新世界と通天閣,大阪(Jordi Marsolさん撮影、Flickrより)

駅の発車メロディというのはなぜか気になるものだ。ドアが閉まるタイミングで聴こえてくるメロディに、思わず耳を傾けてしまうこともあるものだ。

大阪環状線には、全19駅それぞれに発車メロディが用意されているというが、新今宮駅でドヴォルザークの「新世界より」が採用されていることが、近ごろまた話題となっている。

周りの駅は「やっぱ好きやねん」、「あの鐘を鳴らすのはあなた」......


大阪環状線323系電車(Jr223~commonswikiさん撮影、Wikimedia Commonsより)

大阪環状線全駅の発車メロディが決まったのは、2015年3月。JR西日本のニュースリリースで告知された。

JR西日本ウェブサイト内の「全駅で異なる発車メロディを導入!」というページには、各駅とその選曲の理由が紹介されている。「その駅(まち)らしさ」「大阪環状線らしさ」「大阪らしさ」をテーマに、駅ごとに異なる発車メロディを採用したという。


大阪環状線改造プロジェクト告知ページより

「大阪らしさ」がテーマだけに、大阪出身アーティストの曲が多いようだ。その例をいくつか見てみると......。

大阪駅は「やっぱ好きやねん」。故やしきたかじんさんの代表曲だ。亡くなられてから4カ月後の2014年5月に導入されたそうだが、当時は大きな話題になったという。

天満駅は大阪出身のaikoさんの「花火」だ。aikoさんが天神祭の花火をイメージしながら作った、思い出の曲だ。発車メロディの制作の際には、「花火」に天神祭の「チンチキチン♪」というお囃子のリズムを重ねるアレンジを加えているという。

桜ノ宮駅はやはり大阪出身・大塚愛さんの2004年のスマッシュヒット「さくらんぼ」だ。「さくらんぼ♪」の歌詞が含まれるサビの最後を使ったアレンジで、発車メロディが作られたという。

桃谷駅は故河島英五さんの傑作「酒と泪と男と女」だ。河島さんは桃谷駅近くで生まれ、ライブハウスも経営されていたとのこと。

天王寺駅は「あの鐘を鳴らすのはあなた」、あの大御所・和田アキ子さんの名曲である。四天王寺の鐘にちなんで選ばれた。お寺の鐘ではない鐘の音が、発車メロディの中で響き渡るそうだ。もちろん和田アキ子さんも大阪市生まれ。

「通天閣界隈のこと言うとるんとちゃうねんで!!」「ギャップに笑うわ」

新世界(Petr Meissnerさん撮影、Flickrより)

大阪出身者の曲がずらりと並ぶ大阪環状線の中で、異色といえば異色なのが新今宮駅だ。「選曲センスには目を見張らざるを得ない」と驚かれる、その訳は?

JR西日本の特設ページでは、新今宮駅については、「交響曲第9番『新世界』より(ドヴォルザーク)」として、次のように解説されている。

「通天閣でおなじみの大阪の観光地『新世界』。実は初代通天閣は、フランスの凱旋門とエッフェル塔を合わせた形をしていて、あの界隈をパリを意識して開発する構想があったとかなかったとか......。ですので、『オー・シャンゼリゼ』も発車メロディの候補曲のひとつに挙がりました。ただ...、皆さんから鋭いツッコミをいただきそう、ということでドヴォルザークの「新世界より」。いい距離感なのではないでしょうか。うん、うん」

「オー・シャンゼリゼ」はともかく、ドヴォルザークの「新世界」の方も、相当に強烈なボケで、新たなツッコミを期待しているようでもある。大阪らしいといえば、大阪らしい。

案の定、こんなツッコミが寄せられている。


大阪環状線発車発車メロディ採用曲と選定理由(大阪環状線改造プロジェクト告知ページより)

また、他の駅のメロディも相当に気になるようで......、

鶴橋駅の「ヨーデル食べ放題」(桂雀三郎withまんぷくブラザース)も捨てがたい、といった感想もある。玉造駅のメリーさんの羊と、故中島らもさんの代表作「白いメリーさん」に言及する人もいて、なかなか奥が深そうだ。

「一覧で見せられると、全部聞きに行きたくなりますな」というコメントもあった。JR西日本の狙いは一応成功しているようだ。