ジュビロ磐田が新監督を発表した。

 今シーズンは残留圏が遠い。

 17節終了時点で名波浩監督が辞任した際は、16位のサガン鳥栖、17位の松本山雅FCと勝点2差で最下位に沈んでいた。順位はともかく勝点に着目すれば、まだまだ巻き返しは可能だった。15位の湘南ベルマーレとも勝点3差、14位の清水エスパルスとも勝点5差だった。連勝すれば降格圏から抜け出せる範囲で、どうにか踏ん張っていた。

 そこから鈴木秀人監督が指揮を執ったが、5試合で1勝4敗と浮上のきっかけをつかめない。小林稔ヘッドコーチが暫定的に指揮した直近の23節を終えた段階での順位は、名波監督の辞任時と同じ最下位である。17位の松本との勝点差は「2」のままだが、16位の鳥栖には勝点差を「6」まで広げられた。15位のヴィッセル神戸とは勝点差8、14位のベガルタ仙台とは勝点差9である。

 J2降格圏から何としても脱出し、プレーオフ出場圏の16位へ這い上がる。そのうえで残留圏へ浮上していくのが、残り11試合での現実的な目標になるのだろう。

 鈴木前監督が体調不良を訴えただけに、新監督の招聘は避けられなかったと考えられる。いち早くチームを立て直すには、クラブの事情に詳しい人材が望まれ、少なくとも日本サッカーを知る人材がふさわしいはずだが、このタイミングで監督を引き受けるのは誰にとっても難しい。

 外国人監督は、リスクも大きいが強烈なカンフル剤にも成り得る。日本サッカーに明るくなくとも、まっさらな思考でチームの再建に着手できるのはプラス材料だ。

 新監督として発表されたスペイン人のフェルナンド・フベロは、指導歴を積み上げたパラグアイでオリンピアやセロ・ポルテーニョといった名門を、さらには近年成功を収めているリベルタの監督も務めている。指導者としてのキャリアから判断する限り、現在のジュビロとは違う立場のクラブで采配をふるってきたと言うことができる。だからといって、ジュビロにふさわしくないと言うつもりはない。

 気になるのは今シーズン後だ。

 ジュビロが8月19日にリリースした情報では、フベロ新監督との契約期間が明らかにされていない。まずはとにかく残留へ導いてもらうための招聘と考えるのが妥当だが、どんなサッカーをするのかがつかみきれていない監督である。パラグアイでの指導歴が参考になるとしても、リーグも、クラブの違うのだ。いまはまだ未知数の存在であり、それだけに評価が難しい。

 つまりこういうことである。

 残り11試合で残留を果たした。もしくはそれ以上の成績を残した。しかし、新監督のサッカーがクラブ、選手、ファン・サポーターに馴染まなかった──。

 逆のパターンも有り得る。クラブ、選手、ファン・サポーターに支持されるサッカーをしたものの、残念ながら残留を勝ち取れなかった──。

 クラブのレジェンドであり、クラブ愛に溢れる名波監督とともに、14年シーズン途中から過ごしてきた直後である。彼に見劣りしない後任を探すのは、そもそも簡単でない。同じくOBでもある鈴木監督の昇格は、継続性を担保する意味でも正しい選択だった。

 いずれにせよ、短期的な結果(J1残留)と中長期的な結果を両にらみで進めていく大切さと難しさを、今シーズンのジュビロは教えてくれている。いまはとにかく、フベロ新監督の手腕に期待するしかないだろう。