HEART CLOSETの代表・黒澤美寿希さん(左)とivyyの代表・原田奈津美さん(右)

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胸の大きい女性にとって、男には想像も及ばない悩みは多い。とりわけ深刻なのが下着やシャツなどの衣類だ。

基本的にそのサイズに合ったものが少なく、バストは度外視で作られているため、普通のシャツを着るとだらしなく見えたり、好みの下着がなかったりと制限されてしまう。中には、仕事の制服が着れないという理由で職種まで狭まってしまうという。

そこで最近、巨乳専用のアパレルブランドまで立ち上がっている。それが、Eカップ以上の下着を作る「ivyy」とYシャツやジャケットを手掛ける「HEART CLOSET」だ。

ivyyの代表・原田奈津美さん、HEART CLOSETの代表・黒澤美寿希(みずき)さんは、自身もそれぞれFカップ、Hカップの持ち主。本人たちの悩みから生まれたブランドなのだ。ふたりに対談してもらった前編では立ち上げの背景となった苦労話を聞いたが、後編では未経験のアパレル事業を始めた思いまでを聞いた。

―巨乳の人は想像以上に障害が大きいんですね。でも、おふたりともアパレル経験はないそうで、未経験者がこれまでにない事業を始めるのに迷いはなかったんですか?

黒澤 私は全く。最初から言っていますが、とにかく胸が大きいだけでいろいろな制限があること自体ありえないって…服が存在しない世の中にムカついているんですよ。衣食住って人間にとって大事なことなのに、服が成立しないのはおかしくないですかって。そこに対してすごく怒っている感じで始めたので。

原田 私もやりたいと思ったからやったっていう単純な理由です。ただ、東京の街ってどうにかなるっていう感覚があるんですよ。だから成功・失敗とかではなく行動に移すことしか考えていませんでした。

―ある意味、すごい自信ですね。

原田 モデルとして、全て繋がりで生きてきたからですかね。とにかく自分のやりたいことを口に出すのが大事で、それを続けていけばどうにかなると思っています。

黒澤 あとは、あくまで零細企業なので大手さんとは市場規模が違っても問題ないことですね。

原田 そうそう。ニッチはニッチでも感覚が違いますからね。もちろん、現金先出しで在庫のリスクもあるので怖いは怖いですけど。

専門学校だったり企業に入って、いろいろ学んでから…という考えも特になく?

黒澤 第一優先で困っていることを言っていくことであって、専門用語だって私が使う必要も知る必要もないと思う。最低限でいいと。わからないことは今も営業さんとかにバンバン聞いてます。

原田 私もそうです。私たちのやることって、胸の大きいコたちの気持ちを汲(く)み取って、いい商品をいかに作っていくか、それを浸透させるかだと思ってます。

黒澤 パンツのゴムのゆるさとか細かいこと言ってる場合じゃないんですよ。何年も学校に行ってたら、あっという間に寿命がきて死んじゃう。明日、事故に遭うかもしれないし、後回しにしたらできなくなるかもしれないじゃないですか。

原田 それに専門的に知りすぎてると自己制限がかかって、リアルな悩みを解決するものが作れなくなると思います。デザインでも以前、ブラにリボンを縫うことが「手間でしょうがないからイヤだ」って言われたんですけど、そんな手間のことなんか知らないんですよ。これがあるからカワイいしラグジュアリー感も出せるのであって、コストや手間を知ってしまったら、できるものもできないんだと思います。

黒澤 そうそう。わからない人間が、それも当事者がやったほうが新しいことやニーズに合ったものを作れるのかもしれないんじゃないかな。同じことしてたらできないですし。あとはこれからどう当事者たちに知ってもらうかですね。

原田 そう、まだまだ零細企業だから、まずは知ってもらわないと。少ないロットのままだと、どうしても価格も抑えられないし、何より同じ胸の大きいのコたちが困ったままですからね。

―意外な苦労はもちろん、おふたりの行動力にも驚きました。これからも同じ悩みを持つ方々のために頑張ってください。今日はありがとうございました!

(取材・文/鯨井隆正 撮影/五十嵐和博)



■黒澤美寿希

「胸のサイズから発想する」女性のためのアパレルブランド「HEARTCLOSET」代表。http://heart-closet.com/

■原田奈津美

奈津美としてモデル、タレントとして活躍する傍ら、Eカップ以上のバストを持つ女性向けのランジェリーブランド「ivyy」の代表を務める。http://ivyy.tokyo/