ヨーロッパの美しい街を語るときに必ずその名前が挙がるのが、チェコの首都プラハ。神聖ローマ帝国の都として栄えた歴史を物語る街並みは、まるごと世界遺産に登録されています。

中世の時代、ヨーロッパでも屈指の繁栄を謳歌した街だけあって、見どころ満載のプラハ。日本ではあまり知られていない魅力的なスポットもたくさんあります。

そのひとつが、プラハ城から徒歩15分ほどの高台に位置するストラホフ修道院。

「世界で最も美しい図書館」と呼ばれる2つの図書室で知られ、ジェームズ・ボンド映画「007 カジノ・ロワイヤル」のロケ地にもなりました。

ストラホフ修道院は、ボヘミア最古のプレモンストラート会の修道院。プラハが文化都市として発展を始めた1140年に着工。戦争や宗教改革による混乱の被害を受けながらも、徐々にその規模を拡大し、着実にコレクションを増やしていきました。

17世紀に「神学の間」、18世紀には「哲学の間」と呼ばれる2つの図書室が完成し、その蔵書は質・量ともにボヘミア最高峰を誇るようになります。

800年以上にわたる歴史のなかで集められた蔵書は、およそ13万冊。ヨーロッパ各地から集められた貴重な蔵書のなかには、ナポレオンがイタリアで略奪した美術品の目録や、ナポレオンの妻、マリー・ルイーズからの寄贈本など、ユニークなものも少なくありません。

ストラホフ修道院はいくつかの建物に分かれており、図書室へは、専用の入口から入場します。

入口から階段をのぼって2階に上がると待っているのが、2つの荘厳な図書室。

「哲学の間」は、クルミ材で作られた書棚が並ぶ重厚な図書室。床から通常の建物の2階分の高さがある天井まで、びっしりと蔵書が納められた光景は圧巻です。

棚の一番高いところへは、部屋の隅にある階段をのぼって、バルコニーから本を出し入れしなければならないのだとか。

西洋の科学とキリスト教の歴史をテーマにした優美な天井画「人類の精神史」は、ウィーンの画家、フランツ・アントン・マウルベルチによって描かれたもの。スポットライトのように空間全体をドラマティックに演出しています。

図書室でありながら、教会のように神秘的な雰囲気が漂う空間は、どこか現実離れした魔法の世界を思わせるほど。時間を忘れて、いつまでも眺めていたくなってしまいます。

もう一つの「神学の間」は、典型的な前期バロック様式の華麗な図書室。豪華なスタッコ細工が施された半円天井に目を奪われます。

天井のフレスコ画は、画家で修道士でもあったシアルド・ノセツキーが描いたもの。部屋の中央には、17〜18世紀に造られた地球儀や天球技が並んでいます。

これら2つの図書室は、内部に立ち入ることはできませんが、部屋の前から眺めているだけで、中世の学問の世界へとタイムスリップしたような気分が味わえます。

図書室といえど、これほどまでに美しく荘厳な空間に仕立て上げたプラハの文化・芸術の水準がいかほどのものであったのか・・・

かつて帝都として栄華を極めたプラハの底力をまざまざと見せつけられます。

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