今回の主役は前頭4枚目、松鳳山裕也(右)の妻、あいさんだ

毎週月曜夜7時から放送中の「結婚したら人生劇変!〇〇の妻たち」(TBSテレビ系)。人気番組「プロ野球戦力外通告」「プロ野球選手の妻たち」を手掛けるスタッフが、夫を支える妻の姿を通して、夫婦の愛と葛藤に迫るドキュメンタリーだ。

日本が誇る伝統国技、相撲。鍛え上げた肉体をあらわに、ぶつかり、投げ合う。力士はまさに、男の中の男。その中でも闘争心に溢れ、激しい相撲スタイルから「壊し屋」の異名が付いた男がいる。前頭4枚目、松鳳山裕也(しょうほうざん・ゆうや)、33歳。元大関・若島津が親方を務める二所ノ関部屋に所属する力士だ。

同部屋では番付がいちばん高い部屋頭となる松鳳山は、後輩力士にも鋭い視線でアドバイスを送る。今夜9月25日(月)夜7時放送の「お相撲さんと結婚したら人生劇変SP」に登場するのは、そんなコワモテ力士「松鳳山」の妻である。 

あの松鳳山が尻に敷かれる!?

ご自宅にお邪魔すると「はじめまして!よろしくお願いします」と出てきたのは、小柄でかわいらしい妻、あいさん、31歳。松鳳山は、この妻と3才の長男・志希也(ゆきや)くん、1才の次男・鳳也(たかや)くんとともに3LDKの1軒家で生活を送っている。


幸せいっぱいの家庭だが順風満帆ばかりでもない

朝稽古を終え帰宅した夫・松鳳山が、ソファでくつろぎ携帯ゲームを始めると…

「携帯ばっかりやりすぎじゃない?いつも…」(あいさん)

「いやいや、そんなんあれやろ…これは依存症だから」(松鳳山)

「は?」(あいさん)

「ちょっと待って」(松鳳山)

「待ってじゃない、ふざけてんのか!」(あいさん)

…と、強制終了。結構な物言いだが、これにはワケがある。

「関取になると幕下の方から『神様』みたいな存在になってしまうので、注意できる存在が唯一妻の私かなと…」(あいさん)

相撲界一のコワモテ夫も、家庭ではちょっと肩身が狭そうな様子。そんな妻・あいさんを夫・松鳳山本人はどう思っているのか聞いてみると…

「奥さんがいなかったら、またこうやって相撲を取ってなかったかもしれないですね」(松鳳山)

実は松鳳山裕也には、引退を考えるほど奈落の底に突き落とされた過去がある。

あいさんが、のちの夫・松鳳山に出会ったのは6年前、25歳の時。当時、保母をしていたあいさんは、同部屋の力士と交際していた友人に誘われ、稽古を見に行ったのがはじまりだった。

その友人カップルとあいさん、松鳳山の4人で食事会へ。すると、松鳳山とあいさんは同じ福岡出身だったと知り、すっかり意気投合。ここから松鳳山の猛烈アプローチが始まり、出会って1カ月後に交際がスタートする。

この時、松鳳山は28歳。「次にお付き合いする女性と結婚を…」と考えていた。順調にお付き合いを続けること半年。「結婚しよう」と松鳳山がプロポーズ。しかし、あいさんの口から出た言葉は…

「三役にならないと結婚はしない」

「結婚はしないよ。三役にならないと。結婚は絶対にしない」(あいさん)

三役とは横綱に次ぐ大関・関脇・小結の位につく力士のことで、およそ700人いる力士のうち、わずか10人程度。この時、松鳳山は十両からようやく幕内に定着した頃だった。並大抵のことではないのだが、当時のあいさんは…     


運命的な出会いを経てプロポーズした松鳳山裕也だったが……。『お相撲さんと結婚したら人生劇変SP』(TBSテレビ系)は9月25日(月)夜7時から放送です

「とにかく彼が『三役!三役!』って言っていたので、それを達成させてからでいいんじゃないかなと思って。その時は簡単になれるものだと思っていました」(あいさん)

元来、強気な性格のあいさんはハッパをかけるつもりでプロポーズを保留。すると、この言葉を真に受けた松鳳山は「三役に上がって結婚したい」という想いを胸に快進撃する。あれよ、あれよと番付を上げていき、2012年九州場所で10勝5敗。自身初となる敢闘賞を受賞。プロポーズからわずか半年、2013年1月場所で見事三役である小結に昇進した。

こうしてその年の3月に2人は晴れて結婚。松鳳山29歳、あいさん27歳。ほどなくして長男・志希也(ゆきや)くんも誕生。あいさんは幸せの絶頂にいた。その一方で守るべき家族ができた夫は…


