核軍縮を表す「ピースマーク」に込められたもう一つの意味とは?
ピースマークは「Nuclear Disarmament(核軍縮)」を意味しており、平和運動や反戦運動のシンボルとして使用されてきました。このシンボルをデザインしたジェラルド・ホルトム氏によると、このマークにもう一つの意味を込めていたそうですが、実際に使われたことは、ほとんどなかったとのこと。もう一つの意味とは何なのか、CNNがその意味に迫っています。
A brief history of the peace symbol - CNN Style
アメリカとソ連が核開発を進め、核兵器開発競争真っただ中にあった時、1952年にイギリスが開発競争に参戦しました。1957年になると、度重なるイギリスの核実験に対して、多くのイギリス国民が反発するようになり、反核運動団体である核軍縮キャンペーンを設立。翌年の1958年には、同団体が抗議活動を実施しました。このとき、核軍縮キャンペーンが掲げていたマークが「ピースマーク」でした。
ピースマークは手旗信号の「N」と「D」の文字を重ねたデザインとなっていて、「N」は「Nuclear(核)」、「D」は「Disarmament(軍縮)」の頭文字を表し、「核軍縮」を訴えるものとなっています。
このマークの歴史に詳しいケン・コルズバン氏はデザインのシンプルさから「5歳児でも描けて、人々をたきつけることもできる非常に強力なデザインだ」と絶賛しています。同氏によると、核軍縮キャンペーンでピースマークが使われたあと、世界中の抗議活動でこのマークを使用するようになったそうです。
しかし、ピースマークが世界中で使用されるときには、本来の意味の「核軍縮」ではなく、アメリカで行われたベトナム戦争の抗議運動のように、反戦運動や平和運動のシンボルマークとなっていました。コルズバン氏は「ほとんどの人は核軍縮を意味していることを知らなかったのでしょう。人によってはメルセデス・ベンツのマークを付けていた人もいましたからね」と語っています。
コルズバン氏によると、「ホルトム氏はピースマークの逆さまバージョンが好きだった」と語り、ピースマークは逆さまにしたときにも別の意味を持っているとのこと。マークを逆さまにすると、手旗信号の「N」の文字が「U」に変わり、「Unilateral Disarmament(一方的な軍縮)」を意味するそうです。つまり、ホルトム氏がデザインしたピースマークには核軍縮だけではなく、本当に「平和」や「反戦」の願いも込められていたのです。
しかし、核軍縮を意味したピースマークの印象が強すぎたせいか、平和運動を意図した「ピースマークの逆さまバージョン」は、ほとんど使われることがなかったそうです。