもとづく治療を受けさせてもらえず、苦痛が続いた、(2)放置されたことによって、がんが進行して、精巣を摘出せざるをえなくなった、(3)がんの進行・転移の危険の放置を強いられていた――と主張している。