晴れてゴールインした2人を試練が待ち受けていた

「結婚して成績が悪かったりすると、奥さんのせいだとかなるじゃないですか? もっとしっかりやらないといけないって思っていました」(松鳳山)

その懸念が現実のものとなってしまう。三役となって初めて迎えた初場所で4勝11敗と大きく負け越した松鳳山は、わずか1場所で小結から転落。さらに2014年7月場所から極度のスランプに陥り、ケガをしたわけでもないのに負け越し続き。翌年の3月場所に至っては何と13連敗を喫し15日間で、わずか1勝しかできなかった。

三役へと駆け上がりながら十両まで転落

一時は三役へと駆け上がった松鳳山だったが、21場所続けた幕内から十両にまで転落した。

「その時はやっぱり変なプライドを持って相撲をとっていた。元三役だ、元幕内だって、普通にやったら戻れるだろう、みたいな」(松鳳山)

スランプの原因を、そう分析する夫だが、妻・あいさんにしてみれば結婚とともにケガもしていない夫の成績が急降下したことで、周囲からの視線も気になり始め、「不調の責任は自分にあるのでは…」と精神的に追い込まれていった。

「『私のせいかな』『昨日あんなこと言ってしまったからかな』って自分を責めてしまったり」(あいさん)

十両に転落してからも7勝8敗、6勝9敗と負け越しを重ね、復活の兆しは見られず。そして、ついに気力をすっかり失った夫・松鳳山の口からある言葉が飛び出す。

「あーあ…もうやってらんねーよ。俺、相撲やめようかな…」(松鳳山)

夫の口から出た「引退」の2文字。すると、妻は…   


弱音を吐く夫を妻はあえて厳しい言葉で突き放した

「…ふ〜ん、だったら辞めちゃえば?そんな弱気だったら勝てるわけないよ。辞めちゃえば?」(あいさん)

励ましもせず、突き放した。

「もう、何か、なげやりに言っていたのでこれは本心じゃないなって感じたので…(彼は)辞めきらないなって思ったんです、その時。なので『勝手にやめたらいいやん』みたいな。この先ダメになっちゃうかもって覚悟で言いました」(あいさん)

不安と戦いながらも、あえて厳しい言葉で突き放した妻。すると、夫は…         

「辞めるのは今じゃない、このまま落ちて負けるのは格好悪いって思ったんです。負けたまま引き下がるのは一生後悔するって」(松鳳山)


妻の激を受けてコワモテ力士は再び本領を発揮する

妻のゲキにより、闘争心に再び火のついた松鳳山。迎えた2015年9月場所では怒濤の快進撃を果たす。13勝2敗で十両優勝を果たし幕内に返り咲き、その翌場所には12勝をあげ敢闘賞も獲得。見事な復活を果たした。

「『辞めれば』っていう言葉がなかったら、またこうやって戻って来て相撲を取ってなかったかもしれないですね」(松鳳山)

現在、夫・松鳳山は前頭4枚目、再び三役を狙える番付に。そんな夫のため、場所中、妻・あいさんには必ずやる事が。それは「ゲン担ぎ」である。

ゲンを担いで「白」で身なりを固める妻

取材に訪れたこの日も、あいさんの身なりは夫の白星を願って、全身、白い服。念には念を入れて足の爪まで白に。さらに夫を闘いの場に送り出す前、用意する食事は真っ白いご飯の白めしおにぎり。子どもたちには金星マークの服や勝ち越し数の8がついた服を着用させ、リビングの壁にはいろいろな神社の必勝お守りがズラリと並ぶ。
  
「勝つっていうお守りが多いですね。何がなんでも勝って欲しいっていうのがあって…やっぱり必勝とかがあるとついつい買っちゃいます」(あいさん)


あいさんは夫の「白星」を願って全身を「白」で固める。『お相撲さんと結婚したら人生劇変SP』(TBSテレビ系)は9月25日(月)夜7時から放送です

東京での場所中、あいさんは夫を毎日、車で国技館まで送り届ける。取組を見るのは、決まって国技館近くの駐車場。この日の対戦相手は、横綱・日馬富士(はるまふじ)。車の中で「がんばれ!いけいけ!」と祈るも残念ながら黒星だった。

しかし、夫の性格を知り尽くす妻は…

「もう、何やってんのみたいな…説教ですね。私は慰めるとか絶対しないので。まだ明日もあるので15日間とりあえず死ぬ気で頑張れとハッパかけていきます」(あいさん)

夫の活躍を信じ、妻は今日もコワモテ力士の尻を叩く。