【外野手上達ドリル02】「切り返しの力とポジショニング力を高める技」日本生命・佐々木 正詞コーチが伝授!

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■佐々木コーチが語る守備メソッド「なぜ外野手もキャッチボールを大事にするのか?」【前編】から読む

 前編では外野手でもキャッチボールを重要視することの大切さをお伝えいたしました。後編では各ポジションの留意点にお伝えいたします。

ポジションが変われば留意点も変わる

佐々木 正詞コーチ(日本生命)

 現役時代、外野の全ポジションを経験した佐々木コーチに各ポジションの特性、守る上での留意点、現役時代に意識していたことなどをうかがってみた。

「ぼく自身はレフトが一番苦手でした。右打者の引っ張った打球はドライブがかかりやすいですし、しっかり振り切ってから走る右打者の方が強い打球も多い。そして左打者の打球の多くはスライス回転しながら切れていく。とにかく厄介な打球が多いんです。ライン際の方向に変化していく打球が多く、ギリギリで合わせていくと変化に対応しきれずにミスを犯してしまうことにつながってしまう。そのため、自分がここだと思った場所よりも少し行き過ぎるくらいの感覚で打球に対して体を入れていくイメージを持つことを強く意識していました」

――なるほど…納得です。

「ライトはサードへの返球距離がレフトと比べると長くなるのが大きなポイントになってきます。カットマンまで届けばいいという気持ちで、素早いモーションで投げたとしても、ボールが弱く山なりの軌道を描いてしまうと、カットマンがタイミングを合わせづらい。そのため、ぼく自身は、回り込んだり、助走をつけたり、多少モーションが大きくなって送球までの時間がかかったとしても、カットマンが投げやすい高さをイメージした強い送球をすることを優先していました。ライト線のクッションボールを処理する際も、捕ったらすぐにカットマンに返したくなるのですが、その気持ちをぐっとこらえてしっかりとステップを踏み、足を使って強い球を投げる。ライトを守っている時は『慌てて投げない』ということを強く意識していましたね」

――現役時代に最もたくさん守ったセンターはどうですか?

「センターは投球が見やすいですし、ライト、レフトと違って素直な打球が多いので一番好きでした。センターが気を付けなければいけないのは伸びてくるのか落ちるのかの判断が難しい、正面のライナー。正面を向いたまま対処しようとするとバンザイの状態を招く確率が高まるので、正面のライナーであっても必ず左右のどちらかに身体をずらし、半身の状態になる事が大切です」【写真1参照】

【写真1】後方の飛球を半身になって追う(日本生命・佐々木 正詞コーチ)

――半身の状態で打球を追った時、実際の打球が予想よりも背中側の方向に飛んできた際に腰を切って、体を切り返す必要が出てきますよね。あの切り返しが苦手だという高校球児も多いようです。

「わかります。体を切り返すことで体がぶれてしまうとまっすぐ打球を追いたくても追えませんし、バランスを崩してしまうことで捕球の精度も落ちてしまう。でも裏を返せば、この切り返す力が向上すれば後方への飛球も強くなるし、外野手としてぐっとレベルアップさせることができます」

――体を切り返す力を上げるためのおすすめ練習法はありませんか?

「直線のラインをひき、腰を切って体を左右に入れ替えながらライン上をまっすぐ進むドリルがおすすめです。最初のうちはラインの上をまっすぐに進めず、蛇行してしまうものですが、繰り返すうちにまっすぐに進みつつ、ラインの上で体をきれいに入れ替えていけるようになっていく。日本生命でもこの練習はアップ時に定期的に行っています。身のこなしがよくなれば、外野守備のレベルはぐっと上がる。ぜひ採り入れてみてください」

ポジショニング力を上げるために

 現役時代はポジションングを大胆にとるタイプの外野手だった佐々木コーチ。「ポジショニング力を上げたい球児へのアドバイス」をお願いしたところ、「大事なのは『間違ってもいい』という条件のもとで選手たちにトライさせる機会を指導者がきちんと作ってあげること」という答えが返ってきた。「まずはバッティング練習やシートバッティングメニューなどで間違ってもいいから思った通り、感じたままにどんどん動かせる。その上で、選手の考え、根拠を確認し、話し合う機会をどんどん作っていく。その積み重ねでポジショニング力は磨かれていくものではないかと思っています」

「自分の予想した通りの打球が実際に飛んできて、それを捕球した時の快感を一度でも味わえば、ポジショニングへの興味と自信はぐんぐん高まっていく」と語った佐々木コーチ。

「ぼくは高校、大学、社会人を通じ、常に大胆にポジショニングをとっていくチームでプレーしてきたのですが、指導者たちはいつだって『感じたまま大胆にやれ!』というスタンスのもとで思い切りやらせてくれた。今思うと、ものすごく恵まれた環境だったと思います」

佐々木流・グラブ論

グラブへのこだわりを語る日本生命・佐々木 正詞コーチ

「ぼくは大学までは外野手らしい、大きめのグラブを使っていたのですが、日本生命に入社後はサイズを小さくしました。サード用といっても違和感のないサイズです」インタビューも終わりに近づき、テーマは佐々木コーチ自身の「グラブへのこだわり」へと移った。見せていただいた現役時代のグラブは確かに外野手用としては小さめの印象を受ける。

「変更したきっかけは、同じ外野の先輩が外野手としては小さめのグラブを使っていたことです。その先輩に『おまえそんな大きなグラブ使ってるけど、グラブの先に引っかかって捕れたことって今までどのくらいある?ほとんどないだろ?それなら小さく、軽くした方がハンドリングもよくなり、送球に移る際の持ち替えもしやすくなる上、走りやすくもなる』と言われて、その通りだなと。

 実際、このグラブでプレーするようになって以降、前のサイズだったら捕れてたはず、と感じる打球は一度もなかった。もちろんサイズは好き好きでいいと思いますし、自分の好みやプレーのしやすさでグラブは選ぶべき。でも、もし『外野手だから大きなグラブを使わなければ』という固定概念にとらわれているのならそれは取っ払ってもいいんじゃないかと思います」 

――最後に高校球児へのメッセージをお願いします!

「上達する上で継続することは非常に大事と言われますが、なかなか難しいことでもあります。何かを続けようと決意したけども、それが仮に3日しか続かなかったときに、自分は3日坊主だと嘆くのではなく、『3日も続けられた。次は4日続くように取り組んでみよう』と前向きに思えばいいんです。自分の意思で継続してやろうと決めて取り組んだことはただでさえ成果が出やすい。仮に続かなかったとしても、確実にプラス要素が積みあがっている。『今日だけでいいからやってみようと思ったことができた。よし、明日もやってみよう!』。そう思えればしめたものです。毎日、同じ目標と目的を持って練習する事で必ず成長につながります。高校球児の皆さん、日々前向きに自分自身にチャレンジして下さい!」

(取材・文/服部 健太郎)

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