2016年4月に集団脱北した北朝鮮レストランの女性従業員たち

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北朝鮮が、主として朝鮮戦争により南北で生き別れになった離散家族が再会する場を設ける上で、韓国側が脱北した北朝鮮レストラン従業員を送還することを前提条件としていることがわかった。7日、平壌でAFP通信のインタビューに応じた祖国平和統一委員会(祖平統)のキム・ヨンチョル氏が明かした。

キム氏は、昨年脱北したレストラン従業員12人と、北朝鮮への帰国を望む脱北女性キム・リョンヒさんの送還を求め、「すぐに送還しなければ(韓国との)いかなる形の人道的協力も決して行わない。これが我々の確固たる方針だ」と述べた。

離散家族の再会事業は2015年を最後に中断されている。右派の自由韓国党を除く韓国の与野党は5日、今年8月15日の光復節(日本の植民地支配から解放された日)の前後に、離散家族の再会の場を設けることで合意した。

しかし、韓国側が脱北したレストラン従業員らの送還に応じる可能性は低く、北朝鮮側が強硬姿勢に出た場合、再会事業の実現は困難と言える。

レストラン従業員12人は昨年4月、勤務先の中国・浙江省寧波市の柳京食堂を抜け出し、韓国にやって来た。北朝鮮側は、12人は韓国の国家情報院に拉致されたとして、送還を強く求めてきた。

一方、キム・リョンヒさんは特殊なケースだ。2011年、肝臓病の治療のため親戚訪問の名目で中国を訪れたが、治療費が払えず瀋陽のレストランで働いていた。ブローカーから「韓国に行けばもっと稼げる」と持ちかけられ、彼女は2ヶ月働いたら北朝鮮に戻れるものと思い込んで、話に乗ったとされる。

ところが、韓国政府はいったん入国した脱北者が北朝鮮に戻ることを禁じている。これを知ったキムさんは、自分を北朝鮮に送り返すことを韓国政府に要求し続けているが、受け入れられていない。その上、北朝鮮に帰国する方法はないかと瀋陽の北朝鮮領事館に電話したことが国家保安法違反に当たるとして韓国当局により摘発され、有罪判決を受けている。

北朝鮮当局は、キムさんの送還を要求するとともに、夫と娘、年老いた両親を米CNNに出演させ「早く帰ってきてほしい」と訴えている。