金正恩が新年の挨拶で「アルマーニの背広」着用して意気軒昂
『公式サイト「ネナラ」より』
北朝鮮の金正恩委員長による新年のメッセージが話題となっている。自分の執務室に核ミサイルの発射ボタンがあることを示し、「いつでもアメリカを破壊できる」と威嚇。
すると、トランプ大統領は「俺の持っている核ミサイルのボタンの方が大きい。破壊力もそうだ」とツイッターで反論。
まさに子どもの喧嘩のようなやり取りが繰り返されている。
とはいえ、金正恩からは「南の冬季オリンピックの成功を祈っている。北の選手団を派遣してもいい」との誘い水が。
アメリカは議会の有力者から「平昌オリンピックをボイコットせよ」との声が出ているほどで、さっそくアメリカのヘイリー国連大使が「とんでもない。核放棄が先だ」と噛みついた。
ところが、韓国の文在寅大統領は「大歓迎。平和の祭典にふさわしい。南北の融和につなげたい」と応じている。その上で、「1月9日に、オリンピック問題に限っての南北対話を開催したい。双方の関心事項を話そうではないか」と提案。北朝鮮が応じるかどうか、世界の関心が寄せられている。
金正恩とすれば、内心、「してやったり」との思いが浮かんでいるに違いない。うまくいけば、韓国とアメリカを寸断できるからだ。
なにしろ、一世一代の大勝負を仕掛けたのだから。どういうことといえば、新しい背広とメガネである。新年のメッセージに合わせて、がらりとイメージチェンジを図った。
従来は中国式の人民服や地味な背広で登場していたのだが、今年は明るい背広に色柄のメガネといういで立ち。しかも、これがアルマーニときている。ヘアースタイルも例年以上に念入りな仕上げぶり。しかも、お決まりの金日成バッジを着けていない。
どうやら、核実験や大陸間弾道弾(ICBM)などの実験に相次いで成功し、自信をつけたようだ。そもそも、アメリカが国連に要請した経済制裁の強化策は、思ったほどの効果が出ていない。
中国やロシアに限らず、シンガポール、エジプト、イラン、インド、スリランカ、アラブ首長国連邦、ブラジル、ドイツといった国々が、さまざまな抜け穴を通じて北朝鮮との交易や軍事関係を継続しているのだ。金正恩からすれば「国際社会による圧力など屁とも思わない」ということであろう。
その象徴が新品のアルマーニというわけだ。しかし、面白くないのはトランプ大統領である。人からバカにされるのが大嫌いな性格。一時は「マックをご馳走するから、仲よくしたい」とまで柔軟な姿勢を見せていたが、どうやら堪忍袋の緒が切れそうな雰囲気である。
国家安全保障問題の補佐官であるマックマスター氏いわく「北朝鮮との開戦のときが刻々と迫っている」。米軍関係者の間では先制攻撃の指令がいつ出されてもおかしくないとの緊張感が高まっている。
北朝鮮経済の生殺与奪を握っている中国が期待したように動いてくれないこともあり、メンツをつぶされたと思っているのが今のトランプ大統領に他ならない。大きなボタンに手が伸びるのは平昌五輪の前か後か?(国際政治経済学者・浜田和幸)