プジョー・インスティンクト・コンセプト試乗 自動運転の未来を予告
もくじ
ースタイル 今後の市販車を示唆
ー内装 快適性とはほど遠く
ー室内の構成 上下3要素に分かれる
スタイル 今後の市販車を示唆
このインスティンクト・コンセプトが、市販化されることはまずない。最後まで読んでから、がっかりさせないためにも、先にお伝えしておこう。
なお、自動運転の未来を予告するコンセプトではあるけれど、EV走行くらいしか試せていないことも先にお伝えしておこう。
ただ、実際にこのコンセプトに触れることで、少なくとも視覚的にどういったものをプジョーが目指しているのかがわかった。以下で触れていきたい。
さて、このインスティンクト、オクシアやフラクタル、オニキスといった、長年にわたって続いてきたプジョーのコンセプトカーの系譜に連なるものだ。いずれも市販化されていない。
ただし、スタイリングのモチーフやインテリアのディテール、フィロソフィーといった抽象的な要素は、市販車に反映されることになるかもしれない。
インスティンクトは、自動車の興奮を、完全自動運転化との最終決戦から救う手立てを示してくれるクルマだ。
そう、インスティンクトにはソフトとシャープと銘打った走行モードが設定され、そのほかにダウンロードできる自動運転モードも複数用意。
たとえば、セバスチャン・ローブの走りをシミュレートした運転などということも体験できる。
宇宙船を思わせるステアリングホイールは、運転を楽しめるモードを選ぶとドライバー側へせり出してくる。
内装 快適性とはほど遠く
ドアはフロントが一般的な前ヒンジで、リアが後ヒンジの大きなものだが、乗員スペースはかなりタイト。
だが、その狭苦しさは、多用されるガラス面、軽さやシャープさを感じさせるマテリアル、複数のディスプレイ類と、比較的低いダッシュボードによって和らげられている。
ただし、ヘッドルームは、はっきり不足している。
このクルマの狙いにはそぐわない感じもするが、プジョーはそのあたりを厳密には決めずにこのインスティンクトコンセプトを造ったのだろう。
プジョーのコンセプトカーや先進デザインを統括するマティアス・ホッサンは、このクルマそのものは量産化しないが、いくつかの要素は将来的に実用化したいと語る。
そのひとつがレザーの代替素材で、シートに用いるスニーカーに着想を得たファブリックや、インテリアのトリムに見られるグリーンの反射材などだ。
一方、薄いコンクリートを積層したフロアのように風変りなアイテムを、数年以内に登場する108に採用するようなことはないだろう。
逆に、実用化が近いと思われるのは「iデバイス」である。
室内の構成 上下3要素に分かれる
「iデバイス」とはプジョーのiコックピットシステムのコントローラーで、走行モードのセレクターも兼ね、表面は穴開け加工がされたレザーで覆われる。
設置場所はキャビンの中央部で、ウエストより高く肩より低い、手の届きやすい位置だ。
プジョーはインスティンクトにおいて、キャビンの構成要素のエリア分けを提唱している。
iデバイスが属する肩とウエストの間は「ハンズ」と呼ばれ、予期できる場所を手探りで操作できるように設計される。
肩より上が「アイズ」と呼ばれ、豊富なガラススペースや視線上のデザイン、デジタル式のルームミラーなどがそれだ。
それらより下の部分は「ボディ」として、快適性に配慮した設計が施される。
体を包み込むシートや広々とした足元、そしてホッサンが「本当に家のよう」というフィールを生む調度品などがそれに当たる。
プジョーがインスティンクトを、人間の運転と無人運転との境界にあるものと位置付けているのは確かだ。
世界的に、一方がもう一方を完全に駆逐すると見なされる傾向にあるせめぎあいの、ちょうど崖っぷちにあるというわけだ。
とはいえ、所詮はコンセプトカーに過ぎない完成度で、今回の試乗では、4つあるという走行モードや、完全自動運転も試せず、低速でのEV走行を体験したのみとなった。
それでも、インスティンクトが示したアイデアが今後も育まれていくなら、自動運転車になる手前、つまりひとが運転するクルマにも希望は残されるだろう。