平日の昼間、Jタウンネット編集部近くに設置されているテレビから「トヨナガ」と連呼するCMが流れていた。いつもならそのままスルーしてしまうところなのだが、記者はちょっと気になってしまった。「大阪の『豊中』の聞き間違いか?」と考えながら調べてみると、出てきたのは自動車販売・買取りなどを手掛ける群馬県の企業「トヨナガ」だった。

「なーんだ、そうか」で終わってしまうところだが、ちょっと待ってほしい。編集部の所在地は東京都千代田区だ。家人に話すと「そういえば見たことある」とのことで、杉並区でも目撃されていることになる。

詳しく見てみると、トヨナガの店舗は群馬県内にしか存在しておらず、都内はもちろん埼玉にも存在しない。広域に流通している消費財ならともかく、自動車の買取としては結構遠くないか。


青と黄色が眩しい(画像はトヨナガのサイトより)

都内も商圏に含まれているから

記者や家人が幻覚を見ている可能性もあるので、ツイッターを調べてみると、2017年からTBSでトヨナガのCMをやっているとの声が頻繁に挙がっていた。

群馬出身者にはなじみのある企業のようで、「以前はFMぐんまでよくCMが流れていた」と懐かしがる声があったが、「群馬でのみ展開しているのになぜ」と、記者と同じような疑問の声も。


店舗の場所などは一切紹介されないCM(画像はトヨナガのサイト上で公開されている動画より)

考え始めるととても気になってしまう。都内でもCMを流している何か深い理由はあるのだろうか。Jタウンネット編集部は2018年5月31日、トヨナガに取材して確認することにした。都内CMはやはり広域展開の前触れなのか、あるいは何か別に意図があるのか。

「特に意図はありません。店舗展開は群馬のみですが、商圏としては都内も含まれると考えており、都内でもCMを放送しています。今はネットを通じてご利用いただくこともできますし、東京か群馬かというのは関係ないと考えています」

実際に都内からの利用者もいるとのことで、記者が思っているよりも群馬と東京は近いようだ。確かに、車で行き来できる距離ではあるし、広域で考えれば同じ商圏ではある。

CMを見直してみると、特に群馬に店舗があるといったことは謳っていない。親子がトヨナガ店舗前で楽しそうにはしゃいでいて、スタッフやアフターサービスの良さをアピールしているだけだ。

ところで、調べているともうひとつ気になることがある。群馬県民と思われる人たちのツイートをよく見ると「トヨナガといえば飛行機」という話が出てくるのだ。

どうもセスナ機を使った、いわゆる「飛行宣伝」をしているようで、売り出しを知らせる放送音源が上空から流れてくるとか。「トヨナガ」「セスナ」というキーワードをつぶやいている人は、確実に群馬県民とする声まであった。

この件についてもトヨナガの担当者に聞いてみると、「休日や週末にのみ、県内の店舗のあるエリアで飛行宣伝をしている」とのこと。かなり昔からおこなわれてきたようだが、当時の担当者や記録が残っておらず、なぜ飛行宣伝を始めたのかはわからないという。

ちなみに、Jタウンネットに群馬情報を度々提供してもらっている館林市在住の20代男性Sさんに「トヨナガとセスナってわかりますか」と確認したところ、「まったく知らない」とのこと。これは、同社の店舗が館林市には展開していないためだろう。

遠いようで近く、近いようで遠い。東京と群馬のほのかな距離感を感じるCMだった。