デサント「2度の失敗」から学ぶ、ブランディングの意味と成功法
ロゴマークを見ただけで「ああ、あの会社ね」と思い浮かべることができる…。いわゆるブランディングと呼ばれるものですが、中小企業や小売店がお金をかけずに成功させる手立てはないものでしょうか。今回の無料メルマガ『がんばれスポーツショップ。業績向上、100のツボ!』では著者の梅本泰則さんが、そんな方法を紹介しています。
お店のブランディングをする方法
ここのところ、デサントのTOBの記事が目につきました。3月26日の朝日新聞には、
(デサントは)一つのブランドに頼って失敗した。2度の教訓が生かされていない。
とあります。2度の教訓とは、マンシングウエアとアディダスのことを言っているのでしょう。
マンシングは、1970年代のゴルフブームに乗って、一世を風靡しました。それが、やがて在庫が過剰になったこともあって、経営が行き詰ったように記憶しています。また、アディダスを日本で育てたのは、販売代理権を持っていたデサントです。ところが、1998年にアディダス社との契約が打ち切られます。その後、デサントの経営が悪化しました。これが、2度の教訓です。
実は、海外ブランドの契約は、こういうものです。自社ブランドでない限り、いくら売っても販売代理店の自由にはなりません。ですから、デサントは2度の教訓を経て、デサントブランドの販売に力を入れました。日本ではなかなか成果が出ませんでしたが、韓国で花が開いたのです。これは、デサントの業績を押し上げている一つの要因になっています。
株主の伊藤忠商事は、それを一本足打法と言って改善を求めました。韓国だけではなく、日本はもとよりグローバルに展開する戦略をとって欲しいということでしょう。
このことだけを見ても、ブランド戦略というのは実に難しいものです。そこで、ブランドというのはどんな性格を持っているのか、そしてブランドを育てるにはどうしたらいいか、考えてみましょう。
ブランディングの意味
ブランドというのは、そもそも他との区別をするためのものです。牛の焼印から始まったことでも、その意味がわかります。ブランドは、その名前を聞いただけでどんな商品やサービスかを思い浮かべることができるものです。
また、そのマークを見ただけでブランドの名前が言えてしまいます。例えば、マクドナルド、コカ・コーラ、ルイ・ヴィトンなどを考えればいいです。小売業でも、ユニクロやセブンイレブンのマークをみれば誰でも分かります。スポーツ用品でいえば、ナイキやアディダスはそうでしょう。
では、こうしたブランドから消費者は何を思い浮かべるのでしょう。商品やサービスだけではありません。その時同時に、商品やサービスの品質をイメージしています。また、信用できるかどうか、安心できるかどうかという判断もしているでしょう。さらには、会社の考え方や、そこに働く人たちをイメージすることだってあるかもしれません。
このような消費者のイメージを作り上げるのがブランディングです。とはいえ、このブランディングは一朝一夕にできるものではありません。長い時間をかけて作り上げられてきたものです。スポーツ用品のブランディングに、メーカーさんは頑張って努力しています。それでも、うまく成功しているところばかりではありません。
では、スポーツショップはどうでしょう。うまくブランディングができているでしょうか。大手のスポーツチェーンは、TVコマーシャルや新聞広告で店名やロゴマークを覚えてもおらうと努力をしています。それでも十分ではありません。私の周りの人に店名やマークを見てもらっても、とんと分からない人も多いのです。
そんな中で、あなたのお店はどうでしょう。ブランディングは出来ているでしょうか。もちろん、現在お店に来ていただいているお客様にはブランディングができていることでしょう。では、あなたの地域を対象にしたときはどうですか。あなたのお店のことを知っている人がどれくらいいるでしょう。お店の名前を知っていても、どんなお店なのか知らない人もいるかもしれません。これでは、ブランディングが出来ているとは言いにくいです。
今からでも遅くはありません。ブランディングをしてみましょう。
スポーツショップのブランディング
どうしたらブランディングができるでしょう。決してむつかしいことではありません。お店の名前やロゴマークをお客さまに繰り返し伝えればいいのです。そのため、お客さまにアクセスできる方法は全部使います。ただし、TVや新聞広告は費用が掛かりますのでやめておきましょう。
今の時代は、大した費用を掛けずにお客様にアクセスできる方法があります。フェイスブック、ツイッター、ラインといったSNSは当たり前です。ブログ、メールマガジン、ニュースレターといったツールも総動員します。時には、手紙やチラシを使っても良いです。繰り返しお客様に届けることが大切になります。
そして、その内容も重要です。どんな商品を扱っているかを知らせるのは当然として、店主がどんな考え方を持っているか、お店にはどんなモットーがあるか、どんな人たちが働いているかといった情報を繰り返し表現を変えながら伝えましょう。それが、お店の品質や信頼、安心感にもつながっていきます。知名度の高いブランドは、長年そうした努力を重ねてきたのです。
一方、そのブランドも、ちょっとした事件で一気に信用をなくします。ですから、そのブランドを守るのに必死です。お店のブランディングも同じことでしょう。お客様にお店のことをしっかり伝えて、いいイメージを持ち続けてもらうように努力しなくてはいけません。
もちろん、伝えるイメージと実際が違ってはダメです。そのためには、社員全員にブランディングについて理解をしてもらいましょう。デサントの問題から、そんなことを考えました。
■今日のツボ■
ブランドは、他との区別をするためにあるお店のブランディングは難しくはないお客様にアクセスして、お店のことを伝え続けることであるimage by: Shutterstock.com
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