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●利用時間管理の意味

アップルが6月4日から8日(現地時間)まで開催した開発者向けイベント「WWDC 2018」では、iOSなどソフトウェアに関する最新機能が紹介された。その中でも目立たない新機能として登場したのが、iPhoneの利用時間を制限する機能だ。

本来であればアップルは、iPhoneの利用時間を伸ばすことで利益を得られるはずだ。なぜ、それに反するかのような制限を加えたのだろうか。

iPhoneの利用時間を制限

スマホは日々の生活に欠かせないとはいえ、就寝中など使いたくない場面もある。すでにiOSは「おやすみモード」を搭載しており、夜中に着信音や通知音で起こされることがないよう設定できる。

だが音は鳴らなくとも、スマホのロック画面の通知に気がつくと、夜中でもついつい見てしまう。そこで次期バージョンのiOS 12では、就寝中のロック画面への通知も抑制できるようになった。

さらに、日中の利用時間を管理できる機能が「Screen Time」だ。アプリの利用時間をあらかじめ決めておき、制限することが可能。どのようなアプリを何分間利用したか、レポートを作成する機能も追加される。

その目的は、親が子どものスマホ利用を制限する「ペアレンタルコントロール」にある。すでにiPhoneには、子どもが利用できるアプリやWebサイトに制限をかける機能がある。利用時間の制限やレポート作成は、この機能を強化したものといえる。

●スマホの使いすぎは逆効果か

アップルがiPhoneの利用時間を制限せざるを得なくなった背景には、子どものスマホ利用の拡大に比例するかのように、親世代の不安も増えている現実があるとみられる。

MMD研究所が2018年1月に実施した調査では、6割以上の親が子どもにスマホを持たせることに不安を覚えており、端末内のアクセス制限や機能制限を利用したい親は4割、閲覧やアクセス履歴をチェックしたい親は約25%との結果になったという。

スマホゲームによっては連続してプレイするには「課金」が必要なものもあるが、小中学生のプレイヤーも多い人気ゲーム「荒野行動」のように際限なくプレイできるものも多く、YouTubeやSNSの利用にも制限時間はない。

国内大手キャリアはさまざまな子ども向け施策を打ち出しているが、一般にiPhoneはアップル以外がソフトウェアに手を加えることが難しい。iPhone用の見守り機能を提供するトーンモバイルの場合は、SIMカードと交換機を連携した独自の仕組みで実現している。

これに対して、今回はアップル標準の機能としてiPhoneの管理機能が追加された形だ。もともと国内では若年層の間でiPhoneのシェアが高かったが、子どもとスマホの距離感に頭を悩ませる親世代にとって、ますますiPhoneを選択する機会が増えそうだ。

これまでアップルはiPhoneの売上台数を伸ばし、便利で面白いアプリやゲームを充実させる方向に突き進んできた。だが、子どものスマホ利用が社会問題になれば、国内で最もシェアが高いiPhoneに矛先が向く恐れがある。

社会的責任という観点からも、iPhoneの使いすぎにブレーキをかけることが長期的な利益につながるというのがアップルの判断だろう。