今夏に蔚山現代に移籍した阿部。Kリーグで存在感を示せるか。(C)SOCCER DIGEST

写真拡大 (全2枚)

 FC東京からKリーグの蔚山現代に完全移籍した阿部拓馬。ドイツ・ブンデスリーガ2部のVfRア―レンでのプレー経験もあることから、韓国メディアも「ドイツ経験の日本人アタッカー・阿部」(スポーツ新聞『スポーツ東亜』)、“ドイツ派”のマルチアタッカー阿部」(ネットメディア『OSEN』)と期待を寄せている。
 
 もっとも、Kリーグに日本人選手がやって来るのは珍しいことではない。
 
 海本幸治郎が2001年に城南一和(現・城南FC)に加入して以来、前園真聖(2003〜2004年)など多くの日本人選手がKリーグでプレーしている。アジア枠が導入された2009年には戸田和幸が慶南FC、大橋正博が江原FC、岡山一成が浦項スティーラーズでプレー。2010年には高原直泰が水原三星で活躍した。2011年には馬場優太が大田シチズンで、2012年は家長昭博(蔚山現代)、島田裕介(江原FC)、エスクデロ競飛王(FCソウル)がKリーグでプレーしているのだ。
 
 そんなKリーグ日本人選手の系譜の中で、近年もっとも大きな成功を収めたのは昨季までFCソウルに所属した高萩洋次郎だった。2015年には日本人として初めてFAカップ大会MVPに輝き、昨季はFCソウルのKリーグ優勝にも貢献。メディアやファンから “パス・マスター”とも呼ばれた高萩は、日本人Kリーガーの中でももっとも成功した例だろう。
 
 ただ、今季は高萩だけでなく、蔚山現代で4シーズンプレーした増田誓志もUAEのアル・シャールジャに移籍。日本人Kリーガーの存在感が薄まりつつあったが、ここにきて韓国における日本株は再評価されつつある。そのキッカケを作ったのが、Kリーグ・チャレンジ(2部リーグに相当)でプレーするふたりの日本人選手だろう。
 
 ひとりは安田理大。今季から釜山アイパークでプレーする元日本代表は、開幕こそ出遅れたものの6月26日にはKリーグ初得点を記録して“ゴールするDF”として脚光を浴びた。
 
 もうひとりはソウル・イーランドFCの和田篤紀。ヴッィセル神戸を指揮した和田昌裕監督の長男で、2015年から韓国でプレーする弟の和田倫季 (光州FC)に続く形で今季からKリーグにやってきた彼は目下、17試合出場で2得点・4アシストを記録する活躍を見せている。知人を介してソウル・イーランドFCの広報に話を聞いたが、今や和田はイーランドFCに欠かせぬ主軸になっているという。
「我々のチームに日本語をしゃべれる通訳はおらず、唯一、日本語が少しできるのがキム・ビョンス監督なのですが、和田は監督に頼らず自分からチームに溶け込もうと頑張っています。ほかの韓国人選手たちと同じように合宿所で生活し、練習にも熱心。キム・ヒョンス監督もそんな和田の姿勢を買っていて、今やチームに欠かせぬひとりになっています」
 
 韓国ではプロであっても朝から晩まで集団生活が基本となる。年齢で決まる秩序があり、監督と選手の関係もともすれば主従関係になりがちだ。かつて釜山アイパークでプレーした元大宮アルディージャの渡邉大剛も、韓国で文化の違いに直面したことを告白しているが、和田が1年目で早くもチームに馴染んでいる事実は特筆すべきことかもしれない。
 
 おそらく安田も、釜山アイパークに溶け込んでいるのだろう。韓国人記者によると、「既存の日本人選手にはない猪突猛進型のプレースタイルも好まれている」という。安田が所属する釜山は、今でこそチャレンジで燻っているが、かつてはKリーグ3連覇も成し遂げた強豪。クラシック昇格を目指すチームにおいて、安田も欠かせぬ存在になりつつあるのかもしれない。
 
 そんななかで今度は阿部拓馬が蔚山現代の一員となったわけだが、その活躍次第ではKリーグにおける日本人選手の評価が一層高まり需要も増えるかもしれない。