3月16日に招集メンバーを発表したハリルホジッチ監督。リストには驚きの名前がいくつかあった。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

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「本来なら(クラブで出ていない選手は)外さなければならない」
 
「私は海外組に伝え続けている。それぞれのクラブでもっとプレーしなければならないと」
 
「所属クラブで厳しい状況に置かれている選手たちには、スタメンを取れるように努力をしなさい、それが難しいならレギュラーになれるクラブに移籍しなさい、と何度も伝えている」
 
 日本代表のヴァイッド・ハリルホジッチ監督は、昨秋の段階から何度もこうしたニュアンスの発言を繰り返してきた。「クラブで出番がない選手は代表に呼ばれない」という至極当然の理論である。
 
 しかし、3月16日に発表されたUAE戦(23日)とタイ戦(28日)に向けた招集メンバーには、川島永嗣(メス)、長友佑都(インテル)、香川真司(ドルトムント)、宇佐美貴史(アウクスブルク)、そして本田圭佑(ミラン)と、所属クラブでレギュラーの座を掴めていない選手が5人も含まれていた。
 
 ちなみにその他の欧州組は、シーズンを通じて継続的に出番を得ている長谷部誠(フランクフルト)、酒井宏樹(マルセイユ)、酒井高徳(ハンブルク)、浅野拓磨(シュツットガルト)、原口元気(ヘルタ・ベルリン)、大迫勇也(ケルン)、久保裕也(ヘント)、そして後半戦に入って定位置を掴みつつある吉田麻也(サウサンプトン)、岡崎慎司(レスター)という9人だった。
 
 もちろん、代表選考のポイントは、所属クラブでの出場機会のみではない。経験、実績、メンタル、チームバランスなど、様々な要素が考慮される。とはいえ、指揮官自身が冒頭のような発言を繰り返していただけに、「発言と行動が矛盾している」という声は当然だ。
 
 俎上に載った5人を個別に見ていこう。まず川島は、昨夏に加入したメスで3番手に甘んじ、ここまでのプレー機会が1月17日のカップ戦のみ。それでも呼んだ理由を指揮官は、「リザーブチームでプレーしているがトレーニングはしっかり積んでいるし、代表でプレーする意欲も持っている」としている。
 
 位置付け的には出番が巡ってくる可能性が極めて低い第3GKであり、求められるのはグループのまとめ役だ。その意味で、百戦錬磨の33歳の選出には妥当性が多少だがあると言っていい。
 
 それは、香川も同様だ。ドルトムントの怪我人続出というチーム事情こそあれ、途中出場が大半ながら継続的にプレータイムを得ており、直近2試合ではフル出場していずれもキレのある動きを見せていた。トップ下の定位置を争う清武弘嗣が怪我明けでコンディションに不安を抱えるという事情を考えても、選外にするリスクがかなり高かった。
 しかし、である。宇佐美、長友、そして本田の選出に明確な妥当性を見出すのはかなり難しい。
 
 まず宇佐美は、昨夏に入団したアウグスブルクで開幕からベンチを温め、中盤戦に入っていくらいか出番が増えたとはいえ、今シーズンここまでの成績は8試合(296分間)でゴールもアシストもゼロ。2回連続で選外としながら、ここにきて呼び戻した理由を、少なくとも数字の上で見出すことはできない。
 
「宇佐美とはヨーロッパで話をしました。彼のクオリティー、能力を信じています。ボールを受けて自分で違いを作り出す貴重なタイプで、UAE戦では難しいかもしれませんが、タイ戦では良いジョーカーになってくれると思っています。他の選択肢もあったが、ジョーカーとして彼が最適だと思ってリストに入れました」(ハリルホジッチ監督)
 
 原口に続く左ウイングの二番手&ジョーカーとしての他の選択肢は、乾貴士(エイバル)、齋藤学(横浜F・マリノス)あたりか。リーガ・エスパニョーラ2年目の乾は継続的に強豪と戦ってさらに逞しさを増しているし、J開幕2試合で大きな違いを作り出した齋藤も3節の欠場理由となった怪我は軽傷だ。