愛する男のために、なりふりかまわない行動をとる女性――。そんな鬼気迫る役を、新ドラマで演じるのが高岡早紀(46)だ。一時はつらくてやめそうになったという「女優」という仕事を、今でもやめられない理由とは。

「私のまわりにリカみたいな女性がいたら、近寄りたくないし、まったく関わり合いたくないです(笑)」

 10月5日スタートの大人の土ドラ『リカ』(東海テレビ・フジテレビ系)で主演を務める高岡は、自らが演じる主人公「雨宮リカ」という人物についてこう話す。

 第2回ホラーサスペンス大賞を受賞した五十嵐貴久のベストセラー『リカ』シリーズを原作として、2部構成でドラマ化。第1部では、病院に勤務する看護師のリカが、愛する医師の大矢昌史(小池徹平)を手に入れるため、手段を選ばない恐怖のストーカーと化していく……。

「本当に、どう理解していいのかわからない人間で……。どこかしら共感できる部分を見つけていかないと、役を演じられなかったりするものなんですけど、その共感できる部分がないんです。

 それで、なかなかリカという人物が私の中に入ってこなくて、どこから取り組めばいいのか、すごく時間がかかりました」

 そんな「難役」を、高岡は最終的に、どのように解釈したのだろうか?

「ひと言で言うと『純愛モンスター』。打ち合わせのときにこの言葉が出てきて、すごく腑に落ちました。相手に対する思いが、すっごくピュアで、まっすぐでしかないんです。愛する人しか見えていないので、そのまわりの邪魔者には消えていただくという……。

 でも誰にでも、愛する人のためならなんでもしてあげたい、という気持ちはあると思うんです。そこは唯一、共感できる部分なので、その気持ちを拾いながら、演じています」

 そう聞くと、ドラマも息詰まるシーンの連続のように思えるが、本誌が撮影現場に密着した日は、意外にもほのぼのとしたシーンの撮影が続いた。高岡も「こんなシーン、今日だけかも」と笑いながら、撮影に臨んでいた。

「男性にとって、リカは絶対に出会いたくないタイプの女性でしょう。でも、その怖さが病みつきになるような作品になると思うので、『怖い、怖い』と思いながら『次も、次も……』って、観てもらえれば」

「近寄りたくない」と感じるような女性を、演じようと思った理由は?

「子供たちが小さかったころは、避けている役もありましたが、大きくなった今は、そういう壁を取り除いていこう、という気持ちになりました。女優としてやらせていただけるものは、なんでもやっていきたいです。ある程度の年齢になってきて、女優としての自由度が広がったということですね」

 デビューして約30年。これまでいろいろな役を演じてきた。「女優」という言葉をとても大切そうに話す彼女にとって、ターニングポイントになった作品は?

「映画でいうと『忠臣蔵外伝 四谷怪談』(1994年、深作欣二監督)ですね。あの作品でお岩の役をやらせていただいて、たくさんの賞をいただいて。自分の中で『女優になろう』と決めた作品でした」

 それまで、演技だけでなく歌手やラジオパーソナリティなど、アイドル的な人気から、さまざまなジャンルに仕事を広げていた。「自分でも、肩書がなんなのかわからなくなっちゃうときがあって」という状況のなかで『四谷怪談』の仕事が舞い込んできた。

「『四谷怪談』は、とてもきつい作品でした。『きつすぎて、やっていられない、撮影が終わったら仕事をやめよう』くらいに思っていたんです」

 ところが、撮影の最後に、意外な言葉が待っていた。

「ラストシーンを撮ったあと、深作監督が『おつかれさん。女優って楽しいだろ?』っておっしゃったんです。

 本当に思いがけない言葉だったんですが、おかげで『女優って楽しいんだ』って、目覚めさせていただきました。『今日は女優、明日は歌手』ではなく『女優・高岡早紀』と言われるようになりたいなって」

 それから25年。彼女の肩書を聞けば、誰もが「女優」と答えるようになった。

「女優は、つねにいろいろな役をやり続けて、終わりがありません。そして、二度と同じことはありません。『いくら追求しても底がないな……』と、難しく考えることもありますが、結局は女優という職業が好きなんです。だから、やめられないんです(笑)」

たかおかさき
46歳 1972年12月3日生まれ 神奈川県出身 1988年、雑誌『セブンティーン』(集英社)のモデルとしてデビュー。『忠臣蔵外伝 四谷怪談』では、日本アカデミー賞最優秀主演女優賞などを受賞。映画『長い散歩』(2006年、奥田瑛二監督)、『深夜食堂』(2015年、松岡錠司監督)のほか、ドラマ、舞台など出演作多数。現在、「肌ナチュール」のCMに出演中

※大人の土ドラ『リカ』は、毎週土曜日午後11時40分より、東海テレビ・フジテレビ系で放送

(週刊FLASH 2019年10月15日号)