先日行われた4半期決算発表の席で、今後はiPhoneの販売台数を非公表にすると「宣言」したAppleのルカ・マエストリCFO。同社はなぜこのような決断を下したのでしょうか。今回のメルマガ『週刊 Life is beautiful』では著者で世界的エンジニアの中島聡さんが、この宣言の裏にあるApple経営陣のメッセージと、「iPhone後」の同社に最も期待する次期デバイスについて記しています。

私の目に止まった記事

● Apple shares fall as latest iPhone undersells

Appleが4半期の決算を発表しましたが、売上や利益が順調に伸びているわりに(1年前と比べて売上で20%、一株利益が61%上昇)、iPhoneの販売台数の伸びが鈍化していることを受けて、株価が下がりました。特に今回は、Appleが「今後はiPhoneの販売台数を発表しない」と宣言したのですが、それをウォール・ストリートは極端に嫌っているようです。

iPhoneの販売台数が伸び悩んでいるのは、先進国でのスマートフォン市場が飽和状態になっているためで、販売台数を増やすのが目的ならば、値段を下げて中国やインドで売りまくるしかないのですが、今回の「今後はiPhoneの販売台数を発表しない」という宣言は、その戦略は取らない、という経営陣からの明確なメッセージです。iPhoneの販売台数を発表し続ける限りは、ウォール・ストリートはそれを重視して業績を評価するし、そうなると経営陣もその数字を強く意識して経営をしなければならないからです。

今回の発表を見る限り、Appleの経営陣が、今後の成長はサービスやiPhone以外のデバイスにあると見ていることは間違いありません。サービスの売り上げは順調に伸びており(前年比で27%伸びて$10billion)、iPad、Apple Watch、Apple TV、AirPodなどにもまだまだ伸びる余地があります。

最も伸び代が大きいのは、来年にもスタートすると言われている映像のストリーミングサービスですが、ここはNetflixとAmazonという非常に強いライバルがいるので、簡単ではないと思います。この世界は、結局はコンテンツの力なので、Appleがコンテンツビジネスにそこまでコミットするのが会社の方向性として正しいのか、私には疑問です。

個人的に私が最も期待しているのは、AR専用のデバイスです。iPhoneのアクセサリにすべきなのか、単体で使えるデバイスにすべきなのかは判断が難しいところですが、レーザーで網膜に直接映像を映し出すようなタイプのARグラスがAppleから発売されれば、それに向けたアプリケーションはぜひとも作りたいと考えています。

私の目に止まった記事2

● 経団連会長の執務室、ついにPC導入。中西会長「正直、無いのは驚いた」 事務方「対面が基本だから…」

「経団連についにパソコンが導入された」という記事が日経新聞に掲載されて以来、「今頃パソコンを導入するのか」という批判がネット上でされています。

考えてみれば、パソコンが世の中に広まり出したのは、20年ほど前なので、今の経団連の重鎮達は既に40代後半から50歳過ぎだった訳です。その年齢になると、新しいことを学ぶのも億劫になってくるし、それまで長年使ってきたビジネス手法(電話、ミーティング、会食など)以外のところで勝負をしても良いことはありません。

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