フランスのバハマヒナ(右)にレッドカードを出すジャコ・ヘイパー主審【写真:Getty Images】

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元ワラビーズ選手がペイパー主審をかばう理由は

 ラグビーワールドカップ(W杯)日本大会で主審の試合後の振る舞いが物議を醸している。20日に行われた準々決勝ウェールズ戦でフランスのバハマヒナが相手選手に“顔面肘打ち”を食らわせ、一発退場に。ジャッジを下した南アフリカ人主審が試合後にウェールズファンと一緒に“肘打ちポーズ”をする写真が流出し炎上している。準決勝の担当の対象外となったが、元オーストラリア代表はこの処分に出た主催者側を「オーバーリアクション」「愚かだ」と厳しく批判している。

 1枚の写真がラグビー界で波紋を広げている。仏放送局「Le Figaro」のアルノー・コーディ記者が自身のツイッターで公開したのは、赤のウェールズジャージをまとった一団。ビール片手に上機嫌の面々の中、黒のポロシャツを着た男性が右肘を上げ、隣のウェールズファンの顎にエルボーを入れるようなポーズ。満面の笑みを浮かべていたのは、試合を裁いた南アフリカ人のジャコ・ペイパー主審だった。

 後半9分にフランスのバハマヒナがウェールズ選手の顔面に食らわせた肘打ちを揶揄したようなポーズが流出後、炎上騒動となっているペイパー主審を、主催者のワールド・ラグビーは準決勝の担当から外すことを発表した。

 一枚の写真がきっかけとなり、大炎上した南アフリカ人主審。だが、4強戦の担当から外した主催者側に対しても批判が飛び出した

「揚げ足を取るポリスが勝利したことで、元ワラビーズが世界ラグビーを愚か者と糾弾」と特集したのは米放送局FOXスポーツ・オーストラリア版だった。

 記事によると、元オーストラリア代表のスティーブン・ホイルズ氏は「ジャコ・ペイパーを主審として好きかどうかではなく、これは完全に見当違いだ」と主催者側の決定に批判的だという。

「彼はワールドカップでいい仕事をしていたが、準決勝で担当から外れた。ワールドラグビーがどう反応したかといえば、試合後の行動が理由で、担当から外れたと言っている。ジャコ・ペイパーはあの写真を撮るために誰かにハラスメントをしたわけでもなければ、7、8人のウェールズファンを追い回していないことを、誰もが理解していない。彼らが撮影を依頼したのだろう」

ほかの元選手も同調「選手なら解任されることはない」

 ピッチ上で好ジャッジを見せていた南ア人主審が、ピッチ外で羽目を外したことに対する結末に、ホイルズ氏は同情的だった。

「不運にも、揚げ足を取る人間たちが、またも抹殺に取り掛かることとなった。これが今の現実世界だ。頼むから、人間らしさというものを持たせてもいいんじゃないか。レフェリーにだってワールドカップをエンジョイさせてもいいだろう」

 渦中の主審を終始擁護していたホイルズ氏は「担当外しとなれば、誰もが、これが彼のワールドカップと記憶することになる。ワールドラグビーのトップのオーバーリアクションに過ぎない」と指摘していた。

 同じく元オーストラリア代表のドリュー・ミッチェル氏も同調したという。

「レフェリーと選手にも同じスタンダードを設ける必要がある。例えば、選手が街に繰り出して、夜少しのことがあっても、解任されることはない。確かに見栄えは悪いけれど、それで外されることはない。ソーシャルメディアでの騒動が逆効果に働いた。そして、準決勝を犠牲にしてしまった。彼を外して、副審も託さないというのは、性急なリアクションだと思う」

 肘打ち写真で一躍、クローズアップされてしまったペイパー氏。“準決勝出場停止”という処分については、各方面から様々な声が上がっている。(THE ANSWER編集部)