発達途中の胎児では「トカゲが持つ筋肉」が一時的に発生していることが判明
by Bgmfotografia
人間は長い進化を経て誕生した動物であり、人体には進化の過程で役割を失った器官の名残が存在していることもわかっています。アメリカ・ハワード大学の研究者らは、人間の胎児は「トカゲなどに存在する筋肉」が一時的に発生するものの、生まれる前に消えてしまうことを発見しました。
Development of human limb muscles based on whole-mount immunostaining and the links between ontogeny and evolution | Development
Tiny 'Lizard-Like' Muscles Found in Developing Embryos Vanish Before Birth | Live Science
https://www.livescience.com/disappearing-muscles-human-embryo.html
Human Fetuses Develop Lizard-Like Body Parts That Disappear Before Birth
https://gizmodo.com/human-fetuses-develop-lizard-like-body-parts-that-disap-1838679203
ハワード大学の進化生物学者であるRui Diogo氏らの研究チームは、フランス・パリ第6大学の神経学者であり発達生物学者でもあるAlain Chédotal氏らが作成した、人間の胚と胎児の3Dスキャンデータベースを分析しました。その結果、子宮内で発達中の胎児では手足に本来は必要ない筋肉が発生していることがわかったとのこと。
Diogo氏らの研究チームは、妊娠7週間〜13週間の胎児についての画像を用いて、発生初期の詳細な手足の筋肉について分析。研究チームによると、妊娠7週間ごろの胎児の手足ではそれぞれ30ほどの筋肉が含まれていたそうですが、6週間後の妊娠13週目になると、その数は20まで減少していました。
たとえば妊娠10週目ごろの胎児の手には、「dorsometacarpales(背側中手筋)」と呼ばれる筋肉が発達していると研究チームは指摘。以下の画像で示されているのが背側中手筋であり、トカゲやサンショウウオなどにみられる筋肉です。しかし、人間において背側中手筋は他の筋肉と融合するか、収縮して出生前には消えてしまうそうです。
は虫類と哺乳類の祖先は共通していますが、人間において背側中手筋が発達しなくなったのは、2億5000万年以上前のことであるとDiogo氏は指摘。このように、進化の過程で退化してしまった器官の名残がみられる例はいくつか発見されており、人間には耳を動かす筋肉が残っていたり、妊娠4週目の胎児には尻尾があることも確認されています。
発生途中で消失した筋肉のほとんどは妊娠7週目の時点で他の筋肉と融合したり収縮し始めたりしていたそうですが、一部の筋肉は妊娠11週目ごろまで残っており、「胎児の発達途中に見える進化の名残としては驚くほど遅くまで見られます」と、Diogo氏は述べました。
研究チームによると、本来は胎児のうちに消失するはずの筋肉が、まれに成人になるまで残っているケースもあるとのこと。残り続けた筋肉はほとんどの場合は気づかれることがなく、問題も引き起こさない代わりに、他人より手足の動きが滑らかになるといった利点もないそうです。こうした筋肉が残っている人にはダウン症やエドワーズ症候群の人が多いそうで、研究チームは子宮内での発達が遅くなったり停止したりすることが、本来消えるはずの筋肉が残る原因ではないかと考えています。
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Diogo氏は今後も胎児の3Dスキャンデータベースを利用して、人間の頭部や動脈、神経が子宮内でどのように発達するのかを研究する予定とのこと。胎児の発生過程について明らかにすることは、人類の進化史を詳細に理解するだけでなく、医療専門家が皮膚の下の構造を性格に予測する役にも立つ可能性があると、Diogo氏は示唆しました。