野町 直弘 / 株式会社クニエ

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開発購買についてここまで3回に亘って述べてきました。
第1回では開発購買が上手くいかない理由について、第2回第3回では多くの企業で上手く機能していない開発購買が上手くいっている事例について取上げています。

第2回、3回で取上げた成功事例で共通するのは「主語を作る」ということ。

開発購買の定義は「開発(段階での)購買(活動)」です。
第2回では購買部門の属人的な活動と企業事例では「開発購買部門」の設置による取組みを、第3回ではトヨタの「開発部門」が主体的に取り組んでいる事例を上げています。
開発購買や原価企画活動は部門や機能を横断する活動となるので「主語のある改革」が必須になってくるのです。

ここで上げた成功事例では開発部門と購買部門が主語になっていますが、本来どちらが主語になるべきでしょうか。私は本来であれば開発部門が意識を持ち購買的活動を実施すべきと考えます。開発部門が購買的活動を行なうためには購買業務を推進するスキルが必要です。一方で購買部門が主語になるためには開発スキルを身につける(開発人材を購買部門に属させるもあり)か、開発部門とコミュニケーションを取り、彼らを動かすためのスキルが必要です。
どちらの難易度が高いいかと考えると、やはり開発部門に購買スキルを持たせる方が難易度は低いでしょう。将来的にはトヨタのように「原価企画を実践しているのはエンジニア」という姿を目指すべきです。

近年上流関与の必要性が上げられている間接材購買においても(開発購買という言葉は使いませんが)上流関与を行ない仕様の最適化の提案を行ったり、ROIに基づくユーザーの無駄な支出の排除を進めなければなりません。
間接材購買の場合には購買部門が主語になって隅々まで目を配ることについては限界があります。間接材購買では購買部門による完全な集中購買は多くの企業でできていません。そのため、より一層ユーザー部門が購買スキルを持ち意識を高め外部への支出の最適化を図ることが求められます。

あるべき像はこのようにユーザーや開発部門による分散型購買機能になりますが、多くの日本企業の現状は購買部門が主語にならざるを得ない状況です。繰返しになりますが購買部門にはよりレベルの高いスキルや機能が求められます。様々なイノベーションに関する知見やサプライヤの新技術の動向などを常にアンテナを高く保ち、開発部門やユーザー部門に有意義な情報を提供するスキルや開発部門を動かすためのスキルが購買部門により求められているのです。このような機能を果たせない購買部門は開発購買の機能は果たせません。

今後IT技術の進化により企業体制や仕事のあり方は大きく変わっていきます。ブロックチェーン技術やP2Pの進化により、あらゆる業務が集中処理から分散処理になっていくでしょう。現在購買部門の専門かつ高度なスキルと考えられているソーシング・契約業務や交渉業務はRPAやAIが代行する時代が早々にきます。バイヤーは将来自分の仕事が分散化、自動化することを前提に自身の付加価値をどこに見出していかなければなりません。
分散処理、オートメーション化しても果たさなければならない機能・スキルは何かを見極めて企業活動により貢献するための付加価値を見出し、その機能・スキルを育成していかなければならないのです